3-10
魔王ルシファーとアイリスが話し合いの場として指定した場所。そこは外からはただの空、だが何もないはずここには綺麗とも呼べる草木がありその中央、神殿と言うよりは宮殿に近い形の作りをした緑色の建物があった。
「の、のぉ・・・。お前達」
島に着き、神殿の傍の芝生に着陸した僕達。僕はここに来る途中で眠ってしまったらしく覚えていないがなんとか無事に辿りつけていたようだ。そしてこれからこの島で僕達の事を話すには何ともロマンチックで、まして可憐で綺麗過ぎるアイリスに僕の事を話すなんて・・・この胸の鼓動はっ!?もしかして僕は・・・。
『うわあああああああああああああああん!!!ますたああああああああ!!』
「だっ、大丈夫だよイリス!・・・ほら見てっ!こんなにシュウイチさんがかっこ・・・かっこ。・・・うん、ごめんね・・・」
イリスを慰めるアイリスは僕を見つめた後、僕のあまりの格好良い顔に恥ずかしそうに目を逸らした後に何故かイリスに謝った。
おかしい・・・。なんでイリスはそんなに泣いているんだろう?まるで僕が重大な病気にでもなってしまったかの様に・・・。そしてなんでアイリスが謝るんだい?僕は確かにごく一般的な、平均値とも呼べるような顔だった僕を格好(良い)と言ってくれたんだよ?これは可憐で美しい君達からしたら嬉しい事じゃないのかい?
「そこの気持ちの悪い顔の男は誰なのだ?」
「なっ!?気持ち悪いだって!!?」
ルシファーに話しかけた男はまるで乙女ゲーに出てくるような男キャラの様な素振りを取りながら訴えた。
「う、うむ。出来れば、と言うか気持ち悪いから話しかけるな」
「そんなっ!ルゥ!!さっき会った僕の事をもう忘れてしまったのかいっ!?君は僕の事を忘れない様に名前まで聞いてきたのにっ!!」
「っ!?寄るな!!貴様そんなに死にたいかっ!?・・・って名前だと?私がか?」
「あーうん。ルーちゃん。この人・・・シュウイチさん、だよ」
「は?いや格好は・・・確かにこんなのだったが・・・は?」
周一を視界に入れない様に顔を逸らすアイリスの紹介に戸惑いを隠せないルシファーは2度見する。何故ならその周一と紹介された男の顔は明らかに乙女ゲーに出て来そうな顔、と言うか頭だけが乙女ゲーの男キャラの様になっていた。
『うわあああああああああああああん!!アイリスのせいなんだよおおおおおおおお!!』
「だってイリスが治した方がいいって言ったよね!?」
『こんなのになるなんて私は聞いて無いんだよぉっ!!』
「わ、私だって!治癒魔法でこんなのになっちゃうなんて知らないよっ!!」
「さっきから君達失礼だな。僕の事をこんなの呼ばわりして。この僕の何処がそんなにイケてないんだい?」
呼称:こんなのは謎のイケメンポージングを決めながらそう言った。頭だけが変わっているため元の胴体とのバランスが合っていない。そしてポージングによって更に気持ち悪さが跳ね上がる。
「『「頭から足まで気持ち悪い」』」
「そんな馬鹿なっ!!?」
女性陣からの衝撃的すぎるコメントにショックを受けた呼称:こんなの。
「・・・して、こやつがシューイチなら・・・どうしてこんな事になったのだ?」
「それはね・・・」
アイリスは事情を説明した。港区から空を飛んでここに向かって来る間に周一の頭がおかしくなって気持ち悪かったため思いっきりビンタをかました後に何故か気を失った周一をここに運び、頭に治癒魔法をかけ続けた所、こうなったらしい。
「・・・なら。頭にだけ攻撃すれば戻るのではないか?」
『「はっ!」』
な、なんだいその目は?そして何で君達は魔法を出そうと魔力を集めているんだい?
やっ・・・やめろおおおおおおおおおおおおおっ!!
「クソッ!!せっかくのイケメンがっ!!!」
肘と膝を地に付けてあからさまに悔しがっている元こんなの。
『ますたー。あれは乙女ゲーとかBLモノに用意された空想の産物が集まりに集まって生まれた顔だからね。絵で表現されてるから許されているんだよ?リアルであんなのが蔓延ってたら気持ち悪過ぎて殺しても罪にならない法律を絶対作って滅亡させたくなるって。ますたーだってリアルにあんな大き過ぎる頭や目をした女性が現れたら嫌でしょ?』
アニメやゲームキャラの美少女達が蔓延るリアル・・・。
「いや、それはそれでアリじゃね?」
『いやいやいやいや』
首を横に振って全否定をするイリス。
「イリス。イメージしてみろ」
『なにを~?』
「お前の意見は男女の片方だけがその姿になっているリアル世界だ」
『うん』
「つまり、男女共にがその姿になっていて。そしてそれが常識になっているリアル世界なら、どうだ?」
『どうだって言われても、そんなのアニメ見たいな超常現象が起こる訳でも無いんだし見た目しか変わんなぁ・・・ん?超常現象?・・・はわわっ!!?そう言う事なんだねますたーっ!!』
「そうだっ!つまり超常現象で説明出来ない事は起こらないが、物理、化学。リアルで起こりえる現象なら可能だ!つまりはあのエッチなトラブルで有名なハーレム主人公どもの真似事をやらかしても絵的に問題無しだっ!!」
『なるほどっ!さすがますたー!!・・・でもねますたー。たぶんそれが許されるのは学生時代の子供達だけなんだよ?』
「なっ!?」
『大人がやったらセクハラで即アウトだよ』
「クソッ!!例え話ですら法で詰みかよっ!!いや、知り合い相手なら和解の範疇に持ちこ」
『関係は最悪になるけどね』
「クソッ!!結局詰みかよっ!!」
誰でもいい・・・今すぐ法改正をしやがれっ!!エロい事しても好感度が上がる法律をよぉ!!
「そろそろいいかな?」
『「いいよ」』
この茶番劇を待っていてくれたアイリス達。リアルじゃ絶対待ってくれない。ありがとう異世界。
「それじゃ、紹介するね。この子がシルフィー。それでこっちがシュウイチさんとイリスね」
そう紹介するアイリスの隣には緑色のオーラを纏いながら浮いている女性。格好はルシファーの色違いに近いが見た目は完全に大人の女性といった威厳を感じる。
「名前的にも風の精霊って感じだな。ってかルシファーに似た格好してんだな」
「おや?君は私の姿がはっきり見えているようだね。もしかしてそっちの板の子もかな?」
『板・・・そりゃ見えてますけど。だってますたーが見えてるんだから私が見えてるのは当然なんだよ!!』
見た目通りの大人のお姉さん声の風の精霊シルフィーに謎の理由で威張るイリス。
「そうか。それで」
『むぅ~~~!!』
まるで大人の対応と言った感じに軽く流されたことに頬を膨らませるイリス。
「ここを話の場として使わせて欲しいって事だったな。私としては別に構わないがこの場にいる限り、と言うよりも聞こうと思えばこの国にいる限り私には全て筒抜けだが、君の話は他の誰か聞かれてもいいのかい?」
「んー、まあ。つまらない話だけどな。訳あり勇者みたいに何かそれなりの過去とかあれば良かったんだけどな」
「ククッ。我の魔力を受けて何の影響も受けて無い奴が何を言っているのだ」
周一の言葉に軽く笑うルシファー。
「ほう。あの時のルーの魔力で。聞いてはいたがそれは確かに興味深い」
「だろう?」
「だがルー。あれで起こされた私の気分は最悪だったぞ」
「それは詫びたであろうに蒸し返すでない。それについては私を怒らせた奴に文句を言えと言ったであろう」
「ああ。だから身を弁えろと叱っておいた」
「そうか」
ん?なんか違和感が?気のせいか?
『・・・ねぇアイリス。魔王と精霊ってあんなに気軽に話していいものなの?』
まるで昔ながらの友と言ったような雰囲気の2人。イリスはそれに疑問を持ったのであろう。確かに俺も言われれば気になる事だ。魔王と勇者側に付いている精霊。普通は敵対関係にあるはずだからだ。
「まあね。だって2人共精霊だし」
「は?」
『え?』
「ああ。知らなければ当然か。私とルーは種族で言えば同じ精霊。私が風。そして」
「我は闇だ」
『え?でも魔王なんでしょ?』
「ほら、ルーちゃんが魔王なんてやらなければややこしくならずに済んだのに」
「むっ。仕方ないであろう。それに我が魔王になったきっかけはお前の親だぞ」
「えっ!?そうなのっ!!?」
まさかの魔王の過去に驚くアイリス。
「まあまあ。その話は後で君達で勝手にすればいい。それよりもシューイチの話を此処でするのであろう?この場でするかい?それとも中で話すかい?」
シルフィーはそう提案した。この場だったら心地良い風が常に吹いているから気持ちは良いだろうが・・・やはりあの立派な神殿があるのに外で長話ってのは抵抗がある。
「んじゃ中で良いか?」
「ふふっ。わかった。ではこっちだ。まあ中と言っても祭壇しかないがな」
クスリと笑いながら答えたシルフィーは神殿へと案内をする様に向かう。その後を全員で付いて行く。
「あっ。えっと、シュウイチさん。その・・・いいの?」
すると急に何かを確認するかの様にアイリスが聞いてくる。
「いいって?何が?」
「だってその・・・」
言いにくそうなアイリスにイリスが最初から知っていたかの様に無言で別ウィンドウを表示して周一に見せる。
「ああ。なるほど。違和感はこれか」
「あっ・・・やっぱり気付いてたんだね」
「ついさっきな。まあ別にかまわねーよ。言ったろ?つまらない話だって」
「あ、ありがとうっ!」
「なんでお礼を言われたかは解らねーが、その選択がお前にとって良い結果に繋がるといいな」
「えっ。それって」
「ほら、いいから行くぞ。俺の事を話さなきゃ次に進めないだろ?」
『そうだよアイリス。物語を進めるのに過去話は必須なんだよっ!』
「え?う、うん!」
周一の言葉に引っかかったアイリスだったがみんなに置いて行かれないように後を付いて行く事にしたのだった。




