27・どこかで見た光景
学園に来てヴェルドと2人で頭を抱える。
昨夜トリスティさんが来た件でどうしたものか…、部屋の場所なんて入ってる人にでも聞かないと分からない位なのに、寮母さんや警備の人を掻い潜って来たトリスティさんの隠密性にただ頭を抱えるしか出来ない。
「おはよう、何で朝はこうもキツいのかね?」
そこに朝に弱いステファニーが気怠そうに挨拶してきた。
「おや、ヴェルドとアディーは頭を抱えてどうしたんだい? 体調不良か?」
ステファニーは定位置の椅子に座ろうとして首を傾げる。
「んっ? んんっ!? 前にもこんな事がなかったか?」
「「…出たんだ」」
ヴェルドと声がハモる。
「何が出たんだい?」
「昨日の夜、トリスティさんが僕の部屋に…」
「昨日の夜、トーリィがアディーの部屋に…」
「「出たんだ」」
ステファニーは眉をしかめて眉間を揉む。
「男子寄宿舎だよね? 入れないんじゃないのかな?」
「それでも出たから困ってるんだよ!」
ヴェルドがキレ気味に言うと机に突っ伏して頭を抱え込みブツブツ言い始めた。
「あの頃の僕に言いたい…トーリィを無視するんじゃなかった、いや、普通にしててもこうなっていたのかもしれない、でも可能性はある。それでもどうにもならなかったかもしれない………けど、……」
ああ、ヴェルドが思考のループに入ってしまった。
僕は昨夜の事をもう少し詳しくステファニーに話す。
「昨日の決闘騒動で疲れて早めに寝ようと思ったらドアがノックされてね、ヴェルドが課題の事で聞きに来たかと思ってドアを開けたらそこにトリスティさんが立っていたんだ。
『ヴェルドと付き合ってるのに、ケイン君に付きまとわれて困っていた』って言ってお礼を言われてドアを閉められた。」
「えっ? それは真夏に聞く恐怖体験? 本当にトーリィだったのかい?」
「ドアを開けて確認出来るほど僕は肝っ玉強くないよ! 無理だから、絶対無理だから! 布団に飛び込んで逃避するくらいしか出来なかったから!!」
幽霊とかと同じくらい怖かった。
肉体がある分余計に怖かった、生き霊だと言われても信じそう。
ステファニーも若干ひきつった顔をしている。
「トーリィがヴェルドを好きなのは知ってたが、付き合っている?
どうしてそういう思考になったんだ?」
おう、ステファニーも考え込んでしまって僕だけ取り残された。
こんな状態で視線とか感じたら怖いんだけど、お願いだから一人にしないでくれ。
結局、ヴェルドとステファニーは思考の渦に沈んだまま担当教師がくるまで黙りこんでしまっていた。
僕は悲しいかな、考え込むほどトリスティさんを知らないので視線に警戒しながら授業が始まるまでビクビクしていた。




