7-24
『・・・と。こんなとこだねっ』
「イリス?」
周一が語っていたはずなのに話に区切りが付くとイリスが話の終わりを告げた。
『・・・だってますたー、リンリンの話になってから話すの面倒になってるし。ほら、よく見れば解るよ』
「え?・・・ね、寝てるっ!?目を瞑って話してると思ったら寝てたのっ!?」
「だ、だが声は」
『そんなの私にかかれば、「簡単だよ」・・・ねっ』
「・・・そういうことか」
ギーベストの問いに実践で示す。
ボイスチェンジャー機能。イリスが聞いて取得した音声を自身の声として自由に使える機能だ。
アイリスとクーラは思い当たる記憶があったために嫌そうな顔をした。
「まあよい。それよりも・・・」
ティーテは指先から小さな魔方陣を出すと
「起きぬかっ!!」
魔方陣から出た小さな石の弾を周一のデコ目掛けて放った。
それに気付いたのか、周一は咄嗟に起きてその石の弾に対して右腕を素早く動かした。そして周一の握られた右手を開くと石の弾が床に落ち、まるで魔法のように石が消えた。
「・・・ふっ。ずいぶんなモーニングコールだなっ」
『「ふっ」じゃないよ、ますたー。モロに当たってるし、ちょっと血が出てるよ。なに然もキャッチして防ぎました、みたいな雰囲気出してるの?私は全部見てたんだからね?』
あ、当たってねーしっ!ちゃんと石はキャッチしたしっ!
「私も見た」
「わ、私も」
「私もだ」
「・・・・・・ふっ。ずいぶ」
『やり直しても無かった事にはならないからね。もう石も無いし』
「・・・わーったよ。お前らがそんなに当たった事にしたいなら当たった事にしてやるよっ!当たってないけどなっ!」
クソッ!漫画なら話を合わせてくれるすごく良い人が出て来てもいいはずなのにっ!
「シュウイチさん」
「・・・アイリス」
アイリスが優しい目でこちらを見ている。これはっ・・・
「当たった後に石を掴ん」
「よしっ。話を進めようか!」
両手でパンと音を鳴らし、ティーテに向けてそう言った。
もう手遅れかも知れないが追い討ちを喰らう前に話を変えてしまおう。そうしよう。それが良いっ!
「あ、ああ。・・・今の話。事実、で良いのだな?」
「全部事実だ」
『嘘を付く必要も無いし』
「その・・・聞いてもいいですか?」
クーラが小さく手を上げて発言の権利を貰った。
「シューイチはその、アリアさん達に助けられてからはもう。・・・人々を殺す必要は無かったはずなのに。何故その後も・・・」
『クーラ。ますたーは何もしてないよ』
「「え?」」
クーラだけでなくアイリスも同じ反応をする。
「俺はただそういう情報があるって事を伝えただけだ。一々そんな関わろうとしない奴らを相手にすると思うか?」
「・・・それじゃあ」
『あの後に殺しをしたのは全部見知らぬ誰かさん達だよ。私はただ情報を流しただけだもん。その後それをどうするかは情報を見た人間達の問題だからねっ』
勿論。あのサイトの削除依頼は数え切れない件数で来ていた。だがイリスにとってはそんなものは関係ない。検索サイト運営がいくら対策をしようが消すことが出来ず、更にはどんな検索ワードを入れようが最上部にあのサイトが表示されるようにしていたらしい。
「情報の中に偶々、殺意を覚えた相手が居た。殺す手段がある。見つからなければ犯人は必然的に世間は俺だと断定する。そんで個人情報を暴露された側は俺に殺される事と恐れて関わることを絶対に避ける。だがそこに次々に殺された情報があれば、次は自分かもしれないと思って夜も眠れない日々が続く。ほんの千人程度が殺されただけであのザマだ」
「ほんのって・・・」
「俺達の世界じゃ、誰が一番偉いかってのを決めるだけで関係の有無なくうん百万の人間が戦争で死んだぞ。それを命じた偉い奴等は安全な場所で上手い飯を食いながら勝利の知らせを待ってただけらしいがな。そんなのに比べたら大した事じゃない」
『人間は責任を負いたくないんだよ。口では「人は責任を負うのが当然」とか言ってるくせにね』
「そんであのあとどうなったと思う?」
「どう・・・って」
「世間は誰かが行った殺人を俺がやったと勝手に勘違いして勝手に恐怖し、本当に殺した奴は2択。喜びか恐怖を感じる。恐怖を感じた奴は死ぬまで隠し続けることを決めたり、自ら自首して檻に閉じこもったりな。喜びを感じた奴は殺しを続け、次第に俺ではなく自分が殺したと世間に知って貰いたくなって殺しにルールを付ける様になった。そんでバレて捕まった。それだけだ」
「それだけ・・・」
それだけ。と言っても、バレて捕まった奴や自主した奴は極一部のみ。それ以外の殺しは全て俺の責になっている。あのイリスの正確な殺害人数はそれを含めてのものである。
『うん。それだけ。でもそのおかげでますたーは死の象徴として触れてはいけない存在になった。だから鈴音として自由に生きることが出来る様になったんだよ』
イリスの言葉の後、しばらく静寂が続いた。その理由はそれぞれあるかもしれないが俺には知る由も無い。
「・・・シューイチ。おぬし、私達と仲良くなりたいと言っておったな」
ティーテが話題を変える。
「ああ。最初っからそう言ってたろ」
「そんな戯れ言を言うおぬしに問おう。私達、エルフとドワーフ。見た印象はどうだ?」
「印象ねぇ・・・正直、想像と違ったからな」
「ほう?」
『だねっ。だってそもそも私達にとってのエルフは高身長で耳長。魔法が優れてたり、森や自然を大事にしてるイメージ。ドワーフは低身長で力持ち。鍛冶や細工技術が優れているってイメージなの』
「俺達の世界ではそういった架空の話ではそれが常識だったからな」
「本当に外見だけが間逆なのだな」
イリスの説明にギーベストがそう答える。ギーベストはその見本画像を見ているのでそう答えたのだろう。
「外見だけ?」
「イリス。陛下達にも先程のを」
『あっ。うん。わかった』
クーラの発言にギーベストはイリスに頼んだ。そしてイリスは見本画像をそれぞれの前に表示する。ティーテはそれを見て「なるほど」と、アイリスとクーラは「だから」とだけ呟いた。
「ま、だから印象って言われてもな。今はわからないとしか言えない」
「・・・それが答えか?」
「まあな。印象なんてのは結局、噂や伝承による勝手なイメージの押し付けだ。それが当たり前だと言われ続けた事を常識だと勝手に思い込んでるだけだ」
「だがシューイチ。お前は私が名乗るまでは」
「ギーベスト。あんたの言う通りだ。でもそれはその時までの俺達だ。でもそれ以降の俺達はもう間違えない。もう見て、知って、覚えたからな。そんであんた達のことをもっと知りたいとも思ってる。そうすれば仲良くできるだろ?少なくともギーベスト」
「な、なんだ?」
「あんたとは握手が出来た」
「っ!」
虚を突かれたような顔をするギーベスト。
「それだけでも仲良くなれるかもっていう証明にはなるだろ」
「う、むぅ・・・」
「ククッ」
そんなやり取りを見てかティーテは笑い声をこぼす。
「ハッハッハッ!良い!その思考、面白いではないかっ」
「そうか?」
「ああそうともっ。とても私が知る人間とは思えない。おぬしの言う通りだシューイチ。印象なんてもののは勝手なイメージに過ぎない。今おぬしを見てはっきりとそれを・・・」
ティーテは途中で何かに気付いて口を止めた。
「・・・そうだった。おぬしにはまだしっかりと名乗っていなかったな」
「ん?」
王座から立ち上がり周一の前まで歩いてくる。
話している時は多少の距離があったが、近くに来るとティーテが女子小学生ぐらいの身長しかないなとより思えてしまう。
「ティーテ・フォレフォス。この国の王だ」
そうティーテは名乗り、右手を差し出した。
「ああ。周一・円道。異世界人だ」
『私はイリス!万能美少女だよっ』
俺は膝を付いてその手を交わした。そしてイリスはその交わした手の上にイリスちゃんモードで触れる。
「うむ。シューイチ。イリス。私はお前達を歓迎しよう」
笑みを浮かべてそう答えたティーテ。だがその光景。クーラにとっては不安と焦りのきっかけでもあった。




