Episode:15
「はいはい、しょうがないわね……なにこれ。なんでこんなに、お菓子が入ってるのよ」
「先輩もど〜ぞ♪」
お菓子って……。
それにしてもミルのこのペース、太刀打ちできる人間いるんだろうか?
彼女を連れてきたの、間違いだったような気がしてくる。でも彼女ほどアヴァンに詳しい子は、そうそういないし……。
ともかく大騒ぎをしながら、30分ほどでチェックを終えた。
「シルファ先輩、どうやら問題なさそうです。余計なものを持ち込んだ人がいましたけど、不足はありません」
「ぶぅ」
まさに絶妙のタイミング。ミルのブーイングに、思わずみんな笑い出す。
「すねるんなら、持ってくるんじゃないよ」
「ひっどぉい、どうせみんな一緒に食べるくせに〜。いいもん、あげないから!」
あげないって、いったいいつ食べる気なんだろう?
ともかく、付き合ってるとひたすら話が進まない。だからあたし、自分で訊きたかったことを切り出した。
「あの、シルファ先輩。この後のスケジュールって、変更……ないんですか?」
「今のところは、そうだな」
「そうですか。えっと、そうすると……?」
ざっと頭の中で、覚えているスケジュールを点検する。
クライアントとの顔合わせは、無事(?)終わった。あとは今夜、先輩たちが警備担当と直接会って詳細を詰めて、明日から本格的な警護だ。
もっとも建国祭までだから、1週間くらいだけど。
当然だけどこの建国祭、アヴァンの年中行事だ。で、そのたびにシエラから傭兵隊が派遣されてる。ただ今年は革命派(?)がうるさいらしくて、急遽「開催前も」ということになったらしい。
しかもなんだか子弟の方まで危ないとかで、あたしたちが追加で雇われることになったと、シルファ先輩は言っていた。
――それにしても。
アヴァン政府ってそんなにお金あるんだろうか? 余計なことだけど、ちょっと心配になる。
シエラの傭兵隊は、案外単価が高い。世界中に散ってるシュマーの傭兵連中を適当に雇ったほうが、間違いなく安上がりだろう。
まぁ他所のことだから、考えたってしょうがないんだけど……。
「先輩、間違いなく武器を、学校へ持ちこめるんですよね」
「ああ、大丈夫だ」
シルファ先輩がきっぱりと答えて、シーモアがほっとした表情になる。
「それ聞いて、安心しましたよ」
見れば彼女、もう武器の手入れを始めてた。わりと新しい型の短銃と、投擲用のナイフが並べられてる。
シーモアはスラム育ちのせいか、小回りの効く武器が好みで、格闘とナイフと短銃とをうまく使い分ける。ついでに言うと手元にあるものならなんだって武器にしてしまうから、相手にすると予測がつかなくて、けっこう大変だった。