Episode:40
「あとは、動かさないように。救急隊が来たら、落ちついて言うことを聞いてください」
必要最低限のことだけ指示しながら、会場を奔走する。
「――!」
とある場所で、思わず足が止まった。状況から見て、ここで爆発があったのだろう。
人の残骸が、飛び散っていた。
いったい、何人分だろうか……。
「……たいよ……」
か細い声に、はっと我にかえる。
少年が倒れていた。
爆風かなにかでやられたのだろう、左腕がなくなっている。
「大丈夫か!」
慌てて駆け寄って、そっと抱き起こした。
すぐに回復魔法をかけてやる。
「僕、どうした、の……?」
「大丈夫、もうすぐ救急隊が来る。そうしたらすぐに、病院へ連れて行ってもらえるから。だから、頑張るんだ」
「うん……」
とりあえず止血できたことを確かめて、近くにいた女性に少年を頼む。
怒りがこみあげていた。
確かにこの国には、いろいろあるのかもしれない。だがそれが、この子になんの関係があるというのか。
おそらく今日を楽しみにして、両親か誰かに連れられてここへ来て、喜んでいただろうに……。
「先輩!」
向こうからシーモアが駆けて来た。
「救急隊、来ましたから」
「――そうか」
それならばもう、私たちの出番はそろそろ終わりだろう。
エレニアやナティエス、ミルもこちらへ来る。
全員が血だらけだった。
「あ〜あ、せっかくのドレスだったんだけどな。ルーフェイアに悪いことしちゃった」
「まぁ、場合が場合だしね。あの子ならわかってくれるさ。
――にしても許せないな」
「ほんとだよね」
スラム育ちだと言うこの2人の少女は、惨状に動じた様子はなかった。少し胸をなでおろす。
「それで、殿下の方はどうしましょうか?」
「え? ――ああ、そっちもあったか」
むしろ私のほうが、いくらか動転していたらしい。
「だが……どうやって追跡する?」
自問自答する。
いちおうルーフェイアが通話石を持っているが、望み薄だった。この手のものは真っ先に調べられるし、特殊なもの以外は距離が開いたら使えない。
それにああいう相手だ。連れて行かれた先もおそらく、結界で通話を遮断しているだろう。
わざわざ攫って行っていることから考えて、すぐに殺されたりということはないだろうが、だからといって手をこまねいているわけにはいかなかった。
と、意外な人物から意外なセリフが出る。
「あ、あたしねぇ、クルマ見たよぉ♪ それとね、いろいろ言ってたのも聞いた〜!」
「本当か?」
「うん♪」
どこをどう見ているのか分からない能天気な子だが、これで意外としっかりしていたらしい。