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サクラコーポレーションから届いた1封の封筒。宛ては円道周一様。つまりは周一が当選していた。両親は封筒に入っていた案内通りに会場の連絡先に電話を入れ、予約を入れる。勿論これはスムーズに行えるようにするためで冬休みに入った周一に合わせ、店も休みの日。12月24日のクリスマスイブに体験する事を決めた。イブのおかげか予約を入れている体験者も数件しか入っておらず問題無く予約が取れた。
そして12月24日。良い子にしてればサンタさんが来てくれるよなんて親の決まり文句を信じ、新しいゲームを期待に両親たちの言う事をしっかりと守る事に努力をする周一。体験会場の大きな病院に着いた円道家は周一の招待券を受付に出して両親と共に待合室で待つ。そして周一の名前と案内の呼びかけがあると両親と共に未来予測装置フューパのある部屋へと案内された。そこには1人の白衣を着た女性と看護スタッフが数人いた。
「では、まずは採血。次に身体検査の順で行います」
「本当にそれだけで周一の将来が解ってしまうんですか?」
「はい。とは言ってもうちの社長がテレビでも言っていた通り、本当の結果が解るのは何年も先の話ですけどね。周一君の場合は10年程ですね。高校生になれば方針も定まっていますでしょうから」
「10年かぁ。長いのか短いのか解らないな」
「ふふっ。そうですね。それにどんな結果が出てもそれを決めるのは周一君本人ですから。周一君は将来の夢はあるかな?」
「うーん・・・ゲームに関われる事がしたいっ!」
周一は少し悩みそう答えると白衣の女性とスタッフ達は笑い、両親はその答えと周りの反応に恥ずかしそうに笑う。
「良い夢ですね。叶うといいね」
「まったく。お恥ずかしい」
「いえいえ。そう言ったお子さんは他にもいらっしゃいましたので恥ずかしい事ではありませんよ。むしろ子供らしくて可愛いじゃないですか」
そう言った話の後、白衣の女性とスタッフの指示の元、体験と言う名の検査を進めていった。
「では結果が出るまで早くても30分程はお時間を頂きますのでその間にお昼ご飯など済まして下さい。結果が出ましたら放送でお呼びしますのでそれまでには病院内にいてくださいね」
「解りました」
「それじゃあ。あっちに一般も利用できる食堂があったからそこに行きましょう」
「そうだな。周一。お昼食べに行くぞ」
「はーい」
昼食を取る事に決めた円道家。その食堂で時間を潰すため食堂にあるテレビを見ながら世間話をする両親と携帯ゲーム機で遊ぶ周一。そして検査から1時間程経ったが未だに周一の名前が呼ばれる放送が病院内に流れない。両親が少し不安になり父さんが痺れを切らして受付の方へと聞きに行った。そしてしばらくすると父さんと一緒に先程の白衣の女性とスタッフ1人が側まで来た。
「ごめんなさい。少しトラブルがありまして・・・」
女性が母さんに謝った後、チラッと周一を見る。
「何かあったんですか?」
「あっ。いえ。周一君の検査結果を上に報告している時に少し揉め事が・・・いえ。周一君の事で円道さん達にだけお話が」
その言葉に一緒に来たスタッフが表情を変えた。まるで「伝えるんですかっ!?」とでもいいたそうな顔だ。
「え?あの。周一・・・どこか悪いんですか?」
「いえ、身体は健康です。ただ、フューパの結果に少し問題がありまして。その事についてご相談をしたいのですが・・・」
「・・・ここでは言えない事なんですか?」
「はい。上から公にはするなと言われてますが。これからの事情を話すとなると伝えた方がいいと思いますので。周一君は彼女に任せて。さあこちらに」
「・・・周一。お姉さんと一緒に待っててね。トイレに行きたくなったらお姉さんに言いなさいね」
「う?うん。わかった」
そう言って父さんと母さんは白衣の女性と共にその場を離れた。大人達の事情に大して興味の無い周一はそのままゲームを再開する。任された女性スタッフは言葉には出さない物の表情や距離感から周一の近くにはなるべく居たく無いのか周一から少し離れた席へと座って様子を窺っていた。
そしてそれから1時間・・・2時間は過ぎた頃。目も疲れ始め、一時ゲームを中断して休憩していた所、ようやく両親が白衣の女性にスーツを着た知らない男と共に迎えに来た。だが両親達は何故か浮かない顔をしている。そしてスーツの男が周一の前に立って目線を合わせる為に膝を曲げる。
「周一君。君の検査結果はすごい」
「すごい?というかおじさん、誰?」
「ああ。あのおねーさんの上司だよ。君の結果を受けてすぐにお父さんとお母さんに相談するためにここに飛んで来たんだ」
「ふーん」
どうやらこの男性は白衣の女性の上司と言う事らしい。
「それでね。君の検査結果、君の将来の事なんだけどね」
「うん」
「私達の所で勉強しに来ないかい?」
「え~べんきょお~?やだよ」
子供らしい拒否をする周一。
「そう言わずに。君の行っている小学校では君の才能を無駄にしてしまう。長いお泊りにもなるし少し大変かもしれないが私達の所で勉強すればいずれは歴史に名を残せるほどの世界の有名人になれるかも知れないんだよ?」
「別にそんなの興味無いよ~」
男は説得に応じない周一の傍にあったゲーム機を見て何かを思い付く。
「そうなれば色んな最新ゲームもすぐに買えて自由に遊べるような大金持ちなるんだよ?」
「ほんとっ!!?」
「ああ本当さ。だから私達の所で勉強しないかい?」
「ん~~・・・」
周一は悩んだ後、両親の顔を窺うがまるで自分を見ていたく無いかのように目を逸らしている。
「お父さんとお母さんにはOKを貰ってあるよ。あとは君次第だ」
「んー・・・ゲーム持っててもいい?」
「ああ。勿論」
「新しいゲームが出たら買ってくれる?」
「それは君の頑張り次第だね。何かを達成した時のご褒美で渡す事になるだろうね」
その言葉に周一は少し悩んだがやがて首を縦に振って了承した。
「ありがとう。では、円道さん。手続きと周一君の身支度をお願いします」
「・・・はい」
「・・・わかりました」
両親はそう言うと、何故か安堵した表情を浮かべたが周一の視線に気付き、すぐに顔を逸らして移動を始めた。
「あっ!待って」
「ああ。周一君は私と一緒に来てくれるかい。今から君の泊まる施設に行くからね」
「えっ?今から?」
「ああ。急ぎでね。その・・・君の才能が今世界にバレてしまうと君の命が危ないんだ」
真顔で言うスーツの男。そう言えば、ゲームに熱中し過ぎて夜ふかしした時、夜中にやっていたアニメで似た話を見た事がある。超能力を使える女の子が色々な悪い組織から狙われる。そしてその女の子を格好良い主人公が助けたり守ったりするアニメ。物語では良くある定番もの。つまりはそれと似た状況と言う事を周一は男の話を聞いてそう思った。
つまり・・・
「・・・俺の才能って超能力みたいな物なの?」
「ん?・・・あー。超能力ではないが・・・」
男は一時何を言っているのか理解出来なかったが思考を巡らせてゲームやアニメの話と類似させてる事に気付き、それについて否定したがどう伝えていいのか言葉を詰まらせた。
「じゃあ俺の才能って何なの?」
さすがにまだ物心が付き始めたか解らないぐらいの歳である周一でもさすがに気になってしまう。何度も才能、才能と。そう言われてもしっくりこなくなってしまうのも当然である。
「君の才能は・・・すまない。実はフューパの検査結果では出なかったのだ」
「どういうこと?」
突然謝りだした男。そしてその理由について聞く周一に耳うちをするために周一の耳元に顔を寄せて来た。
「実は君の検査結果は、才能は[未知]。予想が付かないって意味だ。つまりはフューパですら解らない才能を秘めている。だからそう言う事しか出来ないんだ」
そう言って離れる男。そして男は周一の顔を見て笑みを浮かべた。
「ふーん。機械でも解らない事ってあるんだね」
「そうだね。だから君には今日やった検査を度々受けて貰う事になると思う」
「どうして?」
「それはね。もし未知ではない結果が出れば危険も無くなって、お家でいつも通りの生活を送れるようになるからだよ。君もその方が良いだろう?」
うん。と言った風にすぐに首を縦に振って答える周一。
「では行こうか。悪い奴らに見つかってしまう前に」
「わかった!」
周一は男に手を引かれながら病院を後にした。




