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ペチペチ。ツンツン。
「おーい。アイリスや~。朝じゃよ~」
「・・・・・・はっ!?ここ・・・あれっ?いつの間に?」
周一に軽く頬を叩かれ、突かれ、正気を取り戻したアイリスが辺りを見渡すと、ブリズの王城内の謁見の間に居る事を把握した。
ブリズに転移する前、周一に配慮された荷物扱いをされてからの記憶がはっきりとしないアイリス。
「良かったぁ。アイリス。私がわかる?」
「ん・・・クーラ?どうしたの?私がクーラの事解らなくなるわけ無いでしょ?」
「・・・ええ、そうね」
王座に座るクーラの問いかけの答えにアイリスから目を逸らし、先程の事を思い出すクーラ。
それもそのはずだ。この謁見の間に来る前。周一に荷物扱いをされていたアイリスに何度も声をかけ、体をさすったりと自分を気付かせるための行動をしていたが全く反応が無かった。それを「何かされたのっ!?」と心配したクーラだったが、ヴァンに詳しい説明を受けるとこの状態になった事を納得したのかスイッチが切り替わった様にすぐに客人対応をしてこの謁見の間まで案内されたのだ。 そして周一が室内の柱にアイリスを凭れさせ、今に至るのだった。
「え・・・っと、アイリス?・・・その・・・」
「ん?クーラ?」
「ここに来るまでの事覚えてる?」
「ここに?・・・・・・・・・転移陣の結界内に入ったまでは覚えてるんだけど、急に意識が・・・私、もしかして寝ちゃってた?」
「そう・・・その方がきっといいと思うよ」
「えっ!?なにがっ!??・・・って、みんなも何なのっ!!?」
クーラの優し過ぎる顔と言葉に困惑するアイリス。
アイリスにここに来るまでの記憶が無いようだ。きっと防衛本能が記憶を消去しなければならない程のショックな出来事だったのだろうと、事情を知る周一以外の者達はクーラと同じく表情のみに留めた。
「ま。とりあえず、だ」
周一が中央まで歩くとクーラと隣に居るヴァンに向かって言った。
「ああ。そうだね。クーラ、話を進めよう」
「あっ!コホン・・・ええ、そうですね」
周一とヴァンに本題に入るよう促されるクーラ。咳払いをし、真剣な表情になる。それに合わせてアイリスは立ちあがり、周一の傍へ寄る。カルド達、美遊、兵士達もそれぞれ風の国ブリズの女王に対する態勢をそれぞれとる。
「まず先にお礼を。シューイチさん。アイリスを、仲間達を守ってくれてありがとう。褒美は我々ブリズの国で出来る範囲での内容であれば言って下さい。命の恩人ですもの。出来るだけの事はしたいですから」
「褒美・・・ね。何でもって言わないあたりがしっかりしてるな」
『そうだねー。報酬に何でもって言うのが定番だもんねー。[何でもって言ったよなぁ?]って言いそうな奴らに言わせない対策かな?』
「かもな。もしそういう奴がいたら、ゴミを見る目で哀れな豚野郎とでも言ってやれ」
『・・・哀れな豚野郎』
「俺に言うなよ。泣くぞ」
『ん?その手の男にとってはこれってご褒美じゃないの?だったら本物の女王様に言って貰う?』
「だったらって何だよ。俺にそんな性癖はねえよ」
「シューイチ」
ヴァンの呼びかけに2人は顔を向ける。
「・・・続き、よろしいですか?」
「『あっ、ごめん!』」
2人の世界に入っていた周一とその頭の上に居るイリス。クーラの困り顔を見て2人はすぐさま謝った。
「コホン。・・・ではお礼の件は私かヴァン、この場に居る兵士達でも良いので何か決まりましたら言って下さい」
「ああ、わかった。ありがとな」
「いえ。では、次に行きましょうか」
クーラはお礼の件に区切りを付け、ヴァンに目線を送り、ヴァンの頷く反応を見た後に本題に入る事にした。
「アイリス。シューイチさんにこの世界の事については?」
「それはミユが大体の事を話してくれたよ。ただ・・・」
アイリスはクーラに聞かれた事に素直に答えるが、その内容は美遊が周一に対して起こした行動を思い返させてしまう。
「・・・ああ。それは美遊から聞いた」
周一が声を発すると美遊が少し怯えた様な反応を見せたのをアイリス、クーラとヴァン、カルド達も気付いてしまう。
『ますたー』
「・・・そうだな。悪い。ちょっと待ってくれ」
「あ、はい」
「シュウイチさん?」
イリスの呼びかけに仕方なくと言った感じに話を一端止め、周一はクーラに対して膝をついている美遊に近づいた。
「美遊、立て」
「っ!?」
まだも怯え続ける美遊は周一に言われるがまま、俯きながら立ちあがる。その姿に周一は大きくため息を吐いた。
「歯ぁ~食いしばれよっ!」
「っ!!!」
周一は右手を握り拳にして踏み込み、美遊にその拳を振りかざす。
「シュウイチさん!!」
「「なっっ!!?」」
バッッサァアアアアッ!!
周一が美遊に殴ろうとする姿に止めに入ろうとしたアイリスとヴァンだったが間に合わなかった。
「・・・・・・・・・えっ?」
訂正。間に合わなかったのではなく動きを止めてしまった。・・・なぜなら、
「えっ?えっ!?っ~~~~~~!??!!????!!?!?」
周一が殴ったのは美遊ではなかったからだ。
「恥っ殺、男舞拳」
周一は美遊を背に技名をクールに言う。その背に居る美遊は顔を真っ赤にし、周一を睨みつけながら前スカートを両手で押さえていた。
そう。周一が殴った、もとい舞い上げたのは美遊のスカートだった。美遊のネコさんパンツとお腹周りがアイリスやクーラ、ヴァン、カルド達。そしてブリズの兵士達にまで360度、周一の拳が何処からも見えてしまう程のパンツ大公開をさせてしまう事になったのだ。
「あー・・・」
「えと・・・「【ウィンドバレット】ッ!!」 ネゴォフォッ!!?」
「ヴァン!!何をまじまじと見てるんですか!!?あなた達もですよ!!?」
「「「はっ!!申し訳ございませんっっ!!!」」」
アイリスは茫然とし、何かを口走ろうとしたヴァンは頭上に現れた魔法陣から出たクーラの風の魔法弾によって床に倒れた。クーラに一喝された兵士達もそのヴァンの姿を見て、体が固まったかの様に背筋がピンとなりながら大声で謝罪する。
「決まっだぁっ!!?」
「決まった、じゃないわよっっ!?何してくれてんのっっっ!!!??」
後ろから箒で頭を思いっきり殴られた周一。
「つぅ~・・・それは」
『説明しようっ![男舞拳]とは、スカートを穿いている美少女限定に対する有効技である。これを受けた美少女は一時的に死にたくなる程の恥ずかしさをっ!!これを見た男性は舞い上がる程の興奮と喜びをっ!!それぞれ得る事になるのだっ!!そしてこの男舞拳は対象のスカートの種類、長さ、材質によって効果時間が異なるのだっ!!』
いや。一応言っとくけど、ただのスカートめくりだからね?
いくつものウィンドウに先程の美遊の瞬間をスロー再生も混ぜ、繰り返し映像を流しながら説明をするドヤ顔のイリス。説明通り、美遊の魔女のローブのスカート部分はロング。更にその部分は薄めの生地で作られた物だ。魔法で風も起こしているので効果時間は美遊の対応が遅れた事もあり、かなりものだった。その美遊への配慮なのか、しっかりと光による加工を施してある。
「消せっ!!!今すぐそれを消せえええええええええっ!!!!!」
その配慮も空しく、美遊は未だに顔を真っ赤にさせながらイリスに命令する。
『安心して美遊っ!』
「はぁっ!?」
『これは何かの特典として、世界の男達へと販売するからっ!』
「するなっっっ!!!!!」
『男達よっ!もちろん光は消しとくから買ってねっ☆』
「消すなっ!!売るなぁあああああああああああっっ!!!!!」
美遊への配慮ではなかった。ならばっ
「イリスっ!!1つくれっ!もちろん俺専用!まさかのノーパン!?バージョンでっ!!」
「しねええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっっっ!!!!!」
『よっと』
「ウボォッ!・・アァアァアァアァ・・・・・・」
美遊の箒フルスイングをまともに食らい宙を舞い、セルフエコーをしながら床に落ちて倒れる周一。それを見越してか、回避するかのように立体映像からウィンドウ画面へと変化するイリス。
「あっ!・・・すごいよ。シュウイチさん、イリス。でもやり方はアレだけど。ミユッ!」
アイリスは美遊の箒フルスイングをウィンドウ化して逃れていたイリスの目線を見て何かに気付き、美遊に呼びかける。
「はぁ・・・はぁ・・・なにっっ!!?」
まだ顔を真っ赤にして興奮している美遊が振り向く。
「げんき、出た?」
「っ!!?」
そのアイリスの問いかけに、周一が自分のためにしてくれた事だと悟った美遊だった。




