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永遠の約束 永遠の旅 -とわのやくそく とわのたび-  作者: 風翔 響
第1部:エレメンタニア
51/109

4-13

「・・・そうね。あの子の言う通り」


 あの言葉の後、しばらく沈黙が続いたがその空気を断ち切る様に最初に発言をしたのは美遊だった。


「ミユ?」

「ミユさん?」


 その声につられるかのように口を開いた2人。


「私達が・・・んーん。特に私が円道さんにしてた事ってあの子からしたらそうなんだろうなって。私もされてた側だったはずなのに・・・一番に気付かなきゃいけなかったはずなのに。私もいつの間にかあっち側に立ってたんだなって」


 美遊は自分の世界での出来事、容姿をネタにいじめられていた自分の過去を思い出しながら。


「ミユ・・・」

「い、いやでも。私達はあそこまでの事なんて 」

「ヴァン」


 ヴァンが言い切る前にクーラが名を呼んでそれを止める。


「ヴァンさん。あの子、イリスが言った事はそう言う事じゃないの。程度の問題じゃない。私達が円道さんの事を良く知りもしないのに勝手にそう位置付けをした。それがあの子の言っていた人間の現実だと思うんです」

「それは・・・」


 美遊の回答に言葉が出なくなるヴァン。


「アイリスは最初っから気付いてたんだよね」

「・・・私も話を聞くまではシュウイチさんの事は解らなかったし知りもしなかったよ」

「えっ!?だって」


 首を横に振ってそれを否定したアイリスに驚く美遊。


「初対面の人をすぐに信じられるほど、私は出来てないよ。でも、これだけは信じてもいいって思えたからかな。だから私はシュウイチさんの話を聞きたかったし、ミユ達にも聞いて欲しかったんだ」

「信じてもいい?」

「アイリス様。それはなんなんですか?」

「ミユにとっては悪い記憶かもしれないけど、良いかな?」


 念のために美遊に確認をとるアイリス。それに対して躊躇いが少しだけあったが美遊は無言で頷いた。


「私達がリザードマンに待ち伏せされてたって話はしたよね」

「はい」

「ええ」


 周一が城の転移陣を使わずに落ちて行ったと報告があった後、ライネスからブリズ到着までの出来事を一通り、カルド一家とアンジュ、カイツを除くヴォルグのパーティーと共に話していた。その後カルド達は商業区にあるブリズのギルドへ。アンジュは業務へと戻り。ヴォルグ達はカイツが居る部屋へとそれぞれ移動していった。


「あの場では言わなかったんだけどね。リザードマンを倒した後、ミユがシュウイチさんに対して色々言っちゃったんだよね。嘘ばっかとか、私の勇者に相応しくないだとか。・・・親友を死なせたとか」


 それを聞いたクーラは思わず美遊を見る。それが真実であると応える様に美遊はクーラから目を逸らして頷いた。


「シュウイチさんはそれらの事については怒らなかったんだけどね。そんな中、最後に1つだけ怒ったんだ。・・・俺の相棒を泣かせるな。って」

「「・・・・・・」」


 クーラとヴァンはその言葉に思わず黙ってしまう。あの明るそうな板の少女が彼のために泣いたのだと。そしてあの掴みどころのなさそうな男がそんな事を言うとは思ってもいなかったからだ。そしてクーラはそれが真実だと、美遊の周りの水面が少し揺れているのを見た。


「あの時の顔、みんなにはどう見えたか解らないけど・・・私には誰かのため、んーん。イリスのためだけに怒れる。そんな優しい顔だと思ったんだ」

「あの時の殺気は、もしかして・・・」


 ヴァンは思い当たったのか問う様に聞く。


「うん。そうだと思うよ。私も最初だけ感じたし。けどそう思った瞬間に何も感じなくなったんだ。でももし、そう思わなかったら・・・私もミユみたいになってたかもね」

「アイリス・・・」


 苦笑いを美遊に向けるアイリス。


「ヴァン、ミユさんの反応でもなんとなくで解りますが。その殺気はどの程度のモノなの?」

「・・・近くに居たら呼吸すら間々ならない程に震えて動けなくなるでしょうね。実際ミユさんもカルドさん達もしばらく体が動かせなかったらしいですから」

「そんなに・・・」

「・・・いいえ。ヴァンさん。正確に言うなら、死を・・・死を受け入れてしまうと言った方が正しいと思います」


 直に受けた美遊の恐怖を押さえながら言う声に、その正確さが伝わる。体が死を受け入れてしまったからこそ、体がまだ生きていると再認識するまで動けなかった、と。


「・・・でしたら国民の命を預かる身として余りに脅威。彼の存在を放って置く事は出来ないです。ルシファー様には感謝しないと」


 監視役として動いてくれたここにいないルシファーに感謝するクーラ。


「ただ面白そうだからってだけで動いてそうだけどね。ルーちゃんだし」

「うふふ。本当にアイリスはルシファー様の事を良く知ってますね」

「まっ。長い付き合いだからねぇ」


 自慢げな顔をするアイリス。


「ふふっ。だとしても、彼。シューイチさんを他国へ、特にライネスへ属する事は絶対に避けねばなりません。なのでアイリス。親友として、いえ。ブリズの女王クーラ・ブリズの名において。英雄姫アイリス・トリガーにお願いを申しあげます。異例の勇者、シューイチ・エンドーをあなたの勇者に、そして我が国ブリズに協力して頂けませんか」


 真顔になってアイリスを見つめて願うクーラ。


「・・・ん~。私はシュウイチさんを勇者にするって決めたんだけどなぁ~」


 そう言いながらアイリスは美遊の方へとじとーっと顔を向ける。


「だって~私の親友ちゃんがぁ~認めてくれなかったしなぁ~」

「わ、私の所為っ!!?」


 意地悪な言い方で美遊をいじるアイリス。


「あらあら、どうしましょう。女王の願いが1人の女性の承認が貰えないだけで果ては多くの民の命の危機に繋がってしまうかも知れないと言うのに。困りましたわ・・・くすん」

「ええ。女王様。本当に困りましたわ・・・くすん」


 わざとらしく涙を浮かべる女王と姫。


「こぉんのぉ~・・・わかった!わかりましたよっ!私はもうこの件には口を出さないので勝手にして下さい!!」

「「いえ~い!」」


 折れた美遊に対して手を合わせて喜ぶ2人。


「それでは。シューイチさんにもお願いしませんとね。もちろん。あの話の続きを聞かせてもらった後にですけど。それが今の私達に出来る誠意ですから。ヴァンもいいですね?」

「ああ。もちろんだよ」


 湯気の向こうからのヴァンの安堵と承諾の声。


「でも」


 美遊が呟く。


「もし続きが、アイリスでも心変わりしちゃう様な話だったらどうするの?」


 そして真顔でアイリスを見つめた。


「しないよ」


 即答だった。


「何で、言い切れるの」


 当然の疑問だ。クーラもヴァンも心の何処かで考えていた事だ。


「だって。優しい人じゃなきゃ、ずっと一緒にいられないでしょ?」


 ずっと一緒。そうだった。私は何で忘れていたんだろう。あの時。カルドさんの店に入る前のあの人の顔。腕輪を見つめていたあの顔。あの板に映る銀髪の少女を想うためだけのあの顔を。何で、忘れていたのだろう。

 それを思い出した瞬間、不思議と美遊の震えは止まっていた。


「そう、だね。うん。それだけでも円道さんに謝らないと。それに、イリスにはもっと謝らないと」

「私も共に良いですか?」

「私もいいかな」

「クーラ様?ヴァンさん?」

「私も彼を疑っていた。本当にアイリスの言う通り優しい人なのか、と。でも誰かのために何かが出来る人が悪い人な訳が無い。ヴァンがそう教えてくれたから」


 胸に両手を宛て、目を瞑りながらそう答えるクーラ。


「私のおばあちゃんの言葉だけどね」


 ヴァンは照れながらそう補足した。


「じゃあそろそろ出よっか」

「ああ。じゃあ私が先にあがるよ。着替え終わったら声かけるね」

「ええ。ゴメンねヴァン」

「いいって。謝る事じゃないよ」


 女性の身支度が掛かるのは男なら誰でも知っている。言葉にしなくてもそう言った配慮をするヴァン。今までも街の浴場ではヴァンをいつも待たせてしまっているため、いつもの様につい謝ってしまったクーラに笑いながらその場をあとにしたヴァンだった。

 そしてお湯からあがる音からしばらくして戸の閉まる音が聞こえた。


「それじゃ、これももういらないかな」


 そう言ってアイリスは湯気の壁を霧散させたあとリラックスしたかの様にお湯に体を託す。


「アイリス」

「ん゛~~?」


 アイリスが口までお湯を浸けていた所に突然、クーラがまた真顔になって名を呼んだ。


「アイリスは見えてたんでしょ?ヴァンのアレ、大きかった?」

「ぶぅううぼぉほおおおっ!!!?」

「なななな、何言ってるんですかクーラ様!?」


 女王の予想外の発言に驚愕する2人。アイリスに至ってはお湯を飲みかける所だった。


「だって気になるし・・・その、男の人のアレって大きさでどれだけ興奮しているかが解るんでしょっ!?」

「ゴホッゴホッ・・・そっ、そうなのっ!?」

「何で私に聞くのっ!?」


 3人共気付けば無意識に立ちあがっていた。



「クーラ!大変だっ!!街がっ!・・・まちがぁ・・・」



 突如戸を開けたヴァン。その姿は着替え終わっているが問題はそこでは無い。先程ヴァンが居なくなり湯気の壁を消したアイリスは後悔した。何故消してしまったのであろうと。そして何故私達は立ってしまったのだろうと。


「「「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!????」」」」


 浴場に響き渡る美少女達の可愛い悲鳴。ヴァンにとってそれは幸か不幸か当人しか知りえない。だが今はそんな事を気にしてられない程の事態に陥っていた。

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