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とりあえず、4人の警官から拳銃を集める。弾数は5発入りが3つと4発入りが1つ。さっきの1発で20から19へと弾数が減ってしまった。一応、他に何か無いかと探るが、あったのは無線の機械と警棒とか呼ばれる護身用の棒ぐらいだった。それと全員の手首に腕輪のような機械が付いていたが用途がわからないため、放置した。
警官のベルト1つ外して腰に巻きつける。一番体の細い警官から拝借したが自身のやせ細った体に合うはずも無かったので足りないスペースは拳銃を腰に当てながら巻きつける事で補った。手に入れた4つの拳銃の内、弾が5発のものは腰に当てたのが1つ。ホルダーをベルトに通して腰の左右に1つずつ。そして4発の物を最初に扱うことに決めた。警棒は殺傷力が低いので使う事は無いと判断してそのまました。一撃で仕留めなければ反撃のリスクは計り知れない。先程の様に銃を発砲されかねないからだ。
(・・・さて、どうするか)
準備を終えると階段の下のほうで何か掛け声のような声が聞こえる。きっと編成を組んでこのビルを虱潰してでも俺を見つけに来るつもりなのだろう。見つかれば1階で撃たれたであろう銃弾が今度は俺に当たることになる。だが俺には対処する手段が無い。今手元にある物では対応が・・・。
(そうか。あの頃見た。こういう物語だと後々、電気が止まって退路を絶たれる。なら・・・)
そうなった主人公やテロリストの脱出手段は屋上か正面突破の2択。無謀すぎる。
ならそうなる前にそれを一時的にでも止めさせ、更に脱出へのリスクがかなり低くなる可能性の最短ルートを周一は思いついた。
(だがこれは賭けだ。失敗すれば確実に死ぬ)
だが他に手段は無い。やるしかない。周一は床に転がっている警官達の死体を見ながら決心した。
「おいっ。電源は?」
「・・・はいっ。いつでも落とせるそうです」
「よしっ。や」
1階ホール中央の受付カウンター周辺で現場の指揮官であろう男が部下に指示を下そうとした時、エレベーターの数字が変わった事に気付いて声を止める。他の者達もその反応に気付いて階段前で編成を組んでいた者達も息を呑んでエレベーターへと視線を送り、1階を任されていた4人組がエレベーター前に立って拳銃を持ち構える。
そしてエレベーターが4階で止まり、そして2分程たった後に3。2。そして、1。
ピーン。
緊張の中、エレベーターの到着音と共にエレベーターの扉が開く。すると拳銃を構えて待っていた4人の前に現れたのは先程周一が殺した4人の警官達が足を伸ばし、背中を預け合って座っている死体の山だった。
「うわああああああああああああああっ!!!???!?」
構えていた警官達はその光景に驚き、口元を押さえたり、目を逸らしたり。中には尻餅をついた者もいた。
「くっ!電源を落とせ!!」
指揮官の大声に、部下は無線で急いで伝えると電気が止められ、ビル内は非常用の薄暗い明かりのみで照らされるようになった。
「見つけ次第撃って構わん!今すぐにあいつを始末しろっ!!」
『はいっ!!』
そして階段前で編成を組んでいた警官達に指示をし、警官達はすぐさま階段へと駆けていった。先程の1階組も後を追って駆けていく。
「・・・クソッ。あんなガキ1人になんてザマだ」
指揮官はエレベーター前に近付き、4人の死体を見ながらそう吐き捨てた。そして指揮官は気付く。警官達に拳銃。そして無線が無い事に。
「・・・おいっ。全員聞こえるか。あのガキは銃と無線を奪っている。だが銃はまだしも無線の使い方が解るとは思えない。私達の情報を盗み聞こうとしているのかまたは壊されてるかだ。だが関係ない。そのままお前達は情報を伝え合え」
その声に少しの間があったが、しばらくしてその意図が伝わったのか了解の声が次々に聞こえた。
無線を定位置に戻した指揮官はエレベーターを背にポケットから出したタバコを加え、火を付ける。
「すぅ・・・はぁ~・・・。これで後は時間の問題だな。無線が壊されて無ければ位置を特定するのも簡単ぁがっ!?」
そして突如首元に痛みを感じた指揮官はタバコと同様に床へと倒れた。そして倒れた側には血塗れの周一がカッターナイフを片手に持って立っていた。
指揮官が殺される瞬間の少し前。目撃していた者がいた。4人の死体の背中、立てかけるために置いてあった箱から周一が出てきていたのを。だが声を出す前に、指揮官の首は切られてしまっていたのだ。出てくる時に微かでも音がしたはず。その音に無意識に振り向いたはずだった指揮官。まさにその瞬間、指揮官の首が切られたのだ。それは一瞬と表現するしかない程の早さだった。
1階ホールに叫び声が響く。どうやらパニックになっているようだ。だが、そんな叫び声を出されてしまってはすぐに編成を組んでいたであろう奴等が戻ってくるかも知れない。そう思った周一は、感覚があまり無い足を無理やり動かして走り、1階に居た周一の目撃者達を次々に殺していった。
(すぐに出)
パァン!パァン!
パニックになっている目撃者達を殺した後、発砲音が2発。後方、階段側から聞こえたが体に痛みは無い。どうやら外れたようだ。
周一は振り返らずに出口へ、外へと駆け出した。
すると外は部外者の侵入を防ぐために立っている警官とマスコミ達や野次馬達による光で満ちていた。
「おい、誰か出てき・・・」
マスコミの1人だろうか。そんな誰かの声が途中で止まる。
『うわあああああああああああああああああああああああああ!!!!!????』
そしてその場の誰もがビルの入口に立つ血塗れの少年の姿に場が一変し、パニックになった。誰もが夢だと疑った。こんなものは現実じゃないと。警察が。正義が勝つんだと。誰もがそう望んでいたからこそ声を荒げ、その場からいち早く逃げようと周りの者達を突き飛ばし合うマスコミ達。進入防止をしていた警官ですらあのザマだ。突き飛ばされたマスコミの1人が警官の足を掴んで助けを求めようと声をかけようとした瞬間に警官はそのマスコミの顔を思いっきり蹴り、その場を後にしようと駆け出す。
(これが外の空気か。俺の居た所より、ゴミで満ちてるじゃないか)
そんな光景にそう思う周一。
(じゃあ、空気を少しでも良くするために。掃除するか)
周一は後方からかけてくる警官達に目も向けずに駆け出した。周一は知っていた。正義を志してる奴等が一般人に銃を発砲することが出来ない事を。何故なら誤射による無関係な人物の殺害を恐れるからだ。その思惑通り、集団に紛れ込んで殺害し続ける周一が銃で撃たれる事は無かった。次々にカッターナイフで首元切り、心臓を刺し、警棒を持って向かってきた警官達には拳銃で頭を撃ってやり、すぐにその警官が持っていた銃を奪って更に掃除を加速させた。
そして・・・。
最後の銃声が響き、ビルから出てきたであろう警官達の中の最後の1人が倒れた。その1人は最後になったことに恐怖し、命乞いをした。助けてと叫びながら背を向けて走り逃げるのを撃ち、倒れたのを見た後。肉片の海から夜空を見上げる。あの場に居た全員を殺す事は出来なかったが、何人かはある方向へと向かって逃げていくのが度々見えた。
「・・・くっさぁ」
その原因を作った本人がそんな事を口にした後、周一は落ちていた誰かの所持品であったカバンから栄養補給用の飲料ゼリーのパックが見え出ているのを見つけて手に取り、味などを確認せずにそれを口に含んだ。
(あ、これって確かグレープ味だったっけ?・・・懐かしいな)
久しぶりの果物の味を味わいつつ、周一は複数人が逃げて行った先へと向かって歩き、そして闇へと消えた。




