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永遠の約束 永遠の旅 -とわのやくそく とわのたび-  作者: 風翔 響
第1部:エレメンタニア
26/109

2-12

『ますたー。気になってたんだけど・・・』


 ブリズの港区と言う場所に向かうために、クーラに先程フォイ騎士長と呼ばれた30後半の兵士の男の案内によって城内を歩く中、イリスが呟く。


『クーラってかなり若いよね?』

「おいっ!アイリス姫の付き人とはいえ、陛下を呼び捨てにするとは」


 イリスの不敬な発言に真剣な顔で注意しようとするが、


『だってクーラが構わないって言ったんだよ?』

「っ!?はぁ・・・まったく陛下は。やはりまだそういった所は若過ぎる」


 その事に補足をしたイリスの発言に何か心当たりでもあるのかフォイはため息を吐いて残念そうにそう言った。


「若過ぎるって事はやっぱりアイリスと同じ位の歳か?」


クーラのアイリスへの対応を見ての推察をフォイに言う。


「ああ。陛下とアイリス姫は今年で20になる幼馴染なのだ」


 今年。と言う事は年号や日付とかは同じ概念と言った所か。

 アイリスやクーラの年齢情報だけでなく思わぬ形でこの世界の時間に関する情報を手に入れた。


『へぇ~。でもその歳だったらアイリスみたいに[姫様]って呼ばない?』

「本来ならそうなのだが・・・って、さっきから気にはなっていたが彼女はなんだ?」

「あー・・・」

『すんごい超絶美少女イリスちゃんっ!!って思ってくれればいいよっ』


 こいつ、俺に似て説明するのが面倒になったな・・・ってかポーズ決めながら自分で超絶美少女って言うなよ。なんか俺が恥ずかしい。


「・・・あ、ああ。とりあえず言葉が交わせる存在で敵意は無い事は解った」


 ほら、若干引いてるじゃねーか。


『それで。続きは?』

「ああ。陛下が王位を引き継いだのは5歳の時だ」

『5さいっ!?』

「・・・マジか」


 流石に驚かざる負えない話だ。そんな歳で国王になるとは当の本人も思わない事だろう。


「陛下の母君。ブリズ先代の王女プリエル様は病で亡くなられてしまってな。王位の引き継ぎの話になった時、王女の血を引く陛下。クーラ様が引き継ぐのが当然と誰もが考えた。だが当時のクーラ様は5歳。とても一国を背負う事が出来る訳が無いとも誰もが考えた。だからクーラ様が大人になるまでは代役を立て、国を背負える程の風格を身に着けるまでは全力で世話をしようと。我々も、国民達も協力し合おうと決めた」


 王族の血統を大事にするのなら当然の方針だろう。

 だが突然、周一達の前を歩いていたフォイが立ち止まる。それに合わせる様に周一達も止まる。


「そして王の代行として陛下の父君。ブリズ先代の勇者、アレス様に家臣達が頼もうとした時、事件が起こった」

『事件?』

「アレス様がプリエル様が亡くなった途端に、自分の世界へと帰ってしまったのだ」

「・・・どうして自分の世界に帰ったって解るんだ?そういうのって色々条件とかあるだろ?」


 周一の当然の疑問をフォイにぶつける。「うんうん」とイリスも隣で頷く。


「召喚された勇者が自分の世界に戻る事の条件は契約者、王女との契約の達成、若しくは破棄されれば召喚陣を使って帰る事が出来る」

『契約?それってどんなの?』

「それなら予想は付く」


 そう言った周一に2人の視線が集まる。


「定番で良くあるセリフだ。[国を守ってくれ]。これに色々条件が追加されてるかもしれないだろうが根っこはこれだろうな」

「・・・ああ。先月亡くなってしまわれた大臣から聞いた話では概ねその通りだ」

『それって・・・絶対に達成不可能な契約だよね』

「ええ。お母様は、お父様にそんな曖昧な契約をしてしまいました」


 イリスの呟きに応答したのはいつの間にか後ろに居たクーラだった。城内の通路で多少響くため、周一達の話声が後ろから来ていたクーラ達にも聞こえていたのだろう。


「曖昧、ですか?アレス様ってしっかりブリズを守るために戦っていたって居住区の人達が言っていましたけど・・・」


 クーラの後ろ、アイリス達の中からテルフィアが疑問の声あげる。


「確かに。アレスの奴はこの国を守っていた。だがなテルフィア」

「それは、いつまで守ればいいのかしらね」

「あっ・・・」


 カルドとリアンにその疑問の答えをテルフィアは察した。

 国を守ってくれと言う契約。その契約は1度や2度、守っただけでは到底果されるものではない。契約の達成方法は守る必要が無くなるまで・・・ではない。そもそも期限も条件も無いため、契約の内容はこうなるだろう。


 [死ぬまで国を守り続けろ]と。


「・・・お母様が亡くなったあの日、泣いていた私に言ったんです。[すまない]、と。お父様がそう言った後、お母様の居た部屋から出て行ったっきり戻って来なかった。異変に気付いた家臣達がお父様を探した時には荷物も残っていなかった。でも。事情を知った国の誰もがお父様を責める事はありませんでした」


 召喚した王女が死んだ事によって勇者との契約が破棄されたとみなされたために帰る事が出来たのだろう。

 そして、契約の内容を知っている奴も俺の様に予想を付けた奴も責める気にはならないだろう。

 だが、それは。その勇者の言葉は・・・。


「気分悪くしたら悪いが・・・そん時のクーラの親父さんがどんな顔してたか、覚えてるか?」

「・・・いいえ。私、お母様が亡くなった悲しみでずっと泣いていましたから・・・ただ、その時に聞こえて来たお父様のその言葉だけは覚えているんです」


 悲しそうな表情をするクーラは首を横にゆっくりと振ってからそう答えた。


「そうか・・・」


 なんとなくそうだとは思ったが・・・やはり胸くそ悪い。

 聞かなければ良かったと後悔する周一。


「シュウイチさん?」


 そんな周一の反応に違和感を感じたのかアイリスが名前を呼ぶ。


「どうした?」

「いや、何か気になる事でもあったのかなって?」

「別に。ただこう言った話って気分や空気が悪くなるからな」

「・・・円道さんでもそんな風に感情移入出来るんですね。私には・・・」


 美遊の言葉に元気は無い。話題の問題でもあるが、美遊の場合はまだインテリングの件で引きずっているのだろう。

 するとクーラが両手でパンッと音を鳴らし、周りに居る全員の注意を引いた。


「さあ。こんな暗い昔話はお終いです。今は民を明るくするため、急いで港区へ向かいましょう」


 そう言ったクーラの笑顔は決意に満ちた何かを感じ取れた。


 きっとクーラは・・・クーラだけしか知らない真実を隠している。そしてその真実はきっと・・・。 


 その後、周囲達は通路を歩き続け、城門を抜けた先、先程のテラスとはまた違った光景を目の当たりにすると共に複数の転移の魔法陣が目に入った。


「にしても本当に浮いてるんだな。ここ。ダンジョンもそうだったが、これを現実として受け入れんのは時間かかりそうだな」

『大丈夫だよますたー。そのうちますたーもラノベ主人公みたくなるって!』

「そーだなー。だったらまずは[主人公補正]のパッシブスキルを手に入れないとな。それが無いと[くっ!?]とか[あぶないっ!!]とか言って敵の奇襲とか防げないもんな」

『ますたー。それには[逃けろっ!]とか[伏せろっ!]も入れた方がいいのかな?ほら、そう言うと仲間やモブキャラが怪我するか、無関係な背景キャラが死ぬかのどっちかになるし』

「ああー・・・だったら俺、モブでいいわ。それだと俺が間接的に傷害や殺人をした気分になっちまう」

『ん~そうだねー。そう考えると私もモブでいいかも。あっ!でもモブだとしても超絶可愛い美少女のモブキャラだからねっ!薄い本に書かれちゃうぐらいのっ!』


 目をキラキラさせながらナニを言ってんのかねこの娘は。


「「シューイチ」」


 少し遠くからクーラとヴァンの呼ぶ声が聞こえる。声の聞こえた方を向くと周一とイリス以外はもうすでに城門から見て右から二つ目の転移の魔法陣の前に立っていた。どうやら俺達が話をしている間に先に行って待っていたみたいだ。


「行かないのかい?」


 ヴァンのイケメンスマイルによる呼びかけ。そのジャージ姿で無ければ今頃女共はキャーキャー言っているだろう。だがクーラとテルフィアがすでにあの顔にやられてトキメキ状態になってるため内心でイラッとする周一。他意は無いんだろうがやはりイケメンはムカつく。


「ああ、待たせて悪いな」


 周一はそう言ってアイリス達が居る所へ向かい、転移の魔法陣に乗って目的地のブリズの港区まで転移して行った。


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