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永遠の約束 永遠の旅 -とわのやくそく とわのたび-  作者: 風翔 響
第1部:エレメンタニア
30/109

3-3

「ようやく来たか。これだけ使者を待たせるのがこの国の他国に対する対応なのかね?」


 広場に着くと大きな戦斧を地に立てるように持つ黒い鎧を身に着けた大柄の男が周一達に向かって皮肉を言った。


「あ~、わりぃけど俺。この国の人じゃねーからそんなの知らねーわ」

「・・・何だお前は?」


 軽く返答した周一に気分を害したのか、表情にイラついた表情が浮き出る。何故か美遊が大柄の男の顔を見るなり「うわぁ・・・」と嫌そうな顔をしながらアイリスの背に隠れた。


「さてと・・・イリス。全員で何人だ?」

『えっとね~・・・美遊を省いた赤が5、兵士が30だね。それで、どうするの?ますたー?』


 赤が5。赤はイリスが生体感知によって分別した色。その意味は美遊と同じライネスの勇者と言う事。美遊を省いたという事はつまりあの連中の中に5人、異能の力を持った勇者がいると言う事になるが・・・インテリングを身に着けている物は見た限りでは4人しかいない。と言うよりも兵士の格好をしている者以外の4人は皆独自の格好をしていて目立っていた。

 赤の1人目は言うまでも無く先程皮肉を言った男。黄色い宝石の付いた大きな戦斧を持つ黒い鎧を身に着けた大柄の男だ。何故か兵士達と同じ様な顔の隠れる兜を被っていない。それに他の兵士達は白い鎧と白い兜を着けているのに大柄の男は黒い鎧と大きな戦斧のみ。見た目だけでもアピール感が強い。

 2人目は青い宝石を杖を持った白いフード付きのローブを来た女性。見た所、他に魔法使いっぽい姿が見当たらないので先程水の槍を放って来たのはこいつで間違い無いだろう。

 3人目は黒装束を身に纏う男。口まで布で隠しているあたり、どう見てもニンジャを意識した格好だ。あー・・・なんとなくあいつと被るな。でもあいつがこれを見たら怒るだろうな・・・だって足、ブーツだし。

 4人目はこの中ではわりと一般的な服だと思われる黄色のパーカーと青のジーンズを着ている小柄な茶髪の青年だが、異質な点が2つ。1つは腰に着けているロングソード。勇者としては当然とでも呼べる武器なのだがそれが異質な点になる理由は2つ目にある。あの小柄な青年が少し屈んで構えれば姿が見えなくなってしまう程の大きな青い盾。あそこまで盾が大きいと移動の点において、そして武器であるあのロングソードに利点があるとは到底思えない。

 そして5人目の姿は無い。姿は無いがイリスが言うには5人いる。つまり、そういう事なのだろう。


「お前は誰だと聞いてい」

「ヴォルグさん。異例の勇者ですよ。確か、シューイチ・エンドー。ヴォルグさんも王に呼ばれてあの場に居たでしょう?」


 茶髪の青年が大柄の男に小声で伝える。


「異例の?あの場?・・・ああっ。あの鬱陶しい小僧と一緒に外壁に大穴空けてブッ飛ばしたった奴かっ!!」

「そうです。それにありがたい事に彼女を、アイリス姫も連れています。ミユちゃんもいますから簡単に事が運びそうですよ」

「んっ?本当だっ!おーいっ!ミユちゅあああああああん!!」

「ううっ!!?」


 ヴォルグという大柄の男に戦斧を持っていない左手で大きく手を振りながら名前を呼ばれた美遊。体をビクッとさせた美遊はアイリスの背から出てきて大柄な男に視線を送らず、その隣にいる茶髪の青年に怨みの視線を送った。


「ん?何?知ってる奴?」


 美遊に問いかけるが美遊は帽子のズレを気にする事無く全力で首を何度も横に振った。その後やっぱり気になったのか帽子を定位置に戻す。


「あ、そう。まあどうでもいいけど。んで使者、ってか代表者は誰な訳?多過ぎてわかんねーよ。こっちは一応、アイリスと補佐で俺が対応に当たってくれってこの国の女王様に言われたんだけど?」

「なっ!?」


 その発言にアイリスは周一に目線を向けるが周一はそれに気付く事は無かった。


「くっ・・・ヴォルグさん。話を進めてくれっ」

「そうですっ!いつまでも手を振ってないでくださいっ」


 そしてあっちはあっちでニンジャと茶髪の青年がヴォルグが今にも美遊に向かって動こうとするのを2人がかりで抑えていた。状況から察してあのヴォルグという大柄の男が代表者の様だ。


「いやだってミユちゃんがいるからよぉっ!せっかくだしこの後一緒に冒険でもさそっ」

「水、必要ですか?」

「っ!?・・・ん。そうだな。用事を済ませないとだな。うん」


 ローブを来た魔法使いの女性に何かを言われたのか緩んだ表情から一変し、元の厳つい顔に戻る。


「我が名はヴォルグ・ドーシャ。ライネスの勇者である。我々一行はライネス王の命により、捕虜となっている英雄姫アイリス様を引き渡しを要求しに来たっ!。もし要求が通らなければ我々ライネスはブリズに戦を持って奪還を強行する事となるっ!!」


 ヴォルグはこの場にいる誰もが聞こえる程の大きい声を出して要件を伝えた。


「だが、戦の必要は無いようだな。こうしてミユちゃんがアイリス姫をこの場に連れてきていると言う事は要求を受け入れたわけだからな」


 そして勝手に納得するヴォルグ。


「捕虜ねぇ・・・。まぁその返答は本人から聞いてくれよ。この件について、俺はあくまで補佐役だしな」


 むしろ本人の話からすればライネスが捕虜にしていた訳なんだが、この使者共はきっと知らないのだろう。アイリス本人がライネスに戻りたいと言うなら俺は別にそれでもいいと思った。俺、何もしなくて良くなるし。

 と、思っても結果は見え見えだった。


「・・・その要求には従えません。私はライネスには戻りませんし、戻る理由もございません。それに私は私だけの勇者を既に決めました。もう勇者召喚の度に城に連れて行かれる理由もございません」

(ですよねー)

「・・・は?今、何と?」


 アイリスの顔は真剣そのものだった。ライネス側がざわつく中、ヴォルグが聞き返す。


「ですからっ、お断りしますっ!!」


 アイリスは自分の意思を見せつけるかのように強く断った。ヴォルグもアイリスの強気な姿勢にたじろいだ。


「・・・いいのですか?それではこの国に多大な迷惑がかかる事になりますよ?それとも、それを解っていての発言なのでしょうか?」


 そんな中、ローブの女性が冷静にアイリスに確認をするように問いかけた。


「ええ。解ってます。ただ断るだけではそうなるでしょう。ですから、こちらからも要求を出したいと思います」

「要求、ですか?」

「はい。私の勇者である彼があなた達と戦います」

「は?」


 周一の左に立っていたアイリスが右手で指し示す様に紹介した。

 俺がアイリスの勇者?何それ聞いて無い。


「それで彼が勝てばブリズに手を出さない事を約束して帰って貰います。彼が負ければライネスの要求通りに私を連れていっても構いません。それでいかがでしょうか?」


 いかがも何も俺の意思は?と、その視線をアイリスに向けるがアイリスはその視線からプイッと顔を逸らす。


「・・・アイリス姫が決めた勇者とはそいつの事か?」


 ニンジャが確認する様に聞く。


「そ」

「いや違うけど」

「うでっっ!?ええっっ!!?」


 アイリスは何かを言いかけたが周一に遮られ、ましてその発言に驚き、ショックを受ける。その光景を見せられた一同は困惑する。


「あのなぁ。そもそも異例だなんだ言ってるが、俺は勇者になったつもりは1度も無いぞ。お前等が勝手にそう呼んでるだけだろ?」

『そうそう。私達的には目的さえ果たせればそれでいいもんねっ』

「いや、だってっ!?」

「だっても何も俺、お前の勇者になった覚えも、ましてなるって言った覚えもないが?」

「えっ・・・・・・」


 アイリスは周一に会ってからの事思い返すと、周一を自分の勇者だと言った覚えがあるのは美遊達だけだが、確かに当の周一本人には言っていない。


「あっ」

「だろ?」

「じゃ、じゃあ今からっ」

「断る」

「なんでぇっ!!?」


 まるで泣きそうな子供みたいに理由を聞いてくるアイリス。やっぱこう言う状況のこいつのメンタル弱過ぎだろ。


「そもそもそれを受け入れる理由も無いし、受けた所で俺に利点が無い」

「うっ・・・はっ!・・・私。可愛いよ?」

「『は?』」

「ううっ!?ごめんなさい・・・」


 咄嗟に思いついた利点を見せつけるかの様にアイリスが可愛いと思うポーズを取るが2人に素っ気ない反応をされたため弱弱しく謝る。

 今の状況は周一にとって何一つ利点が無い。だがこの件を解決しなければ自分の目的のために情報集めなどの行動出来ない。なので仕方なくこのアイリスに関わる騒動の鎮静に参加したのだ。アイリスの補佐役と言ったのはその意味を込めてのものだった。


「俺はこの世界の情報を手に入れるに手っ取り早いと思ったからお前達側に付いてるんだ。何をするにもまず元。情報が無ければ進めないし動けない。ライネス側の方が情報を多く提供してくれるっつーなら俺はライネス側になる事だってある。っと言ってもヤバそうな所じゃまともなのは無いだろうけどな。今まで話して貰った情報が報酬だとするならこの件が依頼として妥当ってだけだ。流れでこっち側の仲間になってるって勘違いしてたみたいだが俺はどっちの仲間でも無い。依頼として今はこっち側にいるってだけだ」

「・・・・・・」


 アイリスは周一の説明にただ聞く事しか出来なかった。

 周一の行動が情報を手に入れる為だったとすれば確かに言っている事は筋が通っている。つまりはレヴォルに付くか、ライネスに付くかは本人次第だ。勿論何処にも所属しないという事もあるだろう。そもそも勇者がどこかに属すると言う誰もが持つ観念が話しの流れによって無意識にそうさせていたのだろう。周一の言っている事は最もだった。本来、周一は召喚されたのではなくライネスの地に突如として現れただけなのだから。


「・・・つまり円道さん。今は、私達の味方をしてくれるんですよね?」

「そりゃな。最初っからそう言ってるつもりだったが?」

「そんな・・・」


 恐る恐る聞く美遊の問いに軽く答えた周一。その答えに思わずテルフィアが声を漏らす。


「つーわけだ。俺はアイリスがあんたらの要求を断った時点で、ってかアイリスが俺に戦えって言っちまってるから俺のやる事は決まってんだが、あんたらはどーすんの?」

「どうする、だと?」

「そりゃそうだろ。あんたらの要求にアイリスは条件を付けた。言っちまえば交渉だ。それにイエスかノーかを答えるだけだ。勿論そっちの要求を変えてもいいがこっちの条件は多分変わる事は無い。どっちにしろ最終的には要求してるあんたらの返答待ちなんだよ。それで、返答は?」


 ライネス側の返答次第。当然だ。交渉は交渉相手から条件を出された場合、要求側がそれを飲むか飲まないかで決まる。飲めなければ別の要求で交渉をするか断念するかと言うだけだ。


「・・・あいつのレベルは何だ?」


 ヴォルグの言葉にニンジャの男は腰にある黒のポーチからモノクルを取り出し、それを使って周一を見始めた。ますますニンジャらしくない。


「・・・っ!?レベル23だとっ!?」


 ニンジャの発言にライネス側一同がざわめきだした。きっとあのモノクルはアイリスやあのリザードマンが持っていた相手のレベルを知る事が出来る能力を持った魔道具なのだろう。


「23・・・ぶははははははははははっ!!まさかその程度で俺達に勝とうってか?と言うかお姫様はレベル23のこいつが勝てると思っているって訳かっ!くくくくくっ!」


 笑いを抑えようとするヴォルグ。


「何を笑ってるの。アイリス姫が1人で任せるぐらいよ?異能が我々を圧倒する程の物って事じゃないの?」

「いえ、ヴィオラさん。あの人はユニークマジックです。訓練場での模擬戦で白い魔法陣から白い風魔法を出していましたから。何でも大臣が言うには属性の付いていない風属性魔法だと言う事でしたが・・・他にもあのとてつもなく重い青い剣などがありましたし・・・。ですが、少なくともあの白い魔法陣にさえ注意すれば俺だけでも負ける要素がありませんよ」

「くくかくくくくっ・・・だってよヴィオラ!物覚えの良いカイツがそう言ってんだ。ましてお姫様はそんな能力のあいつ1人に、ここにいる俺達全員を相手にして勝てる気でいるんだ。これを笑わずにいられるかって!!むしろハンデをくれてやってもいいぐらいだぜ!」


 ローブの女性、ヴィオラ。そしてデカイ盾を持った茶髪の青年、カイツ。2人の会話にヴォルグは更に余裕を見せつける様な表情をする。


「なぁ美遊。レベルとかどうでもいいんだが。あいつらの知り合いであろうお前に聞くけど、あいつらの能力は知ってるか?」

「・・・知ってる」

「そっか。ちなみにその能力があって、あいつらが束になって掛かってきても俺に勝てるか?」

「・・・円道さん。私に無理って言わせたいんでしょ?」


 ヴォルグ達に聞こえる様に美遊に問いかけた周一。美遊の回答にヴォルグ達から一変して余裕の雰囲気が無くなった。

 美遊の問いは正解だ。そうすれば相手は冷静に対処してくるはずだからだ。好戦的、平和的。どちらにしても話が手っ取り早く済む。


「・・・おいおいミユちゃん。それは・・・俺達がこんな雑魚に負けるって言ってるのか?」


 ヴォルグは美遊の名を呼んだ後、自身が持っている大きな戦斧を地面へと片手で振り降ろし、威圧を見せつけるかのように地面に叩きつけた。その地面には斧の刃をめり込ませながら大きな傷跡を付けていた。

 美遊に色目を向けていたはずのヴォルグだったがその発言には流石に真顔にならざる負えなかったらしい。


「なら安心だ。レベルとか能力とか聞かなくてもいいみたいだな」

『ますたー。アイリスの左側』

「はいよっ」


 イリスの指示に応えると同時に突然周一はアイリスのいる方に向き、そのアイリスの左側。アイリスから見て右側の何も無い所に右手を振りかざして殴りつける。するとガスッと何かが当たった音がした後、何かが離れる様に地面の擦れた音が聞こえた。


「おっ。流石は俺の相棒っ。タイミングバッチリだな」

『へへーん!当然だよっ!だって私だもんっ!!』

「・・・・・・なんでわかったの?」


 地面の擦れた方を向くとそこには先程まで誰もいなかったはずなのに、右腕を左手で抑えながら驚きを隠せない表情をする肌をかなり露出させた格好をした緑髪の女性の姿がゆっくりと現れていく。その現れ方はまるで先程まで透明だったかの様に。


「ふっ。勘だ」

『ますたー。私でしょ。わーたーしっ!!勝手に自分の手柄にしないでよねっ』

「・・・そこは俺の手柄にしとくべきじゃね?」

『ウソ、ヨクナイ。マスター。ワタシハ、ショージキ』

「っ・・・解ったからそれは止めろ」


 イリスのこの機械っぽい口調は自分を褒めて欲しい時に限って俺が冗談や嘘を言うとこうなる事がある。

 笑顔で機械っぽく喋られるとイリスの可愛さよりも残念さが上回るため、なんか悲しくなるので本気で止めて欲しい。


「何をブツブツと・・・それにその浮いてる板は何!?」

「それ、お前達に教える必要あるの?」

「っ!?」


 周一は喋りながら突如としてあの青い剣を出現させた。

 それを見た緑髪の女性はすぐさまヴォルグ達の元へ移動する。


「これで5人、か。斧のおっさん。あんた脳筋みたいな見た目してるくせに結構冷静なんだな」

「・・・どういう意味だ?」

「だってさっきの斧。あれで気を引きつけといてそこの透明能力の人にアイリスを攫う策でも練ってたんだろ?本来は交渉決裂の時とかに使いそうな策だけどな」

「・・・そうか。確かにお前のレベルはお粗末だが、頭はそうじゃないらしい。あのいけ好かない無敵野郎とは違うみたいだな」


 そういい。ヴォルグは叩きつけていた斧を片手で持ち上げ、両手で持ち戦闘態勢を取るかのように構える。


「もう一度確認するぞお姫様。本当にこの男1人にその身を委ねていいんだな?」

「・・・はい」


 さっきの事を引きずっているのか先程の凛々しさが無い返事だった。


「そうか。それじゃあ・・・エンドーだったか?後悔するなよ?」

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