26・お分かり頂けただろうか?
決闘騒動で疲れて早めに就寝しようとベッドに手をかけた時、誰かがドアをノックした。
寄宿舎で部屋を訪ねてくるのなんてヴェルドくらいだろう、多分課題の事で聞きたい事でもあったのかな?
「どう…した、の?」
ドアを開けるとソコにはプラチナブロンドの緩いウエーブヘアーを腰まで伸ばし、アイスブルーの瞳のハーフエルフ、トリスティ・マテドゥナさんが制服のまま俯いて立って居た。
「えっ? えっ!?」
ここ男子寄宿舎だよね、どうして? なんで居るの?
寮母さんと警備の人居たよね?
入れて貰えないはずだよ?
「今日は……私とヴェルドの為に有り難う御座います。 私はヴェルドと付き合ってるのに、ケイン君に付きまとわれて困っていたので…」
「……………」
えっ? ヴェルド、トリスティさんと付き合ってる事になってるよ?
脳内彼氏?
「今日はお礼だけ言いたくて…お休みなさい」
言うだけ言うと綺麗にお辞儀をしてドアを閉められる。
僕はどうしていいか分からずに終始棒立ちのままだった。
風呂に浸かって温まってたはずなのに悪寒がして鳥肌が立っている。
正直、ドアを開けて外を確認するのが怖い、居ても怖いし、居なくても怖い。
もしも床が濡れてたりしたらどうしよう?
よし、課題も終わってるし今日はこのまま布団に入ろう! うん、そうしよう!
何かを吹っ切るように布団に潜り込んだ。
チ、チ、チ、チ、チ………。
外から鳥の囀ずりが聞こえてくる。
窓から差し込む朝日が眩しい。
欠伸を一つして伸びをする。
んー、今日も気持ちの良い朝だなー。
今日の授業は何を教えてくれるんだろう? 楽しみだな~。
「…………」
「………………」
「……………………」
ガバッと勢いよく布団から出ると制服に着替え、食堂にダッシュする。
ソコにはヴェルドが呑気に朝食を食べていた。
ヤギの乳にサラダを挟んだパンをトレーに乗せ、ヴェルドの元に足早に行く。
「アディー、お早う~」
「ヴェ、ヴェ、ヴェルっ、ででで出た……」
何て言ったら良いのだろう、出たとしか言いようがない。
「ヴェルド、出たんだ!!」
「何が出たの?」
ヤギの乳を一口飲んで息を調える。
「トリスティさんが、昨夜僕の部屋に来たんだ」
パンを噛んでいたヴェルドは口を開けたまま一瞬固まる。
次の瞬間ガタタっと、椅子からずり落ちた。
「えっ? 男子寄宿舎に出たのかっ!! どうやって? 入れないはずだよね? アディーの部屋を知ってたの? なんで、どうして?」
気持ちは分かる、昨夜の僕もそうだった。
「ヴェルド、落ち着いて聞いて欲しい。 トリスティさんはヴェルドと付き合っているって言っていたんだ。 『ヴェルドと付き合ってるのに、ケイン君に付きまとわれて困っていた』って」
「はぁーーーー?」
あ、うん。 そうなるよね、寝耳に水だよね。
椅子にしがみつくようにガタガタ震えるヴェルド。
僕も小刻みに震えてるからテーブルがカタカタ鳴っている。
強烈過ぎて夢でした、ではすませられなかった。




