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永遠の約束 永遠の旅 -とわのやくそく とわのたび-  作者: 風翔 響
第1部:エレメンタニア
94/109

7-23

 ・・・にぃ。


(・・・んあ?)


 微かに誰かの声が聞こえる。体を揺らされれてる感覚もある。


「・・・シュウにいってば!」

「ん・・・ああ」


 声の主に起こされ、仕方なくベットから体を起こす。

 この目覚めにはまだ少し違和感があるが慣れ始めてはきている。


「おはよっ。シュウにい」


 ボサボサした寝癖のひどい長髪の頭を少し掻きながらぼんやりとした目を開けるとそこには笑顔で挨拶をしてきた椎名が。


「・・・・・・」


 そして視界が整うと、その少女の手にはかわいらしいフリフリの水色ワンピースがあった。


「むっふふ~~(ワクワク)」

「はぁ・・・今日はそれか?」

「うんっ!」


 俺の反応を見て察したのか、すごく期待に満ちた目で俺を見てくる。


「・・・わかった。着替えるから椅子にでもそれを」

「手伝うっ!」

「・・・置いて、そして部屋から出てくれ」

「むぅ~~~っ!」


 頬を少し膨らませるが言う通りにしてくれるだけ椎名はいい子だ。・・・あのお母様は俺の着替えを覗くために隠しカメラまで設置していたからな。

 そんな事を考えながらもクローゼットの引き出しから必要なものを揃えていく。このクローゼットの中は女装グッズが一式揃っている。と言うよりも沙織さんに揃えて貰った。パッドも。下着も。

 もし誰かに触れられたとしても大丈夫なように本物の女性と遜色ない感触と肌の色を合わせた、首元から足を入れて着れる伸縮性の特注シリコンスーツ。体から出た汗をしっかりとスーツの表面に出せる高性能付き。本当に発汗している様に見えるからすごい。まして胸も局部も完璧な再現度だ。サイズが合わなくなったら胸のサイズと共に調整したものを再度製作して貰えることになっている。トイレの時は少しだけ面倒だがこれは仕方がない。局部に隠してあるファスナーを開けてからしなければいけないし。まして公共では女性用トイレを使わなければいけない。手間だが桜鈴音として生きていくには仕方の無いことだ。円道周一としても、生きるための円道鈴音も。現在ではどちらもこの家だけの存在。外では桜鈴音だけでしか俺の存在を認めてもらえないからだ。


 椎名の持ってきたワンピースに袖を通し、白のニーソを履き、長髪の髪を梳かし、シリコンスーツだとバレない様に首元の微かにうっすらと見える繋ぎ目に星のストラップが付いたチョーカーを付ける。

 長髪。髪を伸ばしているのは前のウィッグのままだとバレる危険性があると考慮してのものだ。今までの鈴音は買い物の時だけ。走ったりなどの動きをするわけでは無いのでウィッグで済んでいた。だから鬱陶しい髪は首に触れる長さまでなっていたら切っていた。殺しでは邪魔になるからだ。でも今では女性として生きなければならない。もし何かの拍子にウィッグがずれたら女装がバレてしまう。なので伸ばすことになったのだ。伸ばしていくうちに最初は鬱陶しかったが今ではそうでもない。


「・・・よしっ。あ、あ。あー。あ。あ。あ。あ。・・・うん!オッケー!」


 声の調整もしたし、これで朝の準備はカンペキ。本当はスーツを着たまま寝てもいいんだけど、着続けていると体がおかしくなる可能性があるから最長でも3日に1度は脱いで体のケアをして欲しいって、沙織さんと千早さんに言われたんだよね。今日は偶々そんな日だったから。偶に脱ぐのが面倒で着たままの時がある。でも、誰かが起こしに来た時にちゃんとその姿に合わせて名を呼んでくれるから嬉しい。そのおかげで私が俺だと再認識できるんだから。


「おまたせっ」

「・・・むぅ」

「ど、どうしたの椎名?」


 部屋を出るとドアの側で待っていた椎名が私を見てちょっとむくれていた。


「リンねえっ!」

「きゃっ!?ちょ、ちょっと!?」


 椎名に手を引っ張られ、また部屋へと戻っていった。




「あらあらぁ~~」


 そんなおばさん臭い台詞を口にするお母さん。


「・・・それで、時間がかかったのね」

「「ごめんなさい」」


 呆れられた華蓮に謝る私達。

 だけど仕方ないと思うの。だってオシャレは女の子にとって大事って椎名に言われたんだもん。髪型とかアクセサリーとかこだわんないといけないでしょ?オシャレに興味のない華蓮にはわかんないでしょうけどっ!

 私は空をテーマにしたコーデとなった。足は雲をイメージしたふわふわモコモコの白ニーソックス。ワンピースは椎名の用意した物で空の色。そして髪型は宇宙をイメージした星の模様が付いた青いリボンで結ばれたツインテールにされ、ヘアピンには月が付いていた。


「いいわぁ~。すっっごく!」

「でしょ~。私が仕立てたんだから当然!」

「さっすがシーナ!」

「えっっへん!」


 そんな親子のやり取りを微笑ましく見る沙織さんと千早さん。


「はいはい。2人とも、それよりも大事なお披露目があるでしょう?」


 華蓮がST開発ラボに関係者全員を集めた理由を再確認させる。


「むぅ。わかってるよお姉ちゃん」

「大事だからこそ可愛くしないといけないの」

「「ねー」」


 歳の差があるとは思えない応答。


「はぁ、まったくもう。鈴音」


 おバカ2人に諦めた華蓮は新しく、綺麗になった銀色の腕輪を私に手渡した。


「呼んであげて」


 そしてそう優しく言った。周りの皆もそれを期待するように見ている。


「うん・・・」


 華蓮に渡された腕輪を右手首に嵌める。

 


 この名前を気に入ってくれるだろうか?



 あの秋の事件から約半年。私がこの家、会社の中にある桜家に住まわせて貰ってもう新年になり、今日は3月3日。私はもう中学生2年生が終わり3年生へなる、といったところだ。新学期から華蓮と同じ学校へ行くための手続きとかも色々面倒だったし。そもそもその準備と言うのも・・・。



 リンねえ!!

 は、はいっ!?

 女の子はそんな喋り方しないよ!仕草ももっとこうっ!歩き方はこのくらいに歩幅を狭く!!ほらブロッサムもやるっ!

 私もですか?

 女の子になる特訓なんだから当然!

 いえ別に。私に性別など・・・

 ブロッサムはおんなのこっ!異論は認めませんっ!

 ええっ!?・・・華蓮!助けてくださいっ!

 いーんじゃない、女の子でもー

 そんなっ!?どうでも良さそうに言わないで下さい!

 あっ!リンねえ逃げるなーっ!!ブロッサムもウィンドウ消しちゃダメーっ!!



・・・あれはひどかった。

 でもそのおかげで桜家とも打ち解けた。沙織さんや千早さんとも普通に会話が出来るようになった。

そして、ブロッサムとも。


 あの約束と、夢を共にすることが出来た。


 まずは最初の約束を果たそう。



 しゅうい・・・

 ん?な

 鈴音

 呼び直すなよ

 椎名に怒られますよ

 今は別にいいだろ

 その姿でははっきり言って気持ち悪いです

 だったらお前もな。あのぎこちない声

 あなたに言われたくないです

 俺はまだマシだろ?アニメやラノ

 だから特訓させられてるんですよ

 ・・・最後まで言わせろよ

 周一

 ・・・なぁーにっ?

 気持ち悪いです

 ・・・・・・

 そんな顔しないで下さい。ちょーきもーい

 ・・・ぷっ

 ふふふっ

 んで、なんだ?

 今、華蓮が作ってるMC機能。あれが完成したら私が最初に適応され、順を追って私の複製にも適応していく話は聞きましたよね

 ああ。やっと体が持てるって話だろ。モニターの中だけどな

 はい。その時が来たら・・・周一。私に名前をください

 名前?今もあるだろ?

 それは私の仮の呼称名です。体を手にしたら私は・・・私はあなたとちゃんと目で見て話せるようになる!私という存在が皆に認識される!私が私という存在をはっきりと信じられる!!・・・そんな気がするのです

 そうか

 だから私が私だと。私がここに居ると言う証が欲しいのです。仮の呼称名も確かに私の名前です。今までもブロッサムと呼ばれて、違和感はありませんでした。でもあなたに言われてずっと考えてました。私が、私自身が本当にその名で呼ばれていたいと思っているのかと・・・いえ。私は何を言っているのでしょうか。自分でも解らなくなっています

 わかった

 え?

 考えてやるよ。お前の名前

 いいの、ですか?

 お前がやりたい事がそれなんだろ?それに俺が必要だってお前が思ったなら、俺にしか出来ないって言うなら考えておいてやる

 ・・・お願いします。周一

 ああ。お前にピッタリの。お前だけの名前をな




 気に入らなかったら呼んでも出てこないかもしれない。そんな不安もある。でもこれは私があの子に頼まれた事。あの子が今を生きるために必要な事。私にしか出来ない事。皆にはこの事を伝えていない。あの子は私が呼んだら出てくると。皆に伝えてからスリープモードに入っている。



 さあ。起きて一緒に行こう。人にも人間にもなれなかった、この先の見えない道を。



「イリス!」


 いつもと違う名前に周りが困惑する。


「はいっ!ますたーっ!」


 そして私と同じ格好をした銀髪の少女がウィンドウ画面の中に嬉し涙の笑顔で現れた。


「おはようっ。イリス」

「おはよう、なん、だよっ。ますたー・・・ありがとうっ」


 共に笑う2人の姿に周りも安堵し、つられるように笑顔になった。

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