29・兄様と私
私、ナターシャ・ワーグナーは今年で10歳になり、学園都市の学校に入学を決め、本日邸を出る。
兄妹の中で私だけ魔力適正が低く魔法科は厳しいので、幼い時から憧れの召喚科に入れるように筆記試験を頑張った。
「では…そろそろ行きますわ、お母様、お父様、ロキシュ兄様、行って参ります」
「ナターシャも行ってしまうんだね、私ももう一度入学する!」
「お前は何を馬鹿な事を言っているんだ? お前はお前で私の元で学ぶべき事が沢山あるだろう?」
お父様が指をパチンと鳴らすと執事のセルジュがロキシュ兄様を羽交い締めにして引き留めた。
その隙に私は馬車に乗り込む。
「ああ、ナターシャ、待ってくれナターシャー!アディーに、アディーに宜しく言ってくれ。」
ロキシュ兄様は優秀で優しいのだが過保護な気がある。
現在、魔法科在学中のアディー兄様は1つ年上だがおおらかで勤勉、魔法適正が分かってから毎日裏庭にて魔法訓練をして、池を作ってしまうほど才能があるにも関わらず傲らずに努力家だ。
ベタベタに構ってくるロキシュ兄様より、さりげなく甘えさせてくれるアディー兄様の方がどちらかと言うと好きだった。
「これからアディー兄様に会えるんだ!」
私も、もう学園に上がる年、アディー兄様に会ってもはしゃがずに挨拶をしなければ。
行儀作法を頑張ってきたんですもの、アディー兄様にお見せするのが楽しみで胸が熱くなる。
「頑張りますわ」
馬車の中で小さくガッツポーズを作って気合いを入れる。
馬車に揺られ、途中町で宿をとり、また馬車で揺られ実家を出て2日、学園都市の大きな城壁が見えてきた。
「ここが…学園都市」
入学許可証と一緒に送られて来た部屋の番号の付いた鍵を握りしめ眼をつむる。
今までメイドがしてくれてた事を今日から一人で何でもしなくてはならない。
先に荷物を送っておいたので簡単な手荷物を部屋に置いてクラス割を見に行く。
今日はアディー兄様と待ち合わせをしてお茶をする予定になってる。
「アディー兄様!お久しぶりです!!」
アディー兄様を見付けて駆け寄ってしまったが、飛び上がって抱き付きたい気持ちを押さえてスカートを少し摘まんでカーテシーをし、微笑む。
本当は「良くできたね」とアディー兄様に頭を撫でて欲しかったけど、兄様は手を差し出して「元気だったかい?食堂に行こうか、そこのお茶は美味しいんだよ」と淑女として扱ってくれた。
エスコートして連れていかれた食堂にはアディー兄様の友人方が居て、楽しい一時を過ごさせて貰いました。
私にも同年代の友達がどのくらい出来るか楽しみです。




