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周一の過去の話を終え、イリスがこの場にいる全員に見せていた映像データのウィンドウを消したが誰ひとり口を開こうとはしなかった。
「・・・っとまあ。こんな感じだな・・・一応言っとくが、まだ前編だぞ?」
「「「!?」」」
アイリスの表情についそう答えてしまったが、この言葉に隠れている奴らの何かしらの反応があった。
『・・・とりあえずここでセーブして一息入れる?』
「そうだな」
『はーい。・・・スロットをえらんでください。』
イリスが周一の前に表記した画面に現れたゲームのセーブ画面。だがこれは明らかに古いタイプだ。
なぜなら、表記されている[SLOT1・SLOT2]が黒い文字のままで触れても反応が無かったからだ。
「何で読み込み時間があるんだよ」
「そりゃ、保存領域の確認はしないとだよ」
「・・・まあ、確かにな」
しばらくするとSLOT1の黒い文字が白い文字へと変わる。
「んじゃセーブっと」
画面のSLOT1に触れる。
『ファイルをけんさくしています・・・』
読み込み完了を表すゲージの様なものが表記された後。
『ブブー。メモリーカードの空きブロックがたりません』
「は?」
セルフSEと共にセーブが出来ない知らせを受ける。
「ちょっと待てイリス!ブロックが足りないってどう言う事だ!」
『言った通りだよますたー。メモリーカードのセーブデータ、全15ブロック全て埋まってるって意味だよ』
「なんだとっ!?ならどうすればいいんだ!!」
『簡単だよますたー。ゲームを終わらせてゲーム機本体からゲームディスクを取り出した状態で再起動するとね、メモリーカードのデータ管理が出来るんだよ。そこでやらなくなったゲームのセーブデータを消せば良いんだよ』
「なるほど。んじゃさっそく・・・ってそれって今までのプレイデータはどうなるんだ?」
『うん!綺麗さっぱり無かった事になるねっ』
「また最初っからって事じゃねーか!ちっくしょおおおおおおっ!!!」
『序盤でセーブをして確認しなかったますたーが悪いんだよ』
「クソッ!なんで俺は今まで1度もセーブをしなかったんだ!?しておけばまだ取り返しがついたかもしれないと言うのにっ!!」
「・・・えっと。そろそろいいよね?」
そんな謎の茶番劇に割って入るアイリスの声。
「「うん。いいよ」」
そしてそれにすぐに答える2人。
「・・・それで。シュウイチさんはその後どうなったの?」
「話すと長いしなぁ。それにこっから後はイリスも関わって来るからイリスに聞いてくれ」
『あーっ!!そうやって勝手に押し付けるのっていけないんだよぉ~!』
「って言ってるが本当は話したいんだろ?」
『えっ!?だっ、だってますたーが私にあんなことやこんなこと、それに・・・いやぁっ!あんなエッチな事、誰かにこんな事話せないよぉ!!』
「おい止めろ。アイリスの視線がアレだから止めろ」
あのゴミを見る様な目。女は何故このような目が出来るのだろう。
『それじゃあ話の続きする?あと、私が関わるのはそこから少し後の話でしょ?』
「そうだけどな。でもデータだってあるだろ?」
『公開されてるのとか、保存された監視カメラの映像とかはね。それ以外はますたーが話さないと解らないでしょ?女装とか、女装とか。それに女装とか』
「連呼すんな」
イリスの発言にアイリスが「女装・・・」と呟き、座りながらも周一から少し距離を取った。
「・・・。なんで離れた?」
「・・・なんとなく」
『アイリス。そんな引く程のモノじゃないって、ほらっ』
そう言ってこの場の者達にその写真のデータを見せる。そこには多くの人々が周りに映る中、写真の中央を歩く黒髪ロングの白いワンピースを着た10代の美少女の姿。前髪を可愛い猫のヘアピンで止め、慎ましい胸の谷を通るショルダーバッグのベルト。その姿は誰がどう見ても将来女優かアイドルになる事だろうと思う程だ。
「ええっ!?これ本当にシュウイチさんなのっ!!?」
『ねっ。可愛いでしょ。これがますたーの魅力なのですよっ!』
「魅力とか自慢げに言うな。俺にとっては苦肉の策だったし、嫌な過去だ。萎えるからそんなの見せんな」
『でもシーナには見せてるでしょ?』
「あれはシーナが・・・って話し脱線してんじゃねーか」
「『あっ』」
「あっ。じゃねーよ。ってかいつまでそれ出してんだよ」
「『ぶぅ~』」
反抗的な態度を取るも、イリスは画面に出していた女装の画像を消した。
ん?何でアイリスやルシファー、シルフィーまで残念そうな顔してんの?
「ったく・・・んで、後ろの3人。隠れてる必要ないのも解ってんだろ。出て来いよ」
周一が柱の後ろに声をかけると、柱の陰から3人。クーラ、ヴァン、美遊が出て来て互いに見える位置まで移動する。
「それで、感想は?」
「「すごく可愛かった」」
『でしょぉ~』
「そっちじゃねーよっ!!」
誰があの画像の感想を言えって言ったよ。・・・何で美遊以外意気投合したみたいに頷いたり語りあったりしてんの?あれ?なんか美遊もさっきとは違う感じで目を逸らしてね?若干悔しそうにしてね?
・・・なんかそこまで反応が良いと・・・いや!?何考えてんだ俺はっ!?
「あのっ」
そんな中、クーラが声をかける。
「ん?」
「私達が隠れて聞く必要が無いのでしたらお話の続きは場所を変えてしませんか?」
「いや、別にここでいいけど」
『どうして?』
場所変えの提案にに否定の意を示した2人。
「えっと、その。そろそろ湯浴みの時間が・・・」
「『なるほど。それに付き合えと』」
「ふぇっ!?」
「「違うに決まってるでしょ」」
周一にいきなり両手を掴まれたクーラは驚いてパニックになるが、それを襟元を引っ張って阻止するアイリスと美遊。
「単に習慣だよ。クーラは今ぐらいの時間の頃にお風呂に入るんだ。周一も僕と一緒にどうだい?まだここに来てお風呂は入っていないんだろう?」
「まぁ確かに。気になってはいたけどな。血の匂いとか。焦げ臭さとか。油臭とか色々あるし」
『ますたー!入るべきだよ!!入らないと後悔するよ!!(主に女性が)』
「あー。えっと。君が何を考えてるかは解らないけど。行くのは公衆浴場。つまりは国民のみんなが入れる場所だよ」
『えぇ~・・・。普通、女王様や勇者ってお城のお風呂に入るんじゃないのぉ?』
当然の疑問だ。王族が国民の利用する浴場に行くなどまずないはずだ。
「イリス。クーラはそうやって国民の意見を聞ける場を設けて、国のあらゆる悩み事を聞いているの」
「ええ。我が民達の声を本音で聞くためにはどうしたらいいかをヴァンに聞いたらその方法が一番良いと言っていたので」
「『裸のお付き合いか』」
「あら。ご存じなんですね」
「当たり前だろ。男なら知ってて当然の言葉だ」
『中にはいやらしく考える人もいるけどね~』
「いやいや。それはムッツリな奴の考えだろ。俺なら男女の肌をくっつけ合うのもアリだと思うぞ」
「「それは無い」」
「無い、だと?」
「当たり前だよっ!」
2人の女の子に否定されるが周一は食い下がった。
「何故だ?それは人前だからか?なら普段からやっている奴だっているだろう」
「いる訳ないよっ!!」
「いるだろう。街中で、路上で。イチャイチャしてるカップル共が」
「カップルでもお風呂でそんなこと」
「なら美遊。海ならどうだ?」
「えっ?」
アイリスが抗議する中で周一は美遊に話を振った。
「浜辺で水着姿のカップル同士が肌を触れ合いながら戯れる姿ぐらいすぐに想像できるだろう?問題点は水着を着ているかどうかだ。もし風呂でも水着を着ていれば海と同じで何も問題無いだろう?実際そう言った温泉とかは俺達の世界では結構あったぞ?」
「えっ。あ・・・うん。それなら」
「ミユ!!?」
美遊が言いくるめられた事を察したアイリスは仲間が奪われた感覚にショックを受ける。
『ますたー。つまりアイリスは、男の人に肌を見られるのが嫌だって事なんだよ』
「にゃっ!!?ち、ちがっ」
「なるほどな~。大人の女性はその程度じゃ動じないって聞くけど、って事はまだまだアイリスも心は子供って事かぁ」
「そ、そんなことないしっ!!私だって十分大人ですしっ!!今更男の人に少し裸を見られたぐらいじゃ私もクーラも何とも思わないんだから!!」
「ア、アイリス!?わ、私は」
「つまり此処にいる全員、一緒に入っても何も問題ないって事だな?」
「と、当然だよ!ねっ、クーラ!!」
顔を真っ赤にしながらもクーラに同意を求める為に圧を送る。
「は、はい・・・」
「ミユも良いよね!」
「え、うん・・・」
「だってよヴァン。マジな裸のお付き合いってやつをやってくれるらしいぞ?」
「あ、ああ。私も。それは男として嬉しい事だけど・・・本当に良いのかい、クーラ?」
「・・・うん。ヴァンがいるなら・・・」
ヴァンのジャージの袖を掴み、真っ赤な顔で俯きながらボソッと呟くクーラ。
「私は此処に残るよ。私は風があれば体を正常に保っていられるから」
「そうか。ルシファーは?」
「我もお前達と同行しよう。それにアイリスがどれだけ人前にどれだけ裸を晒していられるかが見ものなのでな」
「にゃっ!?へ、へへーんだ。いくらルーちゃんでも私を甘く見過ぎだよっ。水着ぐらいで」
「何を言っておる?我は[裸]と言ったぞ?我は初めからそのつもりだったがお前達、まさか魔王である我が一糸まとわぬ姿を晒すと言うのに、何かを身に着けて湯に浸かろうなどとは考えておらぬよな?言葉通りの、[裸]のお付き合いなのだろう?」
・・・・・・え????




