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永遠の約束 永遠の旅 -とわのやくそく とわのたび-  作者: 風翔 響
第1部:エレメンタニア
86/109

7-15

『・・・足掻いて、どうなるというのですか』


 大通りに向かう最中、ブロッサムが聞いてきた。


「どうにも。ただ最悪が悪に変わるか変わらないかの違いだけだ。起きちまった過去を変えられる方法なんて在りはしない」

『あなたが行動すれば最悪が避けられるとでも?』

「ないな。そもそも俺は最悪の根源だ。最悪が悪を・・・いや、世間だと。今のあいつは正義の立ち位置だ。悪と思っているのは俺達ぐらいだからな。そんな俺があいつの敵として立ったら予想は付くだろ」

『ですが!あの華蓮の姿を見れば誰でもあの男を悪だと!?』

「そんなの、すぐにわかる。だからもう、俺が良いと言うまで黙ってろ」

『・・・はい』


 立ち止まったその先には高級スーツを着た中年男がボロボロの少女をお姫様抱っこで抱えてこちらに向かって来ていた。

 やがて、話せる距離までに近付くと足を止めて、華蓮を足元に寝かせ、ちらりと上空にあるドローンの位置を確認した。


「ふぅ・・・よくも私の大事な娘達に手をかけてくれたな?」

「・・・」

『(な、何を言っているのですか!?手をかけたのはっ)』


 最初に口を開いたのは海原優作。だが最初の一言で全ての罪を俺に擦り付けることに成功したと言えるだろう。


「まさか、私の名を使ってあいつらを利用し。挙句に娘達にまで危害を加えた。全てお前の仕業だと気付くまで時間がかかってしまった。まさか、私に復讐するためだけにここまでのことをするなんてな」

『(そんなっ!?)』

「だから聞きたい。何故・・・」


 怒りに震えるかの様に言葉に力を込め始める海原優作。


「何故直接私を殺しに来なかったあああああああああああああ!!!」


 海原優作の声が区域内に広がる。

 勿論周一はこうなる事もわかっていた。この男の性格を考えればすぐにでも思いついた。そしてあのドローンの存在に気付いていない訳が無い。

 つまりは芝居だ。世間の人間共を味方につけるためだけの。自分が正義であると主張するための。


「・・・何か言ったらどうなんだ!!人の姿をした化物め!!華蓮をこんなにしておいて、椎名にまで手を出していたら今すぐお前を撃ち殺してやる!!」


 海原優作は懐にしまっていた拳銃を周一に向ける。


「さあ言え!椎名は何処だ!!」


 ・・・確かにこれなら何も知らない無能共は騙せるだろうな。ドラマのように都合の良い展開では無いが父親として当然の行動をしていると思わせられる。まして俺を殺せば英雄になれる。国内での知名度も計り知れない。宣伝効果は想像できないものになるだろう。


 だから、なんだ?


 バァン!!


 一発の銃弾が周一の左肩を打ち抜いた。だが周一は打ち抜かれた場所を手で押さえる事はしなかった。

 打ち抜かれた所から徐々に激しい痛みが脳へと伝わる。普通なら何も考えられないだろう。


「今のはワザとはずした。その意味が解らないほど馬鹿ではあるまい・・・次は無いぞ」


 また再び、今度は頭に銃口を向けているようだ。


「椎名は何処だ」

『それは貴方も知っているでしょう!!』


 ブロッサムは何も言わない周一に痺れを切らしたのか、そう叫んだ。


『全部全部貴方がやった事でしょう!?椎名の誘拐も!円道周一を殺すためだけに恨みのある者達を集めたのも!華蓮を傷つけたのも!全部全部っ!!私を手に入れるためだけにっ!!』

「・・・はぁ。まさか最新の技術を奪った理由が、私を貶めるためだけだったとはな。ST起動。タブ、ユーチョーブを起動」


 呆れるように言った海原優作はSTを起動し、指示をした。すると海原優作のそばにあのドローンから撮影されている映像が映し出される。その画面には次々に流れるコメントの嵐。周一に対する暴言、海原優作に対する応援。そしてブロッサムに対する疑問。


「・・・そうですね。この光景を見ている皆様にはお話しておきましょう。実は今の機械音声は、私の娘、華蓮が作り出した最新のプログラム。人の言葉を理解し、会話が出来るというものです」


 そう流暢に語りだした海原優作の演説にコメントでは様々な反応が返ってくる。


「何よりもすごいのが感情を持たないと言われ続けていた機械が感情を持って会話出来るという点です!」


 もう仕草がただの宣伝演説だ。


「いずれは皆様の手元にも届くことになる予定だったのですが、この化物はそのプログラムを持っていた華蓮を誘拐し、こんな姿にしてまで奪い取ったのです!」


 そして海原優作はコメントのある一文を目に入れ、更に続ける。 


「そうですっ!奴は椎名だけでなく華蓮までも誘拐していたのです!!私を貶めるためだけに!!」


 2度も同じことを大げさに言っている。


 もういい、耳障りだ。さっさと終わらせよう。


「・・・そうですね。この化物はどうせ何も答えない。そもそも人の言葉を語れるかも怪しいでぇ゛!?・・・えっ?」


 海原優作は腕に激しい痛みを感じた。手元を見ると血で赤く染まった華蓮の寝転がる姿と一緒に転がる肘から下の腕が2本あった。それが自分の腕だと気付くのに時間は要らなかった。


「があああああああああああっ!?あぐああがああああああああああああああああああ!?!!???」


 痛みに悶えて膝を曲げて蹲ろうとした海原優作を蹴り飛ばして、華蓮から遠ざける。

 蹴り飛ばされた海原優作の視界には血が滴るサバイバルナイフを握る本物の化物の顔が映っていた。


「お前のお姉ちゃんはお前に任せる」

「は、はいっ!で、でも・・・」

「気にすんな。今はお前の最優先をしろ」

「・・・はいっ!」


 後ろに立っていた椎名に向けてそういった。椎名はそう言われ、すぐさま華蓮の元へと駆け寄って持っていた袋の中から様々な薬や包帯、消毒液に絆創膏などをひっくり返して全てを袋から出して不慣れな手当てを始めた。


『私も良いですか?』

「聞く必要あるのか?」

『・・・そうでした』


 そもそも指示を無視していたブロッサムがわざわざ周一に許可を取る必要は無い。ブロッサムも椎名の側へと画面を移した。



「・・・でさぁ?さっきからわめいてんじゃねーよ。いい大人だろ?・・・あ、悪い。そういえばオレのコトバはリカイ出来ないんだったな。だって化物は人の言葉を語れない、だろ?」

「しいなあああああああああああああああ!!!」


 周一の声を無視して椎名に向けて叫ぶ哀れな中年男。その声にビクつき、チラッとその声へと顔を向ける椎名。


「そんなのより私の手当てをしろおおおお!!!何が一番か解らないほどお前は馬鹿なのかあああああああ!!」

『椎名』

「っ・・・うん。大丈夫だよ」


 椎名はブロッサムの声に正気を取り戻し、再び華蓮の手当てに戻る。


「無能共があああああっ!!」

「それは誰のことだ?」

「っ!?」


 バァン!!


「がああああああああああああああああああああ!!!?」


 右足を撃たれ、身動きがまともに出来なくなった海原優作。


「おっと悪い。そのままだと死んじまうな」


 周一はポーチから小さなケースを、そこから注射器を取り出した。そして注入出来る準備が出来たところでそれを海原優作の体へと注ぎ込んだ。


「な、何を入れた!!?」

「なあ?痛みがあって死ぬのと、痛み無く死ぬのと。どっちがより死を感じられるんだろうな?」

「な・・・」


 海原優作に変化が起きる。先程まで激しい痛みしかなかったのにあの注射をされてからすぐに痛みが引き始めた。


「痛み止め、鎮静剤。麻酔。色々呼ばれ方はあるみたいだが、それを超強力にした奴だ。死ぬほど痛いのでもすぐに感じなくなる。まっ。これを使うとしばらく痛覚や触覚がなくなるし、寝たら最低でも2日は起きないけどな」


 それを聞いた海原優作は恐怖のあまり言葉が出なくなった。いや、薬の所為で出せなくなっていた。

 そして、恐ろしい程の眠気に襲われ始める。


「さて。お前を助けられる時間内に助けが来ると良いな」


 化物の笑みを最後に海原優作の瞼は閉じた。


「って訳だ。これを助けたい奴がいるならすぐに此処に来て助ければいい」


 そうドローンに告げて、周一は椎名の元へと歩いていく。


「これ余ってるか?」

「う、うん」


 落ちていた新品の包帯を手にとって椎名に聞く。見たところ、腹部と頭部の処置は何とか終えたようだ。

 拒否できる立場ではないと思っているのか戸惑いながらもそう答える。

 だが周一はそれを自分の肩には使わず、消毒液を染み込ませてから華蓮の腕や足に当て始める。包帯の数や長さが限られているので簡易処置で済ませる。


「・・・とりあえず腕や足はこれでいい。折れてはいるだろうが切断されてる訳じゃない。ちゃんと息もしてる。後はお前が信頼出来ると思う奴にでも連絡して病院に連れて行ってやれば治る可能性は十分ある」

「ほんとう?」

『はい。後遺症の可能性もありますが、リハビリで改善される可能性もあります』


 補足するようにブロッサムが告げた。


「・・・ありがとう・・・ありがとうっ!」

「ぐっ!?」


 椎名は嬉しさのあまりに周一に泣きついた。だが触れた場所が悪かった。打ち抜かれた肩の側に触れたため、微振動でも激しい痛みへと変貌する。


『椎名』

「・・・もうちょっとだけ」

『いえ、そういう事では・・・』


 椎名が周一の我慢に気付くのはもうしばらく後のことだった。

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