7-19
「反省しましたか?」
「「はい。ごめんなさい」」
正座で少女に謝る大人2人。
『それで周一。これからどうするのですか?』
「どうするって、お前な・・・」
「それなら私のところに来て!」
それを聞いたアリアは立ち上がって胸に手を当てながら言う。その流れに紛れて春原も立ち上がる。
「私の家族として、息子として周一君を歓迎します!」
「家族?息子?」
そんなアリアの言葉に何処か苛立ちを感じた。
「はぁ・・・。周一君。つまりは養子になって。って意味なんだけど。どう?」
春原が補足するがそんな事どうでもいい。
「っ!お母さん!」
「ん?どうしたのシーナ?」
「周一さん。怒ってるよ・・・」
「「えっ!?」」
表情に微かな変化でもあったのだろうか。俺は1人になってから少女としての仕草を体に染み込ませ、表情にも無意識に出ないように心掛けた。それなのに椎名にはその変化に気付かれた。何故だ?
「・・・ホント?」
「うん」
「ご、ごめんなさい!何か気に障るこ・・・そう、よね」
謝罪をするアリアは何かに思い当たったらしい。春原もそれに気付いた表情だった。
「この言葉。あなたにとってはとても不快に聞こえてしまうのも当然ね」
不快。そうか。これが不快という感覚なのか。あの男、海原勇作に対しても感じたあの感覚。
「・・・いや。謝んなくていい。それよりも何で気付いた?」
「えっ?」
椎名に向けて聞いた。
「俺、顔に出した覚えは無いぞ?」
「んー・・・女の勘?」
「へぇ」
「し、シーナ!?」
『さすが椎名です』
その椎名の答えに三者三様の反応を見せる。
「そうか。それで、養子。だったか?それってあんたにとって損でしかないだろ」
「・・・損得の話じゃないの。私がそうしたいからそう言ってるだけ。それに戸籍上、あなたは死者。私が向かえ入れられるのは円道周一ではなく、あなたがSTに登録した円道鈴音なの。ごめんなさい・・・本当はあなたの名前で出来れば良かったんだけど、死者を養子には出来ないから・・・」
世間では俺は死者。だが俺が生きてる事はもう晒されている。だがそれを世間は認めない。
STを始めて起動した時、所有者変更の表示が最初にされた。そこには既に前所有者と保証人の欄に桜アリアの名が記載されており、他も全て埋まっていた。あとは氏名を記入するだけの状態で。つまりはあれに記入して登録した時点で俺、ではなく円道鈴音が桜アリアの関係者として存在することになったという事だ。後は何か理由を付けて鈴音を養子に向かえ入れれば円道周一ではなく円道鈴音がこの世界に存在する1人の人間として認められると言う訳だ。
桜アリアが言いたい事はきっとそういう事なのだろう。
「りんね?」
椎名は鈴音を知らなそうだ。という事は誰も言ってないのか。
『この人ですよ』
「わあっ!すっごくかわいいっ!」
そう言ってブロッサムはある画像を見せる。それは俺が買い物しに出かけた時のリンネの姿。
「ってこの人と周一さんに何の関係が・・・」
ブロッサムが追加で画像の横に【⇔】のウィンドウ画面を表示している。その画像の反対側には・・・勿論俺が居る。
『こういう関係です』
「へ?」
椎名は状況を理解出来ないのか。それとも理解しない方がいいと思ったのか。どちらなのかは解らないが椎名は大人2人へ視線を向ける。リンネの名を出したアリアは勿論、春原も知っているようで椎名の視線に2人は困惑していた。
「まあ・・・そういうこと」
「や、やったねシーナ。お姉ちゃん(♂)が増えるよっ」
そしてひねり出した解答がそれだった。それと養子になるなんて言ってねーぞ。
「私、妹が欲しいのにっ!」
いや、そうじゃないだろ。
『とにかく。周一。あなたは円道周一としてではなく円道鈴音として桜家に養子となるのが、いま最もあなたが安全に生きられる方法です』
「あれが俺だって気付くやつも、知っているのもいるだろ。どこに安全がある」
『そうですね。ですので周一。あなたにはもうひと仕事。お願いしたいことがあります』
「仕事?」
「ええ。辛いかもしれないけど。もしその気があるのならお願い。私がしたいことに付き合ってくれる?」
ブロッサムの話にアリアが加わる。
「椎名、アレを」
「う、うん」
春原に言われ、椎名は部屋の片隅においてあった箱から何かを持ってくる。
「周一さん。んーん。りんね、お姉ちゃん。これ」
それは俺が持っていた拳銃とサバイバルナイフだった。
だがお姉ちゃんになった覚えは無い。
「・・・つまり?」
これを持ってこさせた意図がわからない。
「今から世界中の人間共を脅してねっ」
この社長、笑顔でとんでもないこと言いやがった。




