2-10
「・・・起きそうですか?」
『んーっ!どぉーだろねー』
クーラの問いに曖昧な答えをするイリス。
「ミユ。やり過ぎ」
「それはっ!だってっ!!・・・というか私よりもレベル高いでしょ!!?」
その曖昧な原因を作った本人を軽く攻めるアイリス。言い訳しようとする美遊は何かを思い出してその被害者を指さす。
「シュウイチさん。今は23だよ」
「なっ!?だってさっきは!?」
『それはね~』
話を聞いていたイリスが割って入る。
『ますたー自身も解って無いみたいなんだけどね。あの剣を手にして、気付いたらあの姿になってたんだって。初めての時もさっきの時も、[1stトリガー]って言ってからあの姿になってるからあの姿に名前を付けるならそのままシンプルに[1st]ってところかな。ちなみに今は普通のますたーだよ。今の服と1stの服って結構似てるんだよ。違いと言えば服の装飾や模様と指無しのグローブを付けてるぐらいかな』
イリスが周一が強くなった理由を簡単に説明した。
「それがシュウイチさんの能力なの?」
『んーっ。それは私にも解らないんだよ。それに・・・』
「それに?」
『・・・ううん。何でも無いよ・・・』
「あっ・・・とにかく、まずはシュウイチさんを起こさないとね」
口ごもるイリスに疑問を持ったアイリスだが言いたくない事だったのだろうと思い、話題を逸らす。
「起こすって言ったって・・・」
「もしかして、家でやった事と同じ事すれば起きるんじゃないかしら?」
リアンがアイリス達に声をかけた。
「同じ事?・・・ってまさか!?」
『あー、今回は無理そうかなぁ~』
リアンの提案、それはイリスによる理想郷発言だ。あの時はそれで起きたがイリスが言うには今回は無理らしい。
「じゃあ起こせないの?」
「シューイチが起きねぇと話しが進まねーからな・・・」
テルフィアとカルドも話が進まない事にもどかしくなったのか、美遊に嫌味な視線を送る。それらに対してすぐに視線を逸らす美遊。
「はぁ・・・、どうしたものかしら。ヴァン、何か良い案は無い?」
困り果てたクーラは自分の勇者、ヴァンに訪ねた。
「そうだね・・・、意識に関係なくすぐにでも起きたくなる状況となると・・・」
「そんな事言って無いわよ」
クーラのツッコミを聞き流しながら考え込むヴァン。
「・・・えっと、イリスちゃん」
『ん~?』
「今まで似た様な事無かった?もしあったらその時の起こし方を試して行くしかないかと思うんだけど・・・」
『あるけど・・・なんでも、やってくれるの?』
「はぁ。仕方が無いでしょう。やらなければ話したい事も話せませんし」
クーラはイリスの申し出を渋々承諾する。
『なんでもだよ?本当に大丈夫?』
「仕方ないでしょ。ほらっ。何をすればいいの?」
「教えて、イリス」
「私も出来る事ならっ」
イリスの再確認に急かすように要求する美遊とアイリス。テルフィアも輪に入る様に手を上げながら駆け寄って来る。美少女3人が集まり内心ニヤリと笑うイリス。
『・・・それはね』
「「「それは?」」」
『ますたーに色々』
「あっ」
『えっちなこと』
「【ウィンド・ブラスト】ッ!!」
「【ウォーター・バレット】ッ!!」
「・・・うぉおおっ!!?あぶぬぇえええっ!!??」
突如魔法を唱え、美遊は手に出した魔法陣から風の衝撃波を、テルフィアは手にした銃の銃口の魔法陣から水の弾を。それぞれの魔法を倒れている周一に向けて放つと周一は咄嗟に跳び起きて避けた。アイリスは話の途中で周一が起きた事に気付いていた。
「なんなのっ!?いきなりっ!?これがこの世界のモーニングコールってかぁっ!??」
寝起きに突然魔法を放たれた周一は動揺を隠せなかった。
「おはよう。起きれたんだからいいじゃない」
「そうですよ。むしろお礼とお詫びに何か奢ってくれてもいいんじゃないんですか」
まるでゴミクズを見るかの如く蔑んだ目で睨みつける美遊とテルフィア。
また知らぬ間に俺の評価が下がっている気がする。
「一体何だってんだよ・・・ってまぁイリスだよな」
『テヘッ!』
「テヘッじゃねーよ、ったく。危うくまた寝るとこだったぞ・・・」
「あはは。イリスは知ってたんだね。シューイチさんが起きてるの」
『とーぜん!』
「威張んな」
ま。さっきといい、今といい。俺の知らない間に事が起こってしまうのは大概こいつのせいなのはいつもの事だからな。
「シューイチ。話は出来そうかい?」
「・・・ああ。出来るよ。あいつら次第だけどな」
頭を掻きながらヴァンの問いにそう答え、視線を美遊とテルフィアに向ける。
「もうシュウイチさん起きたんだし。ねっ?」
「・・・そうね。お見苦しい姿を、申し訳ございませんでした。女王陛下」
アイリスが抑えると、美遊がクーラに向かい膝をつき、敬意を込めて謝罪する。テルフィアも美遊と同様に言葉は無いが膝をついて頭を下げる。
「別に構わないわ。では、話の続きをしましょう」
やっと話が進められると内心ほっとするクーラだった。
「では、シューイチさん。あなたの事について色々聞かせてもらえますか?」
「色々って言われてもな」
「そうですね。要点で言えばあなたの世界の事。この世界、エレメンタニアに転移するまでの経緯。あなたの力の事。あとはここに来るまでの事ですね」
クーラの聞きたい事について少し考えた後にイリスを見る。
「イリス、そう言えば」
『うん。ますたー。居るよ』
イリスが別ウィンドウを出し、あの時カルドの店でアイリスにも見せた見た生体感知を表示する。
「どうしたのですか?」
「いや、少し待ってくれないか」
「はあ」
クーラの問いを軽く流し、ウィンドウに映る色の付いた点を見た後、辺りを見渡す。
「・・・つーことは当たりは美遊って事か?」
『ううん。重なってるけど美遊もちゃんと表示されてるよ。だから結論として完全に別の存在が居るって事になるけど』
カルドの店で囲まれた時も店内、つまり美遊に1体。外には2体居た。だが今この場には美遊の傍にいる1体のみ。考えられる可能性は限られてきた。
「なぁ。女王様」
「はい」
「今この城に居るライネスで召喚された勇者って俺と美遊だけか?」
「・・・はい?」
周一の意図が読めないクーラは疑問に思いつつも傍にいるヴァンや兵士達に確認を取るかのように視線を送る。
「・・・そのようですが。それが?」
『これでほぼ確実かな。あとはタイプだね』
「だな」
「あの・・・何の事でしょうか?」
「ちょっと確認したい事があってな。美遊」
「なっ!?何ですか?」
まだちょっとビクついているが話せるぐらいにはなった美遊。
「ちょっとこの部屋の中をテキトーに全力で走ってくれないか?飛んでもいいけど」
「は、はあぁっ!?いきなり何言ってるんですか?それにさっきの、私と円道さんに何かあるんですか?」
『それを確認したいからお願いしてるんだよ』
「ミユ。お願い」
「アイリス?」
渋る美遊にアイリスもお願いする。どうやらアイリスは周一とイリスの意図に気付いたらしい。
「・・・もうっ。わかったわよ。やればいいでんしょ。や・れ・ば」
「ありがと、ミユ」
そう言って美遊がしばらくの間、部屋の中を箒で飛び回る。美遊の飛行魔法が余程珍しいのか兵士たちは驚きを隠せず声に出てしまう。
「候補として・・・やっぱりな」
「うん。多分そうかも。ミユ!もーいーよーっ!」
傍に近付いて生体感知のウィンドウを一緒に見ていたアイリスも話し合いに入り、周一が確信するとアイリスは美遊にもう終わっていいと呼び掛ける。
「どおりで美優に居て、俺に居ない訳だ」
「・・・っと。で、何がどおりで、なの?くだらない理由だったらただじゃおかないんですけど」
降りて来た美遊も気になるようで周一達に近付き、脅し付きで聞いてくる。
「あの・・・そろそろ説明して欲しいのですが」
「ああ。何が解ったんだい?シューイチ」
確信した顔をする3人に疑問を持ったクーラとヴァンも思わず聞いてしまう。
「ああ。あともう1つ、アイリス。エレメンタニアのどの国にもギルドがあるって事はどの国にも裏ギルドのレヴォルがあるって事か?もしあったらその中に美遊以外のライネスの勇者は?」
「ああっ!!?そうだとしたらシュウイチさんの考えてる通りだよ。あぁ~っ!もぉ~っっ!!ルーちゃんだったらとっくに気付いてそうな事なのに何で教えてくれなかったんだろっ!たとえルーちゃんが知らなくても腹癒せにお仕置きしなくちゃ気が済まないんだよぉ~っ」
あれ?それ本当に知らなかったらそのルーちゃんって子、可哀そうじゃね?
「だから何なのっ!!」
話が解らない美遊が急かす様に聞いてくる。
『つまりね、美遊。多分あなた、というかライネスの勇者達全員が、スパイにされた可能性があるって事なの』
「・・・は?」
部屋の時が一瞬止まったのを感じた後、
「「「「「はあああああああああああああああああっっっ!!!!!?????」」」」」
3人以外の声が部屋中、いや城中に響いたのだった。




