6-1 土の国 フォレフォス
部屋の窓から光が差し込み、それを下着姿のリンネの顔へ当たり目を覚ます。
「ん・・・んぅ・・・むぅい~・・・」
顔に光が当たらないようにうめきながら寝返る。だが1度目覚めてしまうとそのまま寝れる可能性は半々。脳が覚醒してしまっていたらまた眠りへと移行する事は困難だ。
・・・だがリンネは寝返りをした後から動こうとはしなかった。
『おはよう、リンリン』
そんな非力な抵抗も空しく、私の相棒がモーニングコールをしてきた。
「・・うぅ~。あと」
『0.1秒たりともあげないよ。ほら、早く着替えて』
私の相棒、ちょっと鬼過ぎない?男の姿の時は乱れた服から見える肌に興奮してちっとも起こしてくれないのに。・・・まあ、その寒気で起きるんだけどね。
「・・・おにぃ~」
ベットに横になっている下着少女から発せられたその声にムスッとしたイリス。
『・・・。私はメンタルコミュニーケーションサポートツール。固体名:イリス。です。主様である所有者、円道周一様及び桜鈴音様のサポートを』
「わかった!わかったから!それは止めて!!」
機会口調で自己紹介をし始めたイリスを止めるために飛び起きたリンネ。
『・・・おはよっ。リンリン☆』
「・・・おはよう」
しぶしぶベットから降りる。
『とりあえず、リンリン宛ての連絡だよ』
「私宛て?」
イリスの言葉に疑問が浮かぶ。他のMCST、そもそもサーバーが無いのにそんな事が出来るなんて、考えれば方法など1つしかない。そう考えながら椅子の背もたれに掛けてあったあの時の服、侍女さんが用意した衣服を手に取る。
「・・・ってイリス。伝言頼まれたんだね」
『うんっ・・あっ!待ってリンリン。ますたーの姿に戻れる?』
「ん?」
袖を通そうとした所でイリスに止められる。
「ちょっと待ってね」
そう言って手に取った衣服を椅子の背もたれへ掛けなした後、虹色の光がリンネを包む。すると魔法少女が変身でもするかのように一瞬で円道周一の姿えと変わった。そしてそのまま椅子へと腰掛け、背もたれに背中を預け、足を組んだ。
『変身時間0.12秒。早すぎだよ。魔法少女じゃないんだから』
「いや、そもそも魔法少女なんてやってるつもりもねーって」
形状記憶。ルシファーがこの現象について知っていた。一般的には汚れたり、破損した衣服を一瞬で直すために用いられる。髪が乱れた時にも使える。これを使うのは女性が多い。男性は後で洗えばいいと、気にしたりする者が少ないからだ。それに男性はあんなのに魔力を使った後に魔力切れのピンチに陥ったらあんなのに使わなければよかったと後悔する事になると言う意見の多さから使う事はまず無い。ただ、性別まで変化させるのは始めて見たとルシファーは言っていた。
『でも、空飛んで。魔法使ってたらもうそれは魔法少女でしょ?』
「・・・飛べない魔法少女は?」
『それはプリティーキュート。それにそういう子はジャンプ力があるから飛べなくても問題ないのっ』
「さいですか。それで、伝言は?」
「えっとね・・・」
イリスが受けた伝言はその可能性として高かったクーラとアイリスの2人からだった。
クーラからは起床したら9時ぐらいまでには昨日の食事所まで来て欲しい。との事。
アイリスからは俺を知っている人がリンネの姿を見たらどう接していいか困るから戻れるなら男の姿に戻って欲しい。との事。イリスが戻れるかどうか聞いたのはこの事があったからだ。
『あともう1つ。ルシファーから。「シルフィーと共に待っておる。フォレフォスに行く前に顔を見せに来い」だって』
意外な人物達からの伝言だった。
「・・・場所はあの神殿でいいんだよな?」
『たぶんね。というかシルフィーはあそこでしか会ってないし』
この世界の事を色々聞くならあの2人が一番適している。こちらとしてもありがたい申し出だ。
「んじゃ、まずはクーラの所に行くか・・・そういや今って何時?」
立ち上がり、ドアに向かって歩いてドアノブに手を掛けるとふと気になった。
『ん、時計はいくつか確認したからわかるよ。今は8時37分。私達の世界と約2時間21分先の時差があるよ。と言っても今まで見た時計が全部手動で設定する物しかなかったから時差については当てにはならないけどね』
デジタル時計を手に持ったイリスがそう伝える。
つまり、俺達の世界で考えれば今は朝6時頃。そう。俺は普通の。ごく一般的な起床時間に起きたに過ぎない。ただそれは俺達の世界での話だ。
「・・・寝すぎた?」
『んー、睡眠時間は8時間53分だから普通なんじゃない?私達の世界ではの話だけど』
いや、冷静に考えろ。俺達は昨日この世界で目覚めたんだ。つまり・・・
「よしっ。なら何も問題は無いな」
『さっすがますたぁ!考えるのを放棄し・・』
バタン。
イリスの声が扉の閉まる音と同時に途切れた。




