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アルトの脅威を退け、民達と共に街の鎮火を終えた周一・・・リンネ達はブリズ城へと戻ってきていた。
今後のこと、復興についてのことを話すため関係者に声をかけて食事場に集まり、クーラ・ヴァン・アイリス以外は顔と名前を互いに認識するために自己紹介をした。そして侍女達が用意した軽めの物が用意される。パンとスープ。それに紅茶が着席している人達の前に置かれたが誰もパンとスープには手を出さず、紅茶しか飲む気配はなかった。
「・・・ふぅ。パルマーさん。被害は?」
「はい。兵士たちの報告から居住区は4割、商業区は7割、港区は8割の建物の全損・半壊とのことです。死者については現在調査中ですが、被害は甚大で我が国だけでの財力や残った人力だけでは復興にどれだけかかるか私には検討が尽きません」
鼻の下に少し髭の生えたダンディーなおじさん。大臣のパルマーはテーブルに置いてあった報告書のような紙を持ち、目を通しながらヴァンへと伝える。
「ですので、ここはフォレフォスに助力を求めることが今の最善かと・・・」
「ですが大臣。助力を求めるにも今の我々に出せるものがあるのですか?それに彼らが快く引き受けてくれるかどうかも」
「むぅ・・・」
騎士長フォイの指摘は当然のものだった。
「居住区は名の通りですから出せるものなどありませぬ・・・」
居住区の責任者、老人のモリーノは協力出来ないことに引け目を感じながらもそう答える。
「ああ。こっちも似たようなもんだ。商品の大半は燃えちまって、残ったといえばギルドから離れていた店にある衣服や家具とかの居住用と無事だった魔具や魔石ぐらいだ」
商業区の責任者、ギルド長のティーグルは出せるものはそれぐらいだと伝える。
「・・・港区。こちらも出せるものがありません。船も修理すれば出せるかも知れませんが、交渉に使えるとは思えません」
港区の責任者、少し間があったがアンジュがそう伝える。
確かに中古の船でよしとする者はいないだろう。
「一応、同じ立場の身内だ。俺たちから何か出せればいいんだがよ・・・。悪いな。出せても、はした金程度にしかならないだろうよ」
立ち聞きをしていたヴォルグは軽く手を上げて発言の機会を貰い、同じく傍に立っている仲間達を見てからそう答えた。
「私たちも同じね。相手があのフォレフォスじゃ、人が作った武具なんてたかが知れてるでしょうし。そもそもシューイチとアイリスの話じゃ、うちの店がライネスの兵に囲まれてたってことだったし。今じゃ無事かどうかもわからないわ。それについては何か知らないかしら?」
「あっ。はい。それについては心当たりがあるので自分が。街中に英雄姫様をかくまっている店があるとのメディーチさんからの情報で大臣が兵と勇者数人を出したらしいです。武具についてはもぬけの空だったから戻ってきた時に尋問するための交渉材料として回収してましたよ」
リアンの質問に目を覚まして合流していたカイツが答えた。その回答にリアンは予想通りだったのか「そう。ありがとう」とだけ返し、カルドとテルフィアは仕方ないといった表情をしていた。
「お前そんなのどこから」
「たまたま武具を運んでる兵士を見かけたから聞いたですよ。というかヴォルグさんも一緒にいたじゃないですか。聞いてなかったんですか?」
「俺は俺に関わることにしか興味がねえっていつも言ってんだろ」
「・・・ですよね」
そんなヴォルグに呆れる仲間達。
『あの~。聞いててわからない事があるんで聞いてもいい?』
そんな中での板状で浮かぶものから、イリスの質問の声に一同が黙る。
『むぅ。そんな顔されても困るんだけど。私、こんなんでも普通に会話できるんだからね!』
「まあ仕方ないよイリス。この世界じゃみんな、イリスの事を不思議に思っちゃうって。それで私もイリスと同じ質問。フォレフォスって確か土の国だっけ?エルフとドワーフがいるって言う。みんなの顔からしてそんなに微妙な仲なの?」
一部の反応に困っている視線の中で、リンネが問う。
「えっと。パルマーさん。教えてあげてくれるかな」
「はい。かなり前の話ですが揉め事があったのですよ。ライネスの勇者の者が彼らを亜人だと罵倒したらしくフォレフォスの民達を怒らせてしまったのです。なのでフォレフォスの王はその報復と言わんばかりに入国には人族のみ念入りな検問。衣服とお金以外、武具等を身に着ける事の禁止令を出したのです」
「つまり、その所為でフォレフォスは人族が嫌いになったって事?」
「はい。その通りです。こちらとしては迷惑な話ですがなってしまった故、彼らとの交渉は難しいものになってしまっているのです」
『じゃあ何でその人達の助けが必要なの?』
「彼らは[製造]の力が優れているのです。建築に必要な材料も豊富で我々が再建するよりも何倍もの速さで作業が行えるのですよ」
「そういうことか。うん。ありがとう、パルマーさん」
『ありがとー』
「いえいえ」
つまりフォレフォスは建物などに関わる非常事態での適任者という訳だ。
被害の規模が尋常じゃないため復興の早さも求められる。遅れれば遅れるほど民達の負担は計り知れない。最低でも生き残った民全員が衣食住に困らなくなる程度までは立て直さなければならない。衣類も食事も他国にお願いすればどうにかなるかもしれないが住処だけはどうしようもない。そしてその住処を造るための材料もあの火災だ。全てを再建出来る程の量はまずないだろう。
・・・いや、そもそも人嫌いということは。人族の国であるブリズに来たがらない。そもそも交渉以前の問題だ。だが助力は絶対に欲しい。でも交渉材料は無い。だから詰んでいる。
この会議が始まってから暗い顔をして話をただ黙って聞き続けているクーラはそんな状況だからこそ何も言えなかった。その責任を、民の不安を全て背負わなければいけない立場にあるからだ。
「ですので、どう彼らと交渉すればいいかを」
「・・あるのですか?」
「クーラ様?」
大臣が会議を再開しようとしたところでクーラが声を出す。
「今の我々に・・・いえ。私に。何か出せるものがあるのですか?」
「クーラ・・・」
「ただ王座に座って、指示を出すだけの私に!民達にあんな罪を共有させてしまうような事をさせてしまった私に!!いったい何が出せるのですかっ!!!?」
よほど堪えていたのだろう。ヴァンはそんなクーラの顔を自分の体に抱き寄せると自虐しながら泣き叫び出した。
そんなクーラに一同はただ黙って下を向くことしか出来なかった。




