Episode:58
◇Seamore
エレニア先輩と2人、どうにか敵にも出会わずに、殿下を外へ連れ出すことができた。
ラッキーだったってのがまぁ、適当かな?
「とりあえず、ここまで来れば一安心ね」
「ですね」
後は向こうの木立の中に停めてある車まで行ければ、殿下だけは無事返せるはずだ。
「殿下、申し訳ありませんが、もう少しだけ走って頂けますか?」
「わかった」
殿下ってばどうしたんだか、やけに素直だ。ルーフェイアになんか、言われでもしたのかね?
ただ、抵抗しないのは助かる。
屋敷の方からは、さっきから豪快な爆発音が聞こえてきてた。どうもルーフェイアのやつ、片っ端から上級呪文ぶっ放してるらしい。
ともかく陽動の先輩たちやルーフェイアがド派手にやってくれてるお陰で、こっちはメチャクチャに楽だ。
暗がりを縫うようにして屋敷の周囲を回り、表側へと出る。
「まだ来てないわね」
「ええ」
エレニア先輩の言う通り、陽動部隊はまだ屋敷の中だ。
「仕方ないわ。第2案通り、先に戻りましょう」
できれば全員で戻りたかったけど、殿下の安全が最優先だろう。
と、いきなり声かけられて、心臓跳ね上がるほど驚く。
「おまえたち、遅いではないか」
って、おっさんなんだってここに……?
「父上?」
殿下も意外だったらしい。ちょっとうわずったみたいな声をだしてる。
「無事だったか。さぁ、急いで屋敷へ戻るぞ。
お前たち、ご苦労だったな。明日の任務に遅れるでないぞ」
――このクソ親父!
クライアントじゃなかったら、ぶん殴ってやるとこなんだけどね。
「父上、それはないでしょう? 彼女らは命懸けで僕を救いに来たんです。だいいち、まだ仲間が残っています」
――はい?
殿下、なにか悪いもんでも食べたか?
「シエラの傭兵隊など、放っておけば勝手にやるだろう。帰るぞ」
「帰りません」
まさか途中で、誰かと入れ替わったってことはなさそうだし……。
うーん、やっぱお気に入りのルーフェイアが、心配なんだろか。




