お家に帰ってドキドキ!
自宅に帰って、彼女に無いのが見つからないないかドキドキの博のお話
「ただいまぁ」
変化を真弓に悟られないよう、いつもの口調で声をかけた。
「おかえり、今日遅かったね。晩御飯できてるよ! 先にお風呂入る?」
「うん、先にお風呂に入るよ!」
とにかく自分のあそこを確認したくて、真弓に悟られないようきちんと着替えを抱え、真っ直ぐ風呂場へ向かった。
「いつも着替えなんて持たないのに。いつもスッポンポンで出てくるのに珍しいね!」
やばい! いつもは面白半分でアレを真弓に見せつけながら出てくるのが日課になっていたので、何か疑われたみたいだ。僕が鈍いのか、女の感が鋭いのか……少しビクビクしながらお風呂場へ向かった。
いつものようにシャワーを浴びる。頭、身体と洗っていく。いつもなら真弓のために清潔にしておかないという思いからアレをゆっくり丁寧に洗っていたが、今日はアレがない。ナイロンタオルがスルッと股間を通りすぎた。マジで虚しい! 引っかかりがないのだ。
女ってこんな感じなのか――そう思い、普段は座らない椅子に腰を下ろした。夢佳に言われた通り股を開き、丁寧にボディソープを泡立てて洗った。
ああ! マジでない!
僕の自慢の武器が跡形もない! すっかり姿を消し、割れて穴が空いていた。何度も虚しさが押し寄せてくる。
今自分についている、元は夢佳のものだったアレをまじまじと観察する。真弓で見慣れているとはいえ、自分についているとなると全く感覚が違う。散々僕ので鍛えられた真弓のものと違って、おそらくまだ使われていない新品だろう夢佳のアレは、ピンク色でどこかかわいらしい感じがした。
いつか元に戻った時のことを考え、決して穢してはいけないと思い、そっとシャワーで汚れを流した。
風呂から出ると、「えらく長湯だったね! 私、お腹すかせて待ってたのに!」と真弓に怒られた。
「ごめん、待たせて」
そう謝って、夕食が始まる。真弓に悟られないよう、必死に会話を組み立てた。
「今日はすごく疲れたよ。水泳部顧問の副担任・宮本先生とさ、クラスの運営方法で揉めて軽いいざこざになったんだ。でさ、宮本先生にプールへ突き飛ばされて、そこで泳いでいた生徒の頭とぶつかっちゃってさ。頭にタンコブができてすごく痛かったんだよ!」
頭を真弓の方へ向けると、「大丈夫? まだ腫れてんじゃん」と優しく撫でてくれた。
「あ! どおりで今朝と違う服で帰ってきたんだ!」
……怖! そこまで観察してんだ。
「ところでさ、なんでいつもならトランクスなのに、今日はブリーフなの? アレの締め付け感が嫌いって言ってたのに」
真弓の勘ぐりモードが丸出しだ。怖すぎる!
「いやさ、今日プールに突き飛ばされて申し訳ないと思った宮本先生が着替えを持ってきてくれてさ。先生の新品のブリーフをもらったんだよ。それが意外と良くて、帰りにモールで買ってきたから少し遅くなったんだ」
必死に苦しい言い訳をする僕。
「ふ〜ん、そうなんだ。大変だったね」
気のない返事をする真弓。内心ドキドキと焦りでいっぱいにしながら、味のしない食事を終えた。
後片付けを終えて、ほぼ毎晩のようにしていた「夜の営み」をどう誤魔化そうかと考えた。食後のお茶を飲みながら切り出す。
「ああ、今日は宮本先生と揉めて本当に疲れたよ。先に寝てもいいかな?」
「え? 今日は無し?」
「ごめん、今日はマジで疲れてるんだ」
そう言ってその場をそそくさと離れ、寝室に向かった。ベッドに寝転がってスマホを眺めていると、真弓が横に寝そべってきた。
「今日、何かあったでしょ? 宮本先生のことだけじゃないよね」
心がゾワッとした。なんでこんなに勘が鋭いのか。盗聴器か監視カメラでもつけられているんじゃないかと思うくらい突っ込んでくる。
「大好きな博が浮気したら許さないからね! その時は、博の大事なものをちょん切ってやるから!」
そう言ってアレのあたりを触ろうとしてきたので、バレる!と思い思わず体を背けた。
「う、浮気なんかするもんか! 僕のアレは真弓専用だから!」
ドキドキしながらぎゅっと抱きしめて誤魔化した。真弓は少し落ち着いたらしく、リビングの方へ戻っていった。
……真弓の言う通り、もう浮気すらできない。アレをちょん切られるどころか、いまの僕にはそのアレすらついていないのだから。泣きたくなってくる。
◇
朝、いつもと違う感覚で目が覚めた。
普段なら博のアレが「おはよ! おはよ!」と叫んでいるくらい元気で、痛いくらい立っていたのに、今朝はただの「尿意」だけの目覚めだった。
ああ、マジでアレがない……!
なくなってみて、初めてあの感覚が懐かしくなる。ないとこんな感じの目覚めなのか。年をとったらこんな風になるのだろうかと思いながら、かつてアレがあったあたりを手で探った。やっぱり、右手がスルッと空を切った。僕の大事なものは本当にないのだと悲しくなり、泣きそうになる。
その時、スマホがブーブーとなった、
夢佳からのLINEだった、
先生のアレ大変事になってる!
腫れ上がって、痛みがあるだけど
そう、初めての朝立ちに驚いた夢佳からのLINE、こっちは、朝立ちがなくてしょげてるのにと思いながら、
手で押さえて、無理矢理便器に押し込んで、用を足したら落ち着くよ!と返事した、改めて自分のぺったんこになった、
股間を眺めて愕然とした。
いつものように便座に座って用を足す。
でも違っていたのは、元気な暴れん坊を無理やり手で押し込む必要もなく、ただ何もせず、いつもと違う場所から出ていくオシッコの感覚。
――ああ、本当に女になってしまったんだ。
少し悲しくなりながら、シャーッと普段はしない音を便器に響かせた。今まで尿が当たったことのない場所から鳴る音が、ただ虚しく響くだけだった。
夢佳に教えられた通り、濡れた箇所をペーパーで優しく拭いてトイレを出た。感情まで女の子になってしまったみたいに、グズグズと泣きながら。
どうしたら元に戻れるんだろう……。
そんな不安と焦りを抱えたまま、僕はスマホを握りしめた。
自分の体と引き換えに、僕の「自慢の武器」を持って行った元凶――夢佳。
彼女がこの家にやってくるまで、あとどれくらいだろうか。
僕は涙を拭い、一刻も早く元に戻る方法を考えた。




