Episode:26
「ルーフェイア、派遣の追加が決まったわ」
思った通りの言葉で、エレニア先輩が切り出した。
「まだ学院へ要請が出た段階だから、本決まりじゃないけど。でも新規じゃなくて延長だから、ほぼ通るでしょうね」
「そう……なんですか。
えっと、そしたら、どのくらいの期間ですか?」
おおよその見当はついていたけれど、一応尋ねてみる。
「建国祭終了までだから、1週間ほどだな」
代わって答えたシルファ先輩の言葉も、思ったとおりだった。
――それにしても、こんなに簡単に追加が決まって、いいものなんだろうか?
曲がりなりにもシエラからの派遣だ。けっしてタダじゃないはず。
「移動の連続になりそうだから、覚悟しておいてね。けっこうスケジュールが詰まってるのよ」
エレニア先輩が、用紙をめくりながら言う。
「明日の夕方のレセプションを皮切りに、式典が目白押しなの。もっとも殿下は全部に出席なさるわけじゃないから、それだけは助かるんだけど」
「そんなに……凄いんですか?」
そう訊くと、先輩が予定表をテーブルの上に置いてくれた。
確かにかなり詰まっている。ほぼ毎日、何かに出席する感じだ。
「先輩、これもしかして……片っ端からパーティーって言いません?」
妙に嬉しそうな調子で、ナティエスが訊いた。
「そう、言うだろうな」
けどよく見てみると、嬉しそうなのはナティエスとエレニア先輩だけだ。
ミルは平然――まぁこれはいつもだけど――としてるし、シルファ先輩とシーモアなんて、なんだか嫌がってる感じさえする。
「ドレスとか、どうするんですか♪」
シルファ先輩が、あたしのほうを見た。いま言っていいかどうか、悩んでるみたいだ。
あたしがうなずくと、先輩がちょっとほっとした表情で、ナティエスに答えた。
「いちおう、借りる当てはある。連絡済みだ」
「あん、買えるわけじゃないんだ」
ナティエス……。
公式の晩餐会や何かに、すぐ買えるような出来合いの物を着て行ったら、かえって目立つのに。
「けど先輩、大丈夫なんですか? 学院に頼んでも間に合わないって、さっき言ってたじゃありませんか」
「えっと、あの」
当事者じゃないシルファ先輩じゃ、答えられない気がして、口をはさむ。
「当てがあるの、あたしです」
「あなたが?」
エレニア先輩が、信じられないという表情をした。
「まぁルーフェイアが言うなら、嘘ってことはないでしょうけど。でも大丈夫なの?」
よっぽど心配らしくて、また確認される。