Episode:56
「ルーフェイアっ!」
先輩の声と共にまた背中に気配を感じて、身体をずらす。さっきまであたしがいたところを、サイズの刃が薙いだ。
血しぶきがあがって、再び敵が倒れる。
全部が片付くまであっという間だった。
「よし、戻ろう」
「はぁい♪」
ミルが緊張感の欠片もない返事をする。これで意外にもやるのだから、世の中というものはわからない。
飛び道具を持つナティエスとミルとがまず敵を掃射し、そこへあたしとシルファ先輩が突っ込んで残りを片付ける。
――あたしも、覚えようかな?
最前線ではすでに、銃は時代遅れだ。手から離れて飛ぶうえ弾は小さいから、持ち主の魔力をちゃんと伝えず、相手の魔法障壁を上手く破れない。だから用途はせいぜい、威嚇くらいだ。
でも、前線を離れれば話は違ってくる。
一般の人は魔法障壁を、常時展開なんてしてない。訓練しなければ出来ないし、それを補助する道具もかなり高価だ。だから十分、銃は通用する。
でも、いちいち武器を持ち変えるのは、隙が大きいし……。
そんなことを考えながら、目くらましに魔法を放ち、階段を一気に飛び降りて切り込む。
そうやって思ったほど時間をかけずに、1Fのホールまで降りた。
全員が止まる。
おそらくここに残っていた敵の全部と、あの男。
「やってくれたな。だがここまでだ。もっとも殿下の居場所を教えるなら、多少は考えてもいいが」
「断る」
シルファ先輩の即答。
「ほう、命が惜しくないのか?」
「あんな真似をする連中に、命乞いなどしない。だいいち、する必要もない」
先輩が、やはり毅然と返す。
「小娘どもが言うな。まぁいい。この腐った国の連中に味方したのが、運の尽きだったな」
「ば〜か」
割って入って、とんでもない一言を返したのは、ミルだった。
「自分が腐ってるから、そう見えるんでしょ? だから何?
朝起きて、ご飯食べて、仕事して、子供の面倒見て、友達と話して、家へ帰って、みんなで夕食にして、ゆっくり寝て。
それのどこが腐ってるのよ?」
一気に言いたてる。