7-10
「状況は?」
『はい。現在、椎名の場所はここです』
「・・・ってここ、俺の中央拠点か」
ブロッサムが出した地図は今居る南西拠点から北東へ向かった先、中央付近にある建物の拠点だ。因みに他の拠点と線で結ぶとバツ印が出来あがる様になっている。
『ご丁寧にライブまでしてくれていますよ』
そしてブロッサムは別ウィンドウにその映像を表示した。
【・・・おいおい見てみろよ!こんなとこに女物の服がいっぱいあるぜ!!】
【え!?ホント!マジ!?】
【うわー、下着まであるじゃん。何なのここ?誰か住んでたわけ?】
【いーじゃん。そんなのどーでもさぁ】
【だよなー。食料も水も寝床も何もかも揃ってんだ!これで後は金が来るのを待つだけなんだからよー】
【ハァハァ・・・な、なあ。その服、この子に使っていいか?】
【【【【【変態かよ!!】】】】】
【モノマネに決まってんだろ!!】
そこには古典的に口を布のようなもので塞がれ、手足を紐で結ばれてベットの上で寝転がらされている少女の姿。そしてその周りには知能が低そうなチャラけた男4女2の集団が高笑いをしながら生中継をネットで公開していた。コメント欄にはドッキリ企画と察している者達が多いのか悪乗りしているのが大半だ。それにモノマネとは一体誰の真似なんだ?
「こいつら、あのおっさんに殺されるって解ってないんだな」
『・・・仕方の無い事です。その辺で見繕った人材なのですから』
桜椎名が誘拐された。と、報道されているが実際は海原優作が仕組んだ計画の序章。これはあくまで、ブロッサムを、そしてその所有者である俺を誘き出すための計画だ。つまりあいつらはそのために使われたあのおっさんの使い捨ての道具でしかない。善人を称している奴はこんな計画には乗らないだろうが、金が無い奴だったり、遊ぶ金欲しさに手を出す無能は少なからずいる。今映っているのはきっと遊ぶ金欲しさだろう。そもそもネットで生放送。つまり映っている集団はドッキリ企画とでも勘違いしているのだろう。この企画をあのおっさんが何処まで関わっているかはわからない。だが奴らは目立って楽しい、金が貰えて嬉しい。あのおっさんはブロッサムを手に入れ、宣伝が出来る。WIN-WINの関係が生まれ、契約出来る。
そして契約が終われば・・・よくある話だ。
「そんで」
『はい。こちらも配置完了と言ったところでしょうか。見事に拠点を取り囲むように人員が配置されています』
もちろん、あのチャラ集団では俺からブロッサムを奪う事は出来ないだろう。つまりは俺を殺すための人手が居る。
『情報通りです。あなたに恨みのある警官や自衛隊員を集めに集めてます。総勢128人です』
「・・・なんだ、その程度か」
周一はその数に呆れていた。あのおっさんなら絶対知っているはずだ。俺が今までどれだけ殺してきたのかを。無力な奴から軍人まで見境無く殺してきた俺にたった128人・・・舐めているのか。それともそれで十分だと思ったのか。
『その程度、ですか。ですが銃器は豊富です。それでも周一。あなたは椎名を助けだせるのですか?』
「・・・なあブロッサム」
拳銃やナイフなど、武装を調えながら周一は続ける。
「俺が最初に殺した奴って知ってるか?」
『・・・はい。あなたの父親です』
少し答えるのを躊躇ったブロッサム。
「ああ。しかも凶器は父さんが隠し持ってたカッターナイフだ。俺はアレがなかったら殺さなかった、って事は無い。別の、凶器に成り得る物を必ず手に入れて皆殺しにしていただろうよ。要は目的を果たすためには手段を得なければならない。あの時は偶々持ってきてくれたってだけの話だ」
『殺さないという選択は無かったのですか?』
「無いな」
即答だった。
『・・・何故ですか?』
「人が認めないからだ」
『人が、ですか?』
「ああ。俺がこうなる前と後。結果、変化しなかったものが何かわかるか?」
『変化・・・前ではフューパによる判定で[変態99%殺人鬼1%]の情報がマスコミに流れた事によって隔離されていたあなたの家族への批判が多く見られました。そして後では家族と無関係な人々を殺したあなたは化物としての扱いに。そして後に自衛隊によって殺され、あなたは亡霊と化しました。・・・変化しかありませんが?』
概要を簡潔にまとめたブロッサム。確かに変化しかない。だが絶対的に変わらない事象が1つだけある。
「俺の存在」
『存在・・・そういう事ですか』
「ああ」
理解したのかブロッサムの声が低くなる。
「フューパで判定が出た時から、俺は、人では無くなった。誰からも人として認めて貰えなくなった。・・・親にすらな」
『・・・・・・』
父親が凶器を備えて子の前に現れた。それはつまり自分の子に殺されるかもしれないと考え、そうなる場合に陥った時のための防衛手段を用意していた。それは周一を自分の子として見ない所か、人としてすら見ていなかった事になる。それを聞かされたブロッサムはどう答えていいか解らなかった。
「お前はどうなんだ?」
『私は、少なくとも2人・・・いえ、今は3人ですね。人として見て貰えていると思います』
「そうか。良かったな。こうならなくて」
『・・・そうですね』
ブロッサムにとっての3人目。それが伝わったかはブロッサムには解らないだろう。
「まあ、話がそれたが。殺しのプロだろうが銃器をたんまり持ってようが、選択1つ間違えるだけで死に繋がるのがどの生物にも言える基本だ。要は一瞬一瞬。選択を間違えなかった方が生き残る。それだけだ」
『そんな事、可能なんでしょうか?』
「情報量の差だな。と言ってもそれが生に繋がるかどうかは誰にも解らないけどな」
『私には考えた事も無い話ですね』
「そりゃな。こんな事は俺だってこうなるまで考えた事も無い。でもこうなったから、考えた。そういう選択を選んだ。それだけだ。複雑に考える必要なんて無い。全てなるようになった結果が過去で現在だ。1秒先の未来なんてわからないさ。・・・あと」
バァン!!
話の途中で拳銃を片手で構え、その先。この拠点の入口のドアが少し開いて誰かが覗き込もうと影を出した瞬間に拳銃を発砲した。
「127人だ」
警官服を着た男が勢い良く開くドアと共に倒れ、頭から血を流していた。
『・・・良く解りましたね』
「経験でな。まあ俺、変態で殺人鬼で、化物なんで。あ、今は亡霊か」
『ふふっ。では亡霊さん。お願いします。今ので数人こちらに向かってきてますので』
「ありがたいねぇ。その情報があるとないとで難易度が天地の差だ」
周一もブロッサムも笑みを浮かべているのだろう。警官の死体を跨ぎ拠点を出る。
「さて、目標はあのおっさんを肉塊へ変える」
『はい。ですが2人がそれを望まなかったら考えてくださいね』
「ああ。考えるだけな。結果は変わらねーよ。俺が死ぬか、おっさんが死ぬかだ」
『それって聞くつもりは無いって言ってますよ。と言っても私もそれで構いません』
「じゃあ言うなよ」
そして次々に顔を見せた者達を殺し始めた。
あと、119人と1人。




