7-4
【・・・番組の一部を変更して緊急速報をお伝え致します。本日午前0時20分頃、静岡県静岡市で未来予測装置フューパの結果によって隔離されていた少年。変態の円道周一が大量殺人を行い、施設から脱走しました。その後、変態は施設に集まっていたマスコミや警官、施設近くの神社で初詣を行っていた参拝客達を次々に殺害し、死者は上空や監視カメラによるもので少なくとも5000人は超えているとの事。付近に住む住人は周りを警戒しながら速やかに非難を行ってください。繰り返しお伝えし致します・・・】
午前7時。日が出始め、街が明るくなってくる時間。周一は静かになった街中の百貨店、その警備室。モニターが数ある中で設置されていた地上波が映るテレビでニュースを見ていた。
「・・・脱走した?おいおい。それじゃあまるで俺はあのおっさんに飼われてた人殺しの化け物みたいじゃないか」
ニュースのアナウンサーは確かに脱走と言葉にしていた。本来俺はあの時日付が変わった瞬間にあそこを出られると言う約束だったはずだ。
「なぁ?そう思わないか?」
周一は床に溜まった血の上に転がっている20代の女性に声をかける。だが返事は返ってこない。
「ああそっか。そういや、聞きたい事聞いた後に五月蝿いから殺したんだっけか」
物忘れがひどいのか、それともこんな女の事を記憶に残す必要が無かったのかは周一自信にも解らない。参拝客であったこの女から聞いた話は3つ。現在地。俺の事。この腕輪の事。これ以外に聞きたい情報なんて無かった。最悪インターネットを使えれば全てわかる事。だがそれらを早く知れるかどうかで、これからが変わる。
まず現在地。この女とニュースの話で静岡市にいる事がわかった。あの時、車で長時間移動していたが俺の実家、浜松からそこまで離れていない。そもそもサクラコーポレーションがここ静岡市にあるんだ。施設が近く似合っても確かにおかしくは無い。
次に俺の事。俺はあの未来予測装置。フューパの結果は変態が99%、殺人鬼が1%と出ていたらしい。あの予測装置はDNAから未来に成り得る将来の可能性。というものではなく、正確には体質の好みを言語にすると職業の中で何が一番近いかを出すものだったそうだ。職業が出ないものも俺の他にも居たそうだが俺みたいに極端ではなく、10%以下の端数程度のもののために基本的に省かれる。つまりは頭と体が合っていれば嫌気も少ない。フューパの結果で出た言語に適応した職業に就けば結果を残しやすい。そのための工程を子供の頃から築けば未来は安泰。そういうことだったらしい。俺の情報はニュースで知ったらしく、この情報以上の事は得られなかった。
最後にあの社長が俺に嵌めていったこの銀のブレスレット。あの警官達が嵌めていたのに似ている腕輪だ。これはST、サポートツールと呼ばれる機器らしいが身分証明とGPSでしか使えない。その程度の効力だがセキュリティーが高い施設などでは色々な物に使われているとの事。肌身離さず。常に身に付ける事で無くす事も無く、例え無くしたとしてもすぐに対応が出来るために重宝しているらしい。後にはスマートフォン機能どころかPC機能までが使えるようになる予定だとサクラコーポレーションの新社長であるあのおっさんが公言したらしい。・・・とは言われても。俺にこんな身分証があった所でこれが何に使えるんだと言うんだ。
だがこのとき周一は忘れていた。桜アリアが言った言葉を。そのことを思い出すのはしばらく後のことだった。
・・・さて、腹に程よく入れた。朝にもなった。体もまあまあ動くようになった。
百貨店に来るまでにその辺に転がっていた同身長ぐらいの肉片から奪った少し血に染まった動きやすい服を着て、一応あの銀の腕輪も嵌めておく。邪魔にはならないし最悪何かを防ぐときに使えるかもしれない。それと銃弾弾の入ったポーチ、ホルダーに入れた拳銃。切れ味の良さそうな2本の包丁をカバーに入れ、それらをベルトへと通して腰に巻く。
「あのニュースからして、来るだろうな。軍か、それに近い何かが」
もしかしたら漫画の世界のように暗殺者とか呼ばれる裏の存在が来るかもしれない。でも現実ではまず確実に表の存在で問題を解決しようとするはず。
そんな準備を整え終わった時、ニュース番組のコメンテーターからこんな発言が出る。
【・・・今ネットで、あの変態を始末するために軍が動くんじゃないかって噂になってますからね】
予想通り。住民を避難させるとさっき言っていた。本来、害が及ぶ可能性が無いなら近付かない様にと伝えるはず。だがニュースは避難勧告をした。つまり、害の及ぶ可能性のある付近の住人の非難が完了次第、俺の討伐が行われるというわけだ。たかが小学生のガキにだ。笑える話だ。いや、国外に笑われるから国内だけで済ませようとでもしているのかもしれない。そもそも、普通は交渉から始めるはずだろう?
【・・・まあ、善悪を理解していたらこんな事にはならなかったでしょうけどねぇ。教育すらまともにしてなかったらしいですから。ったく。本当にあの元社長は厄介なもんを押し付けてくれましたよねぇ】
どうやら俺は善悪が解っていない園児レベルの知能だと思われているようだ。だから言葉が通じない子猿と同じだと。そんなコメンテーターの言葉に便乗する出演者達。
「・・・こいつらアホか」
聞かせる相手もいないのに思わずそう口にする周一はテレビに向かって拳銃を構えて1発撃った。画面が割れ、何も映らなくなったテレビを背に周一は警備室の扉に手をかける。
「テメーらはそんなガキに、何千人も殺されてる事を理解したほうがいいんじゃねーのかよ?」
その言葉を後に、警備室には息耐えた女性と食い散らかされたゴミだけが残された。




