Episode:43
で、抜いた情報を頼りに個人の端末までたどってみると、それなり当たりだった。
網は張ったまま、この魔視鏡の中を漁る。
「……これはいける、かな?」
思わず独り言。魔視鏡の中に、このテロ集団に関係する会話の記録が、ごっそり残ってる。
ほんとにそのままで何の細工もされてないから、速攻で解析してみた。
って……。
この魔視鏡の持ち主は、大したことない。
でも交信相手のひとり、マニアなんだろうか? ともかくかなりの情報通だ。
危機感も何もない持ち主だから、記録から即座に、事情通の魔視鏡が特定できた。
即刻ターゲットを変えて、通信網の海から探しだす。上手い具合に、接続中だ。
「ふふん、それなり頑張ってるんだ? でもこれじゃまだまだ甘いね」
思わず魔視鏡に突っ込み入れたりして。
この新しいターゲット、いろいろ気は遣っているけど、まだまだ。この程度の防御じゃ上級者にかかったら、簡単に中へもぐりこまれる。
ボクもまぁ、軍に潜り込む程度の技術はあったりするから、あっさり命令権をゲットした。
「♪♪♪〜」
市販製の防護壁なんてあっという間、ハミングしながらこの魔視鏡の中身を見ていく。
結果は大当たり。
会話記録に、まとめてみたらしい日程、さらに主要人物らしい名前まで残ってる。
――せめて消しとこうね。ヤバいことしてるんだから。
とりあえずそれっぽいのをこっちへ写して、接続切ってから、中身を見てみることにする。
「うーん、これ売ったら儲かるかな〜。あ、違った。『白い森』探すんだった」
とりあえず記録の中をざっと検索して、分類してみる。
無関係のものも紛れ込んでいてちょっとめんどくさかったけれど、どうにか関係するものを抜き出した。
「けっこう緻密だなぁ……あれ?」
一つのファイルを開いたところで、思わず手が止まる。
「ロデスティオ……?」
慌ててこのキーワードで再検索してみた。ピックアップされた記録を片っ端からあたっていく。
結果は――これもありがち。
ようはクーデターを起こそうとしているこのグループと、ロデスティオとが組んだらしい。
で、彼らがアヴァン国内で事件を起して注意を引き付けている間に、ロデスティオ軍があの難所の谷を超えて、侵攻しようってことだった。
――それで「殿下?」とやらを。
こうなると、あんまり時間がなさそうだ。
もう一回通信網に接続して、こんどはロデスティオ軍の魔視鏡をあたってみる。
「あ〜、もうちょっと、ちょくちょく来とくんだった!」
去年シュマーの一件が片付いて以来、前みたいに遊びに来なくなってたのが災いしてる。
あたりまえだけど他国へ侵攻しようっていうんだから、それなりに作戦としては大掛かり。それに気づかなかったのは、完全に怠慢ってやつ。
腹いせに軍の内部をあちこち渡り歩いてみて、だいたいのところを手に入れた。
ふぅん、なるほどね……。