2-13
ブリズの城の転移の魔法陣を使い、港区へと転移して来た周一達。だが一目で港だと解る光景ではなく辺りは石壁で出来た空間だった。
「ん?騎士長・・・って陛下っ!?ヴァン様!?それにアイリス姫までっ!?」
この場を警備していた兵士が転移の魔法陣の転移者の姿を確認するためじっと見ていると、最初に現れたフォイ騎士長の後に続いて現れたクーラ達の姿を認識した途端にすぐさま膝をつく。
「楽にしてくれていいわ。ここに来た理由については知っているでしょう?」
「はっ!承っております。ですが・・・良いのですか?その・・・アイリス姫も同行されていますが?」
クーラに楽にしてくれていいと言われた兵士は立ちあがる。だがその顔にはアイリスがクーラ達と同行している事に疑問を抱いていた。きっとアイリスがブリズに来ている事は兵士の間では極秘なのだろう。つまり、ライネス側がアイリスを要求しているのに連れてきてしまってはここに居る事を晒しまう事になるのではないかと思っていると予想が付く。
「ええ。構わないわ。ライネスはすでにアイリスがここに居る事を知っているでしょうから。だから隠す必要が無いのです。むしろ、アイリスにはこの国のために協力してもらわないといけませんから」
「クーラっ!!?わたむぐっっ!??!?」
何かを言おうとしたアイリスの口を周一の手が塞ぐ。「む~~~んむ~~っっ!!?」とアイリスは暴れているが周一にしっかり押さえられているため喋れなかった。それを見たクーラと周一は互いに相槌を打つように軽く頷いてから兵士に向き直る。
「おおっ!アイリス姫が協力して頂ければ確かに心強いですね。・・・しかし何故ライネスはその情報を?」
「その件については後日お伝えします。今は事の対処をしなければなりませんから。引き続き、ここの警備をお願いします」
「はっ!!物質けな事で時間でとらせてしまい申し訳ありませんっ!!・・・どうぞっ!!」
兵士はクーラに謝罪をしてすぐさまこの石壁部屋の扉を開き、道を開ける。
「ああ、それと。許可の無い者は当然の事、レヴォルのライネスに所属する勇者も、許可なく王城への出入りを禁止する事を兵のみなに伝えておいてください」
「それはどういう・・・っ!?はっ!承りましたっ!!」
クーラの追加の指令を聞いた兵士は疑問を声に出そうとするが、クーラの顔を見た途端にそれを了承した。
「ありがとう、お願いしますね。・・・では、みなさん行きましょう」
一同は頷き、周一は多少暴れているアイリスを例の体勢で担ぐと、アイリスは暴れる事を止め、ピタッと動かなくなったので難なく移動する事が出来た。その姿を見た兵士はすごく気まずそうな顔をしていた。
通路先の階段を上り、扉を開けるとそこは異世界で良く描かれるようなギルドのような場所だった。
「ここは?」
「港区を管理する役所です。ここでは船を利用して国を行き来する人のための手続き、漁の許可、漁で獲れた魚を居住区へと運ぶ手配など・・・まあそういった所ですね」
周一の質問にクーラがそう説明する。
クーラの説明してた声が周りに聞こえたのか、それとも見て気付いたのか、周囲はクーラの存在にざわめき始める。
「くぅうううううらああああああああっっ!!!!」
すると突然、1人のスーツの様な正装を来た緑髪の女性がすごい勢いで駆け寄って来るなりクーラの頭にゴツンと拳を振り降ろした。
「ふぎゅうっっ!!?」
「あれほど言ったのにまたやりやがったわね!!いくらこんな事態とは言え、これで何度目なのっ!!」
「あうぅ~~だってぇ~~」
「だってもクソもあるかっ!!ただでさえあいつらの所為で苦情殺到だの混乱状況だので迷惑だって言うのにそれを悪化させる事してんじゃないわよっ!!」
頭を押さえて涙目になっているクーラに八つ当たりをするかのように怒る緑髪の女性。・・・っていうか王女にこんな事していいのか?死刑とか言われても文句言えなくね?
『・・・誰?』
「ああ、彼女はアンジュさん。僕とクーラの魔法の師匠でこの役所の最高責任者。・・・あと怒らせるとかなり顔がこわ・・いえすみません何でも無いですごめんなさい」
紹介をするヴァンがアンジュと呼ばれた緑髪の女性に威圧されたためか、途中から急にアンジュに対して謝りだす。
「アンジュ。今はそんな事してる場合じゃないでしょう?」
リアンが間に割って話を進めようとする。
「うっさいわね泥棒猫!!ブッ飛ばすわよ!!」
「なっ!?どろっ・・・いつまで引っ張ってんのよ!!カルドがあなたを選ばなかった事をネチネチと!!」
「くっ、なによリアン。やる気?・・・いいわよ。幸せな老後を送ってる様な今のあんたならライネスの奴ら共々ブッ飛ばせる自信があるわ!」
「老後・・・ですってええええええっ!!?」
リアンとアンジュが怒りに満ちた顔をしながら両者共に体に赤と緑の魔力のオーラを出し始める。
それは港区の人達やアンジュと似た様な格好をしている者達への注目と騒々しい状況を黙らせるための威圧としては十分であった。
『ますたーと私には関係ないイベントだね。いこっか、ますたー』
「そーだな」
「「ええっ!?」」
この状況下で余りにマイペースな発言をした2人に驚くクーラとヴァン。
「なぁ騎士長。事の場所までとっとと案内頼むわ」
「すまないが、君を港区まで案内する指令はすでに終わっている。次の指令を受けていない私は城から出ている陛下の護衛が最優先事項になるのだ。なので陛下がここから動けなければ私も指令があるまで動けない。先に向かうのであれば、事の場所は港の広場だ。あそこから出ればすぐに解るだろう」
つまり転移の魔法陣によってこの港区に来た時点で果たされていると言う事だ。融通が利かない指示待ち人間めと言いたくもなるが確かに騎士・兵士にとって王を守るのは最重要な事だろう。悪く言う事は出来ない。
「わかった。ありがとう」
「それよりも・・・アイリス様のその扱いはどうにかならないのか?」
「ん?気にすんな」
「いや気にするなといわれ・・・っておいっ!」
フォイの声を無視して出口へと向かっていく周一。もちろんアイリスを抱えたままで。
「待ってくれシューイチっ!!」
「こんな状況なのにっ!?」
「そうだぞ!悪いとは思うが手伝ってくれないか!?」
フォイの声に続いてヴァン、クーラ、カルドと順に周一に助けを求める様に訴える。
が、俺等にアレをどうしろと?
「だってその揉め事、俺等に関係ないだろ。・・・美遊。テルフィア。お前等はどうすんだ?」
『ますたーに付いて来てもう一回ますたーの凄さを見る?それともそこでアレを見てる?』
「「・・・・・・(こくり)」」
イリスの問いに2人は顔を合わせ、無言で頷いてすぐに周一が居る傍まで駆け寄った。誰かの呼びかける声が聞こえたが聞こえないフリをした周一達はそのまま役所を出て行った。




