Episode:12 任務
◇Rufeir
シルファ先輩から話を聞いた4日後、あたしたちはアヴァンにいた。アヴァンシティ郊外のとある邸宅で、クライアントと顔合わせ、ということになっていたのだ。
けどケンディクからこの日程って、かなりの強行軍だ。
アヴァンへは、首都のイグニールからなら、わりとすぐだ。海を渡れば翌朝には着く。
ただ学院のあるユリアス国、大陸国家なのもあって、ケンディクから首都までが遠い。ふつうのペースで行ったら、3日はかかる。
それをどこかへの宿泊なしでひたすら移動して、2日ほど短縮した。
でも緊張してるみたいで、シーモアもナティエスも、疲れたようすは見せてない。
「ふむ、これがシエラ学院がよこしたメンバーか」
クライアントの第一声は、それだった。
「子供ばかりではないか? これで本当に、ローウェルの警護など勤まるのかね?」
「お言葉ですが、シエラ学院の傭兵隊の優秀さは、アヴァンの方ならよくご存知ではありませんか?」
思わずむっとしていたあたしたちの気持ちを、エレニア先輩が代弁した。
「それに普段でしたら、私たちもこんな幼い子たちを、危険な任務に連れ出したりしません。ですが今回は、そちらの要望に従いましたので」
見事な切り返しに、クライアントのおじさんが黙る。毒舌で知られるタシュア先輩と、いい勝負かもしれない。
「……私を、誰だと思っているんだ?」
「アヴァン神聖帝国の末裔、現アヴァン公国王太子、エイヴリー=ホルスナー=ド=ファレル卿と伺っておりますが。違いましたか?」
やっと言ったクライアントの恫喝にも、エレニア先輩は一歩も引かなかった。
けど、このまま放っておいていいんだろうか? あんまり険悪になると、あとの任務に響きかねない。
(――先輩)
シルファ先輩の上着の裾を、そっと引っ張る。
(止めた方が、いいんじゃないでしょうか?)
(そうは思うが、いったいどうやったら……)
確かにそうかもしれない。こんなやりとりに口をだすの、誰だって願い下げだ。
でも、このままってわけにはいかないだろうし……。
その時、うまい具合にドアが開いた。エレニア先輩とクライアントとのやりとりが止まる。
「父上、お呼びですか?」
ひとりの少年が入ってきた。
年は、あたしたちより少し上だろうか? 赤みがかった茶色の髪に、薄い水色の瞳をしている。
たぶん彼――おそらく名前はローウェル――が、今回の警護の相手なんだろう。