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あの後何故か俺だけが美少女達から計3ビンタをくらい、そしてクーラがその勢いのまま広い浴槽の中で女子組と男子組+イリスで別れて距離を置く形を取らせてで浸かることになった。更にはアイリスが作り上げたこの湯気の壁による境界。これが何より納得いかない。これでは裸の付き合いでも無いし、混浴でも無い。女子の声が聞こえるだけの男湯と大差が無いではないか。・・・文句は言えないんですけどね。
「まったく!なんで止めなかったの、ヴァン!」
「い、いや。すまない・・・」
湯気の向こう側から聞こえてくるクーラの声。それに何も言い訳が出来ないヴァンはただ謝る事しか出来なかった。
「いやいや。中々立派なモノを持っておるな、シューイチ。アレなら満足しない女はいないだろう」
「いやいや。ルシファーだって中々のモノだったぞ。アレなら顔を埋めてそのまま夜をずっと過ごしたいと思うぐらいだ」
「ふたりともぉ、それは何のお話なのかなぁ?」
「「ハイ、ナンデモナイデスゴメンナサイ」」
凄い威圧を放つアイリスに2人は片言で謝った。
「はぁ。それでシュウイチさん。さっきの続き、いいかな?」
「ん?ああ。何処まで話したっけか?」
「シュウイチさんが」
「女装をした話、でしたね」
アイリスにまるでそのセリフを言わせないようにするために割って入るクーラ。
「えっ?クーラ?」
「そうでしたよね、ヴァン」
「あ、ああ。そうだったね」
「そう、ですね」
それに合わせる様にヴァンと美遊も便乗した。
『・・・ますたー』
「ああ。だったら俺についての重要な部分の過去話はほぼ全部終わってるな。後はライネスの王様のとこで話した事だけだ。それは美遊も知ってる事だから美遊から聞いてくれ」
そう言うと周一は浴槽から立ち上がり脱衣所へと向かって行く。
「お、おいっ。シューイチ!」
「ん、どうした?まだ何か話があるのか?」
「っ!?い、いや。もう出るのかい?」
ヴァンに呼びとめられて立ち止まり、振り返った。その周一の表情はもう何も聞く必要はないだろうと訴えるのに十分な顔だった。
「ああ。余程の理由が無けりゃ長風呂はしないからな。俺の服が乾くまでどっかで休まして貰うわ。代わりの服も用意してくれるって言ってたしな」
風呂に入る前の脱衣所にて、クーラに仕えている侍女達が浴場の清掃を終えてお湯を入れ終えた所に丁度鉢合わせした。本来は業務を終えた侍女達、兵士達が男女時間を分けて入れる場となっている城の浴場。その時間になるまでには入り終わる事をヴァンは侍女達に約束し、クーラからもまた言われるだろうと伝言していた。そして侍女達が脱衣所を去ろうとする前に周一は侍女達に服の洗濯をお願いしていたのだ。魔法がある世界とはいえ、すぐに乾かせる訳では無い様だ。その理由としてはすぐに代わりの服を用意すると言っていたからだ。洗濯してすぐに乾かせるのであればそんな事は言わないはずだ。
「待ってシュウイチさっ、ルーちゃん!?」
更に周一を呼び止めようとするアイリスだったがそれをルシファーが遮る様にいつの間にか立ち上がり、手をアイリスの前へと出していた。
「シューイチ。なら我も同行しよう。この世界の事を良く知っている我が同行するに異論は無かろう?それに大概の事なら答えてやれるぞ」
「・・・そりゃどうも」
湯気の所為で声だけしか聞こえないがすぐにルシファーが俺の見張り役を買って出たのが解ったがそれについては触れようとは思わなかった。
「ルーちゃん!それだったら私が」
「アイリスには対処をすべき事があろう。これがお前が選んだ結果なのだからな」
その言葉にアイリスは周りを見た後に黙って頷いた。
そして戸の閉まる音が聞こえるまで脱衣所へと消えて行く3人を見送り、アイリスは2人へと顔を向ける。
「2人共、ううん。ヴァンさんも。何であんな事」
『それが人間の現実なんだよ』
この場を後にしたはずの少女の声に、そしてその言葉を残してアイリスの隣から悲しい顔をしながら消えて行った少女に対し。その場の誰もがその言葉を重く感じた。




