夢佳の葛藤と試行錯誤
一方、夢佳は最初、自分の股間に変なものが生えた時は嫌でシクシク、クヨクヨと泣いてばかりいた。だが、博と保健室で会い、トイレに行って触ってみてアレの形が少し変わったことに驚いたあたりから、自分に起きた変化がどこか楽しくなってもいた。
最初は「自分に変なものが生えてしまった」という悲しみがあったものの、今は体の中から何かわからない力がみなぎっていた。そう、小学生の頃に男子と夢中で遊んでいた頃のあの感覚だ!
「ただいま」
「おかえり、遅かったわね! なにしてたの!」と母。
「水泳部の友達とサイゼで話してたら遅くなっちゃって。ごめんなさい」と適当な言い訳をする。
「夢佳、部活動もいいけど、もう受験勉強もしないといけないわよ! 進路のこと、ちゃんと考えてるの?」
いつものように母が言う。内心、自分でも悩んでいるところに親からグダグダ言われるのは、マジでウザい!
「わかってるよ!」
そっけなく返事をして自分の部屋へ駆け込んだ。ベッドに横たわり、そっと自分の股間に手を当てる。
(グニュっ……)
変な手触り! 改めて自分に変なものが生えたことを実感した。
大好きな水泳を続けて体育系の大学へ行くか。それとも夢を見ないで、母のように短大の家政科に進んで腰掛けで就職し、結婚して専業主婦になるのか。
夢佳は中学・高校と水泳ばかりしていて、正直なところ将来の夢よりも「1秒をどうやって縮めるか」しか考えてこなかった。でも、高校のインターハイで優勝を逃したあたりから、周りの空気感が変わり始めていた。
気づけば、周りの友達たちは将来のことや大学進学のこと、それ以外にも彼氏のことを話している。水泳バカだった自分は、なんとなくその輪に入れないまま過ごしていた。ただなんとなく、「水泳の推薦で大学に行けたらいいな」くらいに簡単に考えていただけだった。
博に買ってもらったタップパンツを穿いてみる。締め付け感はなくなったけれど、やっぱり少しはみ出てしまう。キモい感覚!
(それより、明日からの部活どうしよう……!)
部屋に鍵をかけ、先生の指示通りに養生テープで押さえ、サポーターを履いた。さらに通学サブバッグから部活で使っている競泳用水着を取り出して履いてみると……なんとか女の子の股の感じになった!
これならなんとかなるとひと安心し、「お母さん、ご飯まだー?」と言いながら1階のリビングに降りた。
食事中、娘の変化を感じ取った母親が「夢ちゃん、学校でなんかあった?」と尋ねてきた。お母さんの勘はすごい。何かを感じ取るセンサーでもあるのだろうかと思いながら、夢佳はその場を繕う言葉を必死に考えた。
「今日ね、水泳の練習をしてたら英語の先生が急に落っこちてきて、頭突きされたの! あまりの痛さに溺れそうになったんだよね!」
夢佳が母に頭を向けると、母は髪をさすりながら「タンコブできてるじゃない! 先生に抗議しないと!」と、絵に描いたようにプンプン怒っていた。改めて、母に愛されていると感じた瞬間だった。
大好物のさつまいもの天ぷらを平らげ、お風呂に入るため洗面所に入った。
鏡に映った自分の姿に愕然とする。股間の変なもの。キモい! とにかくキモい! これをつけて歩いている男の子って気の毒だな、と本気で思った。
夢佳は面白がって右に左に腰を振ってみた。太ももに当たってペチペチと音が鳴る。面白くなって何度もやっていると、外から母の声が飛んできた。
「何を手拍子叩いてるの! 早くお風呂に入りなさい!」
怒られて慌ててお風呂に入った。いつものようにショートカットの髪を洗い、平均的な大きさの胸を洗う。そして、やっぱりアレを見てギョッとした。
先生のアレはダラッと垂れて、私の体にぶら下がっている。マジでキモい気持ちを抑えつつ、持ち上げて見るのも嫌だったので、ボディソープを思いっきり泡立てて見えないようにして洗った。
グニュグニュしたキモい感触を我慢しながら、先生の言われた通りにスティックを持って、少し被った皮をずるんと剥き、ボディソープの原液で先っぽを軽く洗った。
とたん、今まで味わったことのない激痛が走った! ボディスクープがしみたのだ。どうしたらいいかわからないままシャワーで洗い流すと、なんとか痛みは落ち着いてホッとした。泡が流れるとアレが露わになり、再び気持ち悪くなる。できるだけ見ないように足を洗い、湯船に浸かろうとした瞬間、足より先にアレがお湯につかり、その熱さに驚いた。
「あっつい!」
夢佳はまた新しい未知の感覚を味わいながら、ゆっくりと湯船に浸かった。
(女の子に戻りたい……!)
こんなキモいもの、マジでいらない! と心の中で嘆きながら風呂を出た。
洗面所で博に買ってもらった下着をつけ、パジャマに着替えて自分の部屋のベッドに横たわる。スマホで「元に戻る方法」を検索しているうちに、いつの間にか眠っていた。
翌朝の異変と登校
翌朝、今までにない異常な感覚で目が覚めた。
股の間がパンパンに膨れ上がり、少しヒリヒリとした痛みが走っている。驚いた夢佳は思わずスマホを手に取り、慌てて
博にLINEを送った。
『先生のアレ大変事になってる!
腫れ上がって、痛みがあるだけど
まるで日本語を覚えたての外国人のような誤字脱字に気が付かないまま送信した。
すると、すぐに先生から返信が来た。
『トイレで手で便器に無理やり押し込んでオシッコしたら落ち着くよ』
夢佳はガニ股のまま階段を駆け降り、1階のトイレに滑り込んだ。
見ると、先生のアレはいつもより大きく硬くなり、皮も剥けて先っちょが砂ずりのような形になっていた。先生の指示通り、痛みを抑えながら腰を浮かせて無理やり用を足すと、スルスルと小さくなっていき、夢佳は胸を撫でおろした。
(男の人って大変……毎朝こんな感じなの!? 早く元に戻りたいよ……)
朝食を済ませ、昨日のうちに準備しておいた「養生テープ+サポーター」で股間をがっちりとガードし、制服に身を包んだ。歩くたびに股間に妙な圧着感があるものの、見た目には完全にいつもの女子高生だ。
家を出て駅へ向かい、満員電車に揺られる。いつもなら何も気にしない乗客との接触も、今朝ばかりはヒヤヒヤものだった。もし誰かの体にこのガードした部分が当たったらバレるんじゃないか——そんなスリルに汗をかきながら、なんとか学校最寄りの駅に到着した。
通学路を歩きながら校門をくぐると、すれ違う男子生徒たちの股間に嫌でも目が向いてしまう。
(あいつらも全員、あんなキモいものをぶら下げて歩いてるんだ……)
なんだか不思議な優越感と呆れが混ざったような気分で校舎に入り、下駄箱で靴を履き替えた。朝のホームルームが終われば、いよいよ放課後は恐怖の部活動だ。
バッグの中にある競泳用水着の感触を確かめながら、夢佳はプールの方角を見つめ、「よし……」と小さく気合を入れた。




