第78話 戦闘回避
グレイウッド。
中央区画。
四人は歩いている。
並んで。
同じ方向へ。
だが。
距離は微妙にある。
完全な信頼ではない。
完全な敵対でもない。
中間。
曖昧な状態。
それでも。
さっきまでの緊張はない。
戦闘は起きていない。
それだけで。
十分な変化。
勇者が周囲を見る。
改めて。
都市。
人。
生活。
すべてが。
整っている。
不自然なくらい。
いや。
自然すぎる。
これが。
“悪役”の作ったもの?
どうしても。
結びつかない。
その違和感が。
さらに強くなる。
やがて。
勇者が口を開く。
「……一つ聞いていいか」
前を歩くレオナに。
問いかける。
レオナは振り返らない。
そのまま答える。
「いいわ」
短く。
許可。
勇者は少し迷う。
だが。
聞く。
「もし俺が……」
言葉を選ぶ。
慎重に。
「ここで戦うって言ったら、どうする?」
本質的な問い。
可能性の確認。
セラの視線が動く。
リリアも反応する。
空気が少しだけ張る。
レオナは止まらない。
歩きながら。
そのまま答える。
「止めるわ」
即答。
迷いなし。
勇者が少し驚く。
「どうやって?」
当然の疑問。
レオナはわずかに首を傾ける。
そして。
言う。
「合理的に」
それだけ。
具体性がない。
だが。
逆に。
確信がある。
自分の中で。
完全に。
方法があるという確信。
勇者は少し黙る。
想像する。
もし。
ここで戦ったら。
この都市で。
この人たち相手に。
結果。
読めない。
いや。
むしろ。
負ける可能性の方が高い。
理由は分からない。
だが。
そう感じる。
そして。
もう一つ。
そもそも。
戦う理由がない。
それが一番大きい。
勇者は小さく息を吐く。
「……やめておく」
結論。
今は。
戦わない。
その選択。
セラがわずかに安堵する。
リリアも肩の力を抜く。
レオナは変わらない。
当然の結果。
そう判断している。
「賢明ね」
一言。
評価。
勇者が苦笑する。
「褒められてるのか分からないな」
本音。
少しだけ空気が緩む。
だが。
すぐに戻る。
レオナが言う。
「戦闘は非効率よ」
淡々と。
事実として。
「得られる情報が少ない」
続ける。
戦うことで分かることは限られる。
だが。
失うものは多い。
時間。
人員。
資源。
すべて無駄。
「今必要なのは情報」
結論。
シンプル。
勇者が頷く。
納得できる。
理屈として。
感情ではなく。
合理。
それが。
この少女の判断基準。
リリアも口を開く。
少しだけ迷いながら。
「……話せば、分かることもあると思う」
控えめに。
だが。
確かに同意。
神の命令。
それが絶対じゃないと。
もう知っている。
だからこそ。
別の答えを探したい。
勇者は二人を見る。
そして。
最後にレオナを見る。
この三人。
敵ではない。
少なくとも。
今は。
そう判断する。
「……分かった」
もう一度。
確認するように。
「まずは情報共有だな」
言葉にする。
レオナは頷く。
「ええ」
短く。
それで十分。
方針は決まった。
戦わない。
調べる。
理解する。
それが。
今の最適解。
やがて。
建物が見えてくる。
大きい。
他よりも。
石造り。
重厚。
だが。
新しい。
整っている。
入口の上に刻まれた文字。
“図書館”。
勇者がそれを見る。
少し驚く。
「こんなものまであるのか……」
本音。
王都よりも整っている。
知識の集積。
それがここにある。
レオナが言う。
「答えがあるとは限らない」
前提。
だが。
続ける。
「可能性は高い」
合理的判断。
だから来た。
扉の前で止まる。
重い扉。
だが。
簡単に開く。
セラが先に手をかける。
ゆっくりと押す。
軋む音。
中が見える。
本棚。
並ぶ。
奥まで。
無数に。
知識の塊。
未知の領域。
勇者が一歩踏み出す。
中へ。
続いて。
レオナ。
リリア。
セラ。
四人が入る。
扉が閉まる。
外の音が遮断される。
静寂。
完全な。
ここから。
真実を探す。
戦いではなく。
理解で。
物語が動く。




