表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/65

Episode:02

 昇降台を降りると、いつものようにひんやりとした風が駆けぬけた。

 玄関に飾られてる水盤を、水が流れる音が響く。

 はじめて見た時、不思議なくらいに澄んで見えたこの校内。その印象は、いまでも変わらない。


 あれから、ちょうど1年。夢を見ているような気がする。

 でもその夢は覚めることがなくて、あたしを取り巻きつづけていた。


――覚めませんように。

 わかっていても、いつもそう願わずにはいられない。

 ある日目が覚めたらそこはやっぱり戦場で、これはぜんぶ夢。そんなふうになりそうで仕方がなかった。


 これが夢じゃないと信じられるようになるまで、どのくらいかかるのだろう?

 せめてこの学院を卒業するまで、このままでいられますように……。

 そう祈りながら廊下を歩く。


 もう何度となく歩いて慣れているはずなのに、それでも足元が浮いているような気がした。

 廊下を曲がって、中庭へ足を向ける。

 図書館、診療所、そして食堂。

 傭兵学校のはずなのに、ここにいると戦場を忘れそうだ。


 広くて清潔で小綺麗な食堂の中も、まさに平和だった。たくさんの生徒たちが、お喋りをしてる。

 それをひととおり見渡して、あたしは先輩たちを見つけた。誰かにぶつかったりしないように、ゆっくり歩いてそっちへ行く。

 でも声をかけようとして、あたしは躊躇った。


――先輩たちの周り、空気が違う。


 踏みこんじゃいけない、そんな雰囲気だった。

 時折交わされる言葉は少ない。でもそこに、絆が見える。

 その一言一言、何気ない仕草。そんなところから互いへの思いやりが感じられた。


 いいな、と思う。

 父さんと母さんもそうだけど、こんな風にお互いに相手を信頼して、尊敬できるなんて。

 穏やかに会話を続ける先輩たちが、 見ていてとても羨ましかった。

 いつかあたしにも、こんな風に話せる相手ができるんだろうか?


 そんなことを考えながら、どのくらいぼうっとしていたのだろう。

「ルーフェイア。そんなところに立っていては、迷惑ですよ」

「あ、すみません」

 さっそく先輩に注意される。


――でもよく考えたら、呼び出したのは先輩だったような?

 けどそう言ったところで、また怒られるだけだろう。


「ともかく座りなさい」

「はい」

 向かい合わせに座る先輩たちの間に入る格好で、あたしも椅子にかけた。

 気をつけないと、またいらないことを言って怒られそうで、ともかく落ちつかない。


「あの、お呼びだって、聞いたんですけど……?」

 恐る恐る、タシュア先輩に訊いてみる。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ