7-1 続・存在理由
場が落ち着き、王座の間に用意されていた人数分の座布団に各々が座ると、フォレフォスの女王ティーテがため息を吐いた後、口を開いた。
「・・・冗談が過ぎるぞ」
『「それをあなたが言うの?」』
「うっ・・・」
戸に手をかけた瞬間にでかい斧をぶん投げてきた奴には言われたくは無いという視線を向ける。
「おほんっ・・・それよりもアイリス。茶番だと知っておったなら何故言わぬ。それどころか便乗しよって・・・」
「それは・・・」
「したところでお前の大好きな私の話が延びる事になるだけだがな」
「うぐっ・・・」
しなければ良かったと後悔した顔をするアイリス。本来ならアイリスが私達を止めて話が進む展開に持ち込みたかったのに、アイリスまで茶番ごっこに便乗したから早めに切り上げる形で私がイリスに、そしてイリスがアイリスにアイコンタクトで終わるように伝えた。
というか、まさかアイリスが乗って来るとは私もイリスも思わなかったよ。
「まあ良い。お前達の言うとおり話を進めるとしようか・・・まずは。風の女王クーラ・ブリズ」
「はっはいっ!?」
「言ったであろう。そう堅くなるな。お前は私と同じ国を預かる身。歳の差があるとはいえ対等な立場だ。お前の目的を話すがいい」
「・・・はい。実は・・・」
クーラは淡々と自分の国で起こった事を話した。アイリスが補足を加えたりする中で時折辛い表情も見せたが、私達のこれまでの話を含め経緯を話した。
「なるほど。となれば、奴らの対応も考えねばならぬな」
「そういう事だったのか。だからお前はあんなこと言ったのか」
門前で言っていた周一の言葉に納得がいったギーベスト。
「うん。だから出会った時点で色々ばれちゃったかもって訳」
「・・・それは元には戻らんのか?」
「ん?戻るって?」
「いや、いい・・・」
あれ?もしかして、私が可愛すぎて照れてる?
「ふむ、ならお前が別の国。と言うよりもライネスに向かい、そこで勇者に出会えばいいのではないか?話からしてライネスにいるその黒幕とやらが敵視しているのはお前なのであろう?そうすれば私の国が襲われなくて済むのではないか?」
「んー。たぶん意味無いかな」
「何故だ?」
「だって私がいてもいなくても、居たと言う事実があれば攻め込む理由になるからね。反逆した勇者に加担したとか言ってね。だから今更策を練ったって何もかも手遅れ。ライネスの目的が宝珠って時点でさ」
「ちょっと待ってシュー」
「リンネ」
「り、リンネ!それって私の国がっ、ブリズが!?」
クーラは慌てて立ち上がってリンネに叫ぶ。
「大丈夫だよクーラ」
「えっ?」
「ルーちゃんがいるから大丈夫。それにヴァンさん達も。せっかく頼んでここに来たんだから信じてあげないとかな」
「う、うん・・・」
クーラはアイリスに説得され渋々座る。
「・・・ってそもそもなんであの人達がこの国の中にいたの?」
『そうだよ!人間差別してるんなら普通入れないでしょ!?』
「・・・そうか。お前達はノーメの事を知らないのか」
『「ノーメ?」』
ティーテから出たノーメと言う人物の名に聞き覚えが無い。
「この国の精霊だ。人間に力を与えるかどうかはノーメが決めている」
『じゃあ人間の入国はそのノーメが決めてるって事?』
「そんな訳あるか。ノーメが判断する場所はノーメの神殿に繋がる転移陣でだ。転移陣に乗って転移出来るかどうかで決まる。出来れば与え、出来なければ素質が無いから帰れと。そう本人が言っていた。入国のルールは私が民の意見を汲んで作ったものだ」
「でもそれじゃあ何であの人達を入れたの?ライネスの勇者だってわかってるなら普通入れないでしょ?」
「だからこそのルールだ」
『「んん?」』
「解らないのも無理は無い。だがな、下手に人間だから、ライネスの勇者だからと拒否すればそれが戦争の火種になりかねない。国とは、民とはそういうものなのだ。どんな些細な問題だろうが拗れ続ければ
それはやがて崩壊へと繋がるものへと変わる。だが全ての問題を解決出来るわけでもない。そんな事が出来ていればそもそも差別など起きはしない」
リンネとイリスはその言葉に思い当たる過去の記憶が過ぎる。その顔に気付いたのかアイリスがこっちを見ていた。
「だからそれを少しでも抑えるための妥協。言わばその場凌ぎだ。我々の寿命は長いが人間は短い。その意味、人間のお前ならわかるな?」
「そう。でも貴女の民はその妥協に納得してるの?」
「しているんじゃない。して貰っているんだ。不満に限界が来ればいずれ私のところに声が来る。そしたら一緒に妥協できる解決策を出し合うだけだ。今までも、そしてこれからもだ」
うちの世界のお偉いさん達も見習って欲しい発言だね。
「まぁ。内の事はいい。今はクーラ。お前の国のことだ」
「は、はいっ」
「結論から言えば協力してやりたい。アイリスの友人の頼みなのだからな」
してやりたい。その答えにクーラの表情に曇りが見えた。
「私が声をかければ動いてくれるかもしれん。だが」
「反抗的な奴らは害になるかもって事?」
「・・・ああ。そういうことだ」
クーラは落ち込んだ。当然だ。頼みの綱であるフォレフォスから助力が難しいと言われてしまったからだ。
「リンネ」
「ん?」
「私のここでの印象のこと、覚えてるかな?」
『あ、それって。半々とかって言ってたやつ?』
「うん。あの時は濁したけど、実際は私の事を良く思ってない人は結構多いの。人間から被害を受けた人や親族達からは嫌われてるかな」
辛そうな表情をするアイリス。有名なアイリスですら多くに嫌われている。人間だからってだけで。ますます似ている。この世界も私達の居た世界も。これが人だ、と誰かに言われているみたいに。
「だが、クーラ。解決策が無いわけでもない」
「えっ」
「そっちの・・・元おとこ」
「リンネって言ってるでしょっ!なんでみんな私の名前に抵抗があるのかなっ!!?」
「だってねえ・・・」と全員の声がほぼ一致して聞こえた。
「まあ、そんな事はどうでもよい」
「よくないっ!」
『まあまあ、リンリン落ち着いて』
「お前の目的。我々と仲良くなるとか言うやつだ」
「がるるるるるるぅ~~・・・・・・」
「それを成すに相応しいか、お前の、いやお前達の事を聞かせろ」
リンネとイリスは顔を見合わせた。
「何から?」
「お前達が話しても良いと思ったところでいい。何から話そうが私にはそれを嘘か真か。判断するすべなどありはしない。だからお前達の話す内容、姿。言葉の重さ。その全てから私がお前達を信用に値するかを判断する」
『それがどうクーラの解決策に繋がるの?』
「まずは話せ。その後で話すかを私が決める」
そのティーテの目は嘘偽りの無い言葉だと見て判断できた。
そしてクーラは縋る様な顔をしながらこっちを見て、アイリスはお願いする表情をこちらに向けている。
「じゃあ」
そういってリンネは一瞬、体から光を放って周一の姿へと戻り、胡坐をかく。
「まずはアイリス達にも話したやつからだな。イリス」
『アイアイサー!』
そういってそれぞれの前にウィンドウを出したイリスはあの映像を解説付きで話し始めた。




