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永遠の約束 永遠の旅 -とわのやくそく とわのたび-  作者: 風翔 響
第1部:エレメンタニア
77/109

7-6

「あっ!リンネちゃん。今晩は何にするんだい?」

「はい?そうですねぇ・・・今日の気分はハンバーグかカレーのどっちかかなと・・・」

「あら?リンネちゃんでもやっぱり迷うのね」

「もうっ。私を何だと思って・・・あっ!いっそのことハンバーグカレーにしちゃおっかなっ」

「いいわねっ。それウチの今晩にするわ。ありがとう、リンネちゃんっ」

「・・・えっ?」


 見知らぬおばさんとそんなやり取りをスーパーでしている黒髪ロングのワンピース少女。それを周りでチラ見していた他の客もカレーやハンバーグの材料を自然に籠へと入れていく。少しでも手を抜きたい人はレトルトや冷凍、惣菜コーナーで売られているものに手を出していく。そしてその結果・・・。


「うぅ・・・。私のはんばぁーぐかれぇ・・・」


 レトルトカレーと惣菜コーナーのハンバーグで済ませようとしていた少女の今晩の献立を変える破目になってしまった。



 スーパーから出てきた少女の手にはから揚げ弁当とカップ麺、それに牛乳2本の入ったエコバッグ。結局、何も思い付かなかった末路だった。これで何度目だろうか。確かに主婦にとっては毎日献立を考えるのは大変なことだ。ただそれを子供から聞いて横取りするのはずるくてひどいと思う。

 少女はエコバッグにウキウキで詰めて行く主婦たちの横顔を思い出しながら薄暗い路地へと入って行き、閉鎖されている区域の側にある建物のドアの鍵を開けて入って行く。そしてドアが閉まり、鍵をかけ直すとその先に見える大きな壁の抜け穴があった。と、言っても。俺が空けたんだが。そこを潜り抜けた少女は、まだ微かに残る血の臭いと、所々に黒ずんだシミのある街中を歩いて行った。



 あれから2年半ぐらい。普通の子供なら中学生になった年頃だろう。だが、この居場所には俺以外誰も居ない。幾つか作った居住スペースの1つ。買ってきたものを冷蔵庫に入れ、大きいヒヨコのぬいぐるみが置いてあるソファーに腰をかけた少女はSTに触れると出てきたウィンドウ画面を操作してテレビ機能を起動する。するとその画面がテレビの画面へと変わり、夕方にやっている番組が流れ出した。そんな興味の無い番組をぬいぐるみを抱えながらじっと見つめる。

 このSTのおかげで今では外での買い物でも不自由は無い。あのサクラコーポレーション社長。桜アリアが託してくれたもの。そのうち使い方が分かる。確かにその通りだった。自衛隊の襲撃からしばらくしてSTが携帯電話やPCの代用品として一般にも普及するようになり、その宣伝もまたテレビでしたため使い方はすぐに分かった。このSTに付いているボタンを押すと道具無しで見れるARによるウィンドウ画面が胸の前辺りに表示される。それからはその画面に触れることで操作が可能。簡単な事なら音声での操作も可能だ。そして何よりありがたかったのはこの機器に登録されている銀行口座に1000万のお金が入っていた事。これのおかげで外での買い物が可能になったのだ。キャッシュレス時代のおかげで深く調べられる事が無い限りは安心だ。

 そういえば連絡をしろとも言っていた気がしたが、桜アリアは牢の中。連絡先には登録されてはいるがしても意味は無いだろうし、最悪バレる危険性の方が高いだろう。ただ何故、桜アリアだけではなくその娘の名前であろう桜華蓮さくらかれん桜椎奈さくらしいなの名前も登録されていたのかは分からなかった。

 そんな代わり映えのしない時間を過ごす少女。たまに部屋着の男の服に着替えるかどうかも悩んだりするが、どうせ外に出る時は少女の格好をしなければいけないと思って断念する。そういった理由で必然的にどの居住スペースにも少女服の割合が多い。どんな時でも女の格好をしておけば外へ出た時の仕草の不自然さをかなり減らせる事が出来るからだ。


「・・・はぁ。退屈」


 声も女声を練習したときからずっと。女の姿の時には常に歳相応の女の子の声を出す様にしている。声だけでは無い。立ち方。歩き方。走り方。座り方。化粧のやり方。オシャレの仕方。そんな女性の細かい仕草を全てをテレビに出ていた出演者達の動きで覚えた。街中にあった女性誌で覚えた。アニメの女性キャラの真似をしてみたりもした。不意に男に戻ってしまえば怪しまれる所では済まない。常に平常運転でなければならない。だから誰も居ない時でもそれは怠らなかったから円道周一ではなくリンネが、外で歩いていても怪しまれない黒髪ロングの美少女が誕生したのだ。



「検索。ワード:円道周一」


 そう口にすると別ウィンドウに検索サイトが表示され幾つものリンクページのタイトルが並ぶ。それをスライドしながら見ると【心霊スポット:変態の血染め街】という掲示板サイトがあった。それを選択肢し、サイトを開くとそれは心霊サイトと呼べるに相応しい背景のページに書かれた掲示板のコメントがズラリと並んでいた。

 そこには静岡の閉鎖されたとある街に現れる変態の悪霊が居て、出会ったが最後死は免れないと冒頭のサイト説明文に書かれていた。それに対してのコメントは様々。


 あの変態の話?

    自衛隊が殺したってやつだろ、誰がこんな話し信じるんだよ。

   俺行った見てきたけど閉鎖されてて入れなかったぞ。移動費返せ。

      俺はあの閉鎖された抜け穴見つけて中見て来たし。お前がちゃんと探さなかっただけだろ。

 嘘乙w

    嘘乙wとかワロス。そもそもお前は行った事自体が嘘だろw

 抜け穴の証拠あるかよ?

       ああ。あるぜ。この画像見ろよ。



 そこには閉鎖されている防壁に穴が開いている画像。そしてその側で顔にモザイクがかかっているがチャラけた奴等がカメラ目線でピースしていた。


 そこ、私が行ったときにはもう封鎖されてた。

     え、マジ?

       そもそも中入ったのかよ?

          お、俺達は穴空いてた所を覗いただけ。そしたら爆発音やら銃撃戦みたいな音がしてたからビビッて逃げ・・・戦略的撤退したわw

  それ逃げて正解だわ。知り合いから聞いた話だけど偶にあの中でミリオタが遊ぶらしいからな。

           それマジ話?

  マジ。そんで終わって帰ろうとした時に人数確認したらたったその時チームを組んでいたやつらだけ。他のチームとは連絡も繋がらなくて抜け穴で1時間ほど待っても来なかったから帰った。その数日後にその抜け穴付近で連絡の取れなかったミリオタ仲間達の血塗れになった死体の山が発見されたらしい。

   はいはい作り話おつー。



「マジなんだけどねー」


 付け加えればミリオタだけではない。自衛隊員達の仇討ちとばかりに攻めてきた奴等。身内を殺されたとほざいていた奴等。果ては海外から来た武装集団まで来る始末だ。

 だがその全てを返り討ちにし、この居場所の平穏を守り続けてきた。死体を片付けるのが面倒だから奴等が入ってきたであろう抜け穴にまとめて転がしておいた。そうすれば外の奴らが勝手に片付けるからだ。そんな事をしてもニュースでは公にはされないし、そもそも閉鎖された区域付近に住んでいる人は居ない。血の痕跡が無い廃墟と化した建物が幾つも並んでいるだけ。だから死体を発見するのは、怖いもの見たさに捜索しに来る奴等ばかりで、こういった情報もネットの中の噂話で終わってしまう。

 むしろ終わらせたがっているのかも知れないが。


「・・・いつまでこうしてればいいのかな」


 顔をぬいぐるみに埋める。

 そんな問いかけには誰も答えてくれない事は分かっている。でも言わずにはいられない。


 だって。あの時からずっと俺は・・・。


 目元だけを画面に向け、掲示板をスライドしていく中で、ある一枚の画像が目に入る。


「あっ」


 口元をぬいぐるみに埋めながらも思わず声が出る。何故ならその一枚は。


    ドローンで中覗いてみたら俺の彼女が歩いてたわwww

        うわっ。妄想お・・・ってマジで美少女だわ。俺にくれw

    は?あげる訳ねーだろ。 

  いやいや。論点そこじゃないでしょ。


 

 画像に映っていたのは黒髪ロングの少女、自分の姿だった。



     何で閉鎖されてる中に人がいるのよ。

   合成だろ?

         加工なんてしてねーよ。

     だったらマジの心霊写真?変態に殺された少女の幽霊だったりして。

      だったらお知り合いになりたわ~。

  そのまま憑かれて4ね。

         この娘にだったらそうなってもいいw

      確かにw

               今度、愛言ってみようかなぁ

    おい、誤字ってんぞw

 

       ・・・おい、返事しろよw

            マジで文字通り告白しに行ったんじゃねww

     もしマジだったら俺の部屋大草原にするわwwwwwwww



「・・・これなら噂程度で収まるかな。でもこの画像を知ってる人が私を見つけたら面倒かも・・・」



 警戒するに越した事は無い。

 周一は他にこの画像が拡散していないかを確認すると心霊好きと自称する人物のツイッターにもその画像がある事を見つける。この辺りは本当に警戒しなければならないと周一・・・リンネはそう思った。

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