堕天の少女に抱かれ
カオスによる試練、それは邪眼の移植であった。役に立ちたいというルシェルの覚悟に胸を打たれた名取は、迷うことなく自身が試練を受けることを決意した。
かつて五体様によって邪眼を授かった名取は、再び邪眼を手にするために、死と隣り合わせの命懸けの試練に挑むのであった。
――思い出す、あの時の記憶。
カオスが名取一行に課した試練を受ける名取は、カオスにより名取にとって3つ目の邪眼をその身に宿す直前に、脳内にフラッシュバックする少年時代の記憶。
五体様により2つの邪眼を埋め込まれたあの時の死にたいと思えるほどの激痛と苦しみ、そして恐怖を思い出した。
額から冷や汗が溢れて止まらない、呼吸も荒くなっきた。目の焦点が合わない。
名取は試練を前にして身体中の全細胞が本能的に拒絶反応を示し、その場にとどまることを強く拒絶していた。
名取はそんな本能からの警告を全力で無視し、カオスに向けて目を見開く。
カオスはその覚悟を認めると右目を閉じないように左手の指で押さえ、黄色に光る右手の指先を右手に押し込んだ。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
名取の絶叫と共にまるで噴水のように右目から噴き出る血液が返り血となってカオスのローブに飛び散った。
カオスは興奮して狂気的な笑みを浮かべ、押し込んだ右手で名取の右目を抉っている。
やがてその指先の光が染み込むように名取右目へと移っていくと、カオスは右手を抜き取り、すぐに左手の指先が黄色く光り、逆に名取の左目にも同様、指先を押し込み、名取の左目を抉った。
同じ様に名取の痛々しい悲鳴が神殿中に響き、その光景にルシェルやギル、デスは見ていられず顔を背ける。
新橋やコンフュージョン、ナイトはただその光景を真剣に眺めていた。
「そうだ! その表情だ! もっと見せろ! 苦痛に叫べ! 死を感じて生に執着しろ!」
永遠にも感じる苦痛の時間、長きに渡る絶叫に喉が擦り切れ、声も枯れて口から吐血する。
名取は歯を食いしばり、目を見開いて全身に力を入れて苦痛に耐える。
今も思い出す、あまりの激痛に死を懇願したあの日の記憶。だが今回は違う。死ぬわけにはいかない。人々を守るため、ルシェルを外の世界に出してあげるために死ぬことは許されない。必ず生きて邪眼を我がものとしなければならなかった。
「こんな所で……死ねるかぁ!!」
名取は拳をもう一度握り直し、血を吐きながら掠れた声で叫んだ。
血液に赤黒く染まった右目が黄色く輝きを放ち、やがて右目に集中するように光が集まっていく。
カオスは何かに気づくと左目に挿し込んでいた右手を抜き、名取を突き飛ばす。
突き飛ばされた名取の右目からは光線のようなものが一直線に放たれ、神殿の壁に大きな風穴を開けた。
名取はそのまま仰向けに倒れる。
新橋やコンフュージョンは注意深く名取の様子を確認する。
名取の目からは煙のようなものが立ち込めており、気を失っているようだった。
だがそれも束の間、名取はゆっくりと起き上がる。
フラフラと足元がおぼつかない様子で立っている。そんな名取の身体からは邪悪な気配が漏れ出すような形で溢れ出し始める。
その瞬間、コンフュージョンは臨戦態勢に入り、名取の様子を見ていたカオスが残念そうな顔をした。
「少しは期待できるかと思ったが、少し買いかぶり過ぎたか……。飲まれおったな」
カオスは「興冷めだ」と踵を返し、闇の中に姿を消した。
名取の身体から湧き出る邪悪な気配が名取の足元を埋め尽くすと、コンフュージョンが間髪入れずにハルバードを名取に向けて振り下ろす。
しかしコンフュージョンの一撃を名取は後方へ飛び躱した。
名取は猫背で両腕をだらりと垂れ下げて下を向いている。
「……セ……コセ……」
小さい声でブツブツと呟く名取はゆっくりと顔を上げた。その顔は血に塗れ、目には名取の持つ邪眼が全て顕現し、3つの瞳がギョロギョロと動き回っている。
――その姿はもはや《《人》》ではなく《《怪物》》であった。
「臓物ヲヨコセェェ!!」
名取は獣のように不規則な動きから飛び上がり、コンフュージョンに襲い掛かる。
コンフュージョンはすかさずハルバードを振るい応戦する。
コンフュージョンの攻撃はハルバードという大きな武器の割には緩急のある攻撃やフェイントなども交え、相手を幻惑させるような戦闘スタイルで人を超越したパワーとスピードで圧倒する――かにも思えた。
しかし名取はその攻撃を全て躱すどころか、まるで全ての行動を読んでいるかのように先読んだ行動でコンフュージョンと互角以上の戦いを繰り広げている。
「こりゃ厄介だねぇ。千里眼と先見眼が同時に発言しているせいで魔力や力の流れが可視化されることで未来視の精度が段違いに上がっている。彼は今、ほぼ100%の精度で未来を見ている。コンフュージョンでさえ攻撃を当てるのは難しいだろうね」
ナイトは指で輪っかを作り、輪っか越しに名取を観察しながらそう言う。
名取の変化は千里眼と先見眼による防御面だけではない。名取は邪悪なオーラ、「邪気」を纏った手でコンフュージョンを引っ掻くと、コンフュージョンは紙一重でそれを躱すが、少し鎧に掠ったのか、鎧に傷がついた。
「それだけじゃない、僕達闇の住人の力を持ってしても掠った程度じゃ傷1つつかないコンフュージョンの鎧に簡単に傷をつけた。彼はもう1つの邪眼によって攻撃性も非常に上がっている」
ナイトは眉間に皺を寄せ、「これは厄介だな」と呟いた。
「カオスが彼に埋め込んだ邪眼は恐らく『殲滅眼』だ。名の通り対象を皆殺し、壊滅させるまで破壊衝動にその身を焦がし身体能力や魔力を爆発的に底上げする邪眼だ。世界中に存在する邪眼の中で最も凶悪な邪眼の1つだよ」
ナイトは邪眼に関して解説すると、新橋に1つ頼みごとをした。
「コンフュージョンだけでは彼に勝つことは少し難しいかもしれない。彼は今、神格にも届き得る力を持っている。だが彼を放置しては君達がここを出ることは叶わないだろう。そこで君、コンフュージョンと共に力を合わせて彼を無力化することは出来そうかい? 生憎僕はそこまで戦闘が得意じゃなくてさ、それでも小さなお姫様達を守ることくらいなら出来るからさ。彼を止められるのはコンフュージョンと君しかいない、やれるかい?」
新橋は「はぁ……」とため息を吐くと、ナイトの提案を受けた。コンフュージョンと交戦する名取に向けてナイフを投げ、名取の注意を引く。
名取はその誘いに乗り、狙いを新橋に変えて襲い掛かる。
新橋はジャケットを脱ぎ、シャツのネクタイを外し投げ捨てる。そして新橋は、ポケットから小さな玉を取り出して床に投げつけた。
玉は床に叩きつけられると、そこから煙が湧き出て、一気に霧のような白い煙が視界を包んでいく。
目眩ましのつもりであろうが名取の千里眼を前にしては無意味というものだ。
名取は魔力の流れから新橋の位置を特定し、そこに魔力を込めた右手を突き出した。
突き出された右手はその影の中心を貫き、名取は恍惚とした表情を見せる。
「ニヒヒ……心臓、ヒトツキ! ヒヒヒヒ!!」
興奮した様子の名取は煙が晴れて心臓を貫いているであろう右手の先を見たとき、名取は固まった。
その右手は新橋を貫いてなどいなかった。
新橋の胸を貫いたと思っていた名取の右手が貫いていたのは、丸太であった。
何故こんなところに丸太が? と全員が理解出来ず固まった。
すると名取は先見眼の働く紫色の瞳が輝き、何かに気づいたのかその場を飛び退く。
名取のいた場所に素早く黒い影が忍び寄り、刀のような刃物による斬撃が繰り出されるが、名取はそれを間一髪躱した。
「やはりそう簡単には行かないか」
刃物を振るった黒い影の姿が顕になると、それは忍装束に身を包み、額に鉢金を巻いた新橋が小太刀を握っていた。
「伊賀流忍法 変わり身の術」
頭髪と同じ紺色の忍装束の新橋は、名取の目にも違和感を感じさせる。
その違和感はコンフュージョンやナイトも同様に感じていた。
――新橋からは、魔力の流れはおろか、魔力そのものすら一切感じられなかった。
忍装束によって口元を覆い隠した新橋は、普段より鋭い目つきで小太刀を構える。
「対象を敵対生物、「名取久代と認定。これより交戦を開始する」
新橋は右足を深く踏み込むと凄まじい速度で名取の懐に入り込み、小太刀による斬撃を繰り出す。
千里眼と先見眼の併用で動きを読んでいた名取は後退してそれを躱すが、それをさらに読んでか目にもとまらぬ速さでさらに距離を詰め、名取の鳩尾に蹴りを入れる。
新橋の先の行動など名取の目に映っているはずだがそれでも新橋の攻撃が命中した。コンフュージョンでさえ当てることが出来なかっ名取に攻撃を当てた新橋にナイトやコンフュージョン、そして攻撃された名取でさえ信じられないという表情を見せた。
「ナゼ……? ナゼダ? ミエル……ハンノウ……ガ……デキナカッタ?」
名取は何度も鳩尾と新橋を交互に見る。そしてギリッと歯を軋ませると殲滅眼を光らせると全身から紫色の邪気を身に纏わせ両手の先が大きな爪のような形をつくる。名取は不規則に飛び回りながら大きな爪を振り下ろす。
新橋は胸の前で両手を高速で動かしながら後退し、攻撃を回避するも、名取はすかさず追撃する。単純な身体能力では殲滅眼によって強化された名取の方が上であり、一気に距離を詰め右手が新橋の胸の中心に真っ直ぐ伸びていく。
「伊賀流忍法 霧隠」
胸を貫かれる瞬間、新橋の体は霧のようにフワッと分散し、瞬く間に名取の周囲に立ち込める。
霧の中では名取の周りに4人ほど新橋が現れ、名取を囲む。
名取はどれが本物か見分けようと千里眼に意識を集中するが全てに魔力が感じられず、どれが本物なのか判別できなかった。
「ドレダ! ドレガホンモノダ!?」
名取が困惑していると、分身かも分からない新橋達が一斉に襲い掛かる。
名取は先見眼を使い、未来で実体化した攻撃をしてきた新橋が本物だろうと未来を覗き込んだ。しかしどの未来でも、どの新橋からでも攻撃を受けている。つまりそれは《《全て》》が《《偽物》》であり《《本物》》であることを意味していた。
更に新橋の動きは素早く、長々と未来視で未来を見ている時間など与えてくれない。
名取は咄嗟で飛び上がり名取の攻撃を避け、霧に包まれている範囲からも脱出した。
名取が安心したのも束の間、空中で胸ぐらを掴まれ、背負われる形で地面に真っ逆さまに落ちる。
名取を掴んだ主は、他でもない新橋だった。
その時初めて名取は下の4人の新橋は全て霧隠によって作られた幻影であり、本命は5人目にいたことに気が付いた。しかし気付いた頃にはもう遅かった。
「伊賀流忍体術 奈落落とし」
地面に対象垂直に落ちる2人は名取を下敷きにして地面と激突した。
頭部から首にかけて落下の衝撃をもろに受けた名取は、肺に強い衝撃を受け、呼吸が困難になり悶絶する。
すかさず新橋はどこからか縄を取り出し名取をグルグル巻きに縛り付け、床に組み伏せた。
「伊賀流忍体術 蜷局縛」
「あれ! ギルがやられたやつだ!」
目の前で見事にやって見せた拘束技にギルが興奮した様子でピョンピョンと跳ね、指をさして喜んでいる。
うまく抵抗もできず、唸ることしか出来ない名取に新橋は黙って頭部を押さえつける。
新橋による圧巻の対人技にはコンフュージョンやナイトも感心せざるを得なかった。
「多彩かつ変則的な攻撃で相手に未来視の隙を与えず、迅速な判断と術で相手を圧倒した。まさか無詠唱で魔術を使うとは……いや、その秘密は術を使う前の奇怪な《《手の動き》》だ。奴の手の動きには法則性がある。奴は手の動きに魔力を結び付け、詠唱を端折っているのだろう。だが1つでも間違えれば魔術は発動しない、奴は相当な鍛錬を積み確実なものにしたのであろう。力を隠しているとは気づいておったがここまでとはな……」
「それだけじゃない、人間であれば到底埋めることのできない身体能力の差を大きく感じさせないあの速度……恐らく《《自分自身に術》》をかけているのだろうね。だけど単純な身体能力の底上げでは到底届かない。だから彼は力の流れ、伝達の速さ、つまりは《《連動性》》に集中する事で俊敏さに全てを注ぎ込んだような速さを手に入れているんだ。それならば力で敵わずとも機動力という一点においては僕達にも劣らないだろう。恐らく身体能力においては《《人類の限界》》に最も近い存在とも言えるだろうね」
闇の住人達が絶賛する中、名取は唸ることもやめ、大人しくなる。新橋はそれに異変を感じると名取の様子を伺う。
どうやら名取は呼吸困難によって気を失ったようだ。
「ひとまず安心だ。だが名取が目を覚ました時、正気を取り戻しているとも限らん、その時はやむを得ない。俺とコンフュージョンで名取の首を落とす。いいな?」
新橋はようやく手を離し、ルシェル達に向かってそう話す。
ルシェルは一瞬安堵したようだが、後の言葉に少し心苦しそうな表情に戻る。
「名取……大丈夫なのかな……」
ルシェルは不安を胸に名取をじっと見つめていた。
◇ ◆ ◇ ◆
――ここは何処だ?
――俺は一体何を?
――息苦しい、痛い、身体が動かない。
暗い闇の中、名取は指先すら動かすことも叶わず、ただ虚空を眺めていた。
「俺……何してたんだっけ? どうして体が動かないんだ? 新橋さんは? ルシェル、ギルとデスも……一体どうなったんだ?」
自身の身に起こったことを必死に思い出そうとするも上手く思い出せない。
ただ一つ、感じるのは身体中を駆け巡るように流れる邪悪な心であった。
苦痛、恐怖、絶望、その全てを本能的に欲している自分がいる。
やがて目の前にもう一人の名取が姿を現す。
その姿は全身に邪悪な気配を漂わせ、目には3つの邪眼が同時に現れギョロギョロと動き回っている。
「な、なんだお前は!? 俺……なのか? お前! 一体何者だ!?」
思わずその邪悪で醜い姿に強い嫌悪感を覚える。
目の前のもう一人の名取は、ニヤリと笑うと名取を指差し話し始めた。
「俺ハオ前ダ。邪眼ノ力ニソノ身ヲ任セ、俺ガ本体トナルノダ。オ前ハ用済ミ。サッサト俺ニソノ身体ヲ譲リ闇ノ中デ息絶エルガイイ」
もう一人の名取はそう言うとその体から濁流のように邪気が流れ出し、名取はそれに飲まれてしまう。邪気の中で抵抗する事もできぬまま、名取は邪気の深淵へと沈んでいく。
「クソ! 俺は……何もできないままこのまま死ぬのか? クソ! クソォ!!」
名取の思いも虚しく、名取は闇の奥底へと消えていくのであった。
◇ ◆ ◇ ◆
「あれ? ここは?」
ルシェルが心配そうに見つめる中、名取が目を覚ます。気を失ってから少し時間がたったのだろう、場所は変わっていないがカオスが玉座に戻ってきている。
目を覚ました名取にルシェルが駆け寄ろうとすると、新橋がそれを制止する。
新橋は用心深く名取に対して質問した。
「お前は今、なぜ縛られているかわかるか?」
その質問に対し名取は首を横に振る。
「あの……俺……どうしてこうなってるんでしたっけ? すみません、縛られてるの苦しいんで解いてもらえないですか?」
名取の様子を見て、いつも通りの名取に戻っているように見えた新橋は、名取の拘束を解こうと縄に手をかけようとしたその時――
「カカッタナ! シネェェェ!!」
突発的に邪気を解放した名取は縄を一瞬で引きちぎり、新橋の喉に噛み付こうと飛びかかった。新橋もあまりの速さに反応しても単純なスピードで勝てず、避けられない。
その瞬間、名取は横からコンフュージョンの拳によって殴り飛ばされた。
間一髪新橋はコンフュージョンに救われ、2人は臨戦態勢に入る。
「気を抜くな愚か者が」
「気は抜いたつもりは無かったが、あれ程の速さがあるとはな。恩に着る」
「グギギギ……コロス……! コロス……!! グチャグチャノォ! グチョグチョニィィ!!」
名取は全身を覆う程の邪気に身を包み、もはや人としての原型を留めない程に変貌し、邪悪な獣と化した。
新橋はあまりの邪気の量に、もはや人の手に負えるものでは無いことを直感する。
その事には当然コンフュージョンも気づいており、コンフュージョンは舌打ちをしたあと、新橋の前に出た。
「お前もわかっているはずだ。コイツはもうお前の手に負えるものではない。いい加減我慢の限界だ。下がっていろ、足手まといは巻き添えを喰らうだけだ」
怒りの表情を露わにするコンフュージョンは神殿全体を覆うほどの邪気を放ち、新橋は巻き添えを喰らう前にナイトの後ろへ退いた。
「支配的混乱《dominant confusion》」
コンフュージョンと名取を囲う領域は暗い緑の密室空間のようになっており、視界が歪み上下左右の感覚でさえ曖昧になってしまう。
「グギギギ……ギ? ギィィ?」
名取は領域内でまともに動けず混乱していた。フラフラと目が回るような感覚とままならない平衡感覚に成す術もなかった。
コンフュージョンは容赦なくハルバードで名取を斬りつける。左肩から斜めにざっくりと斬られた名取は絶叫しながら床を転がる。
そして床を転がりまわったことで拍車をかけるように目が回り、訳もわからず混乱の渦から抜けられない。
「虫けら如きが調子付きおって……我と渡り合おうなどと思い上がりも甚だしい。我の手を煩わせおって、死に値するぞ」
コンフュージョンが瀕死の名取にとどめを刺そうとハルバードを構え、振り下ろそうとしたその瞬間――
「ダメ!!!」
何者かが領域内に侵入し大声で叫んだ。
その声にコンフュージョンの手が止まり、既のところで名取が斬られることは無かった。
その声の主はルシェルだった。
「お願い! 殺さないで! 名取に酷いことしないでよ! バカぁ!!」
ルシェルは目にいっぱいの涙を浮かべてコンフュージョンに向けて怒鳴った。
突如現れたルシェルに怒鳴られ、コンフュージョンは表情こそ変えないものの理解が追いついていないようだった。
「名取は死なせちゃダメなの! 傷つけるのもダメ! 名取はまだ邪眼に負けないように必死に戦ってるの。だからまだあきらめちゃダメ、ルシェルは名取を信じてる。約束したの! 名取は邪眼に負けないって、一緒に外に出るって!」
ルシェルは領域内にも関わらず真っ直ぐ名取に歩いていく。
コンフュージョンはそれを止めようとしたがルシェルの異変に気付き、動きを止める。
ルシェルの背からはルシェルの身長ほどの天使の羽のような翼が姿を現す。その翼は黒く、決して神聖さは感じられないが、それでも目を奪われるような美しさを宿していた。
ルシェルは名取の前にしゃがむと翼と両腕を大きく広げる。
名取はルシェルに気付くとルシェルに飛び付き、右肩に噛み付く。
ルシェルは抵抗もせず、優しく抱擁し、翼は名取を優しく包み込んだ。
「グゥゥ……グゥゥ……!!」
「よしよし、辛いね。苦しいね。大丈夫だよ、ルシェルは信じてる。名取は負けない。必ず戻ってくるよね」
まるで我が子のように優しく頭を撫でて名取をなだめるルシェルに、名取は少しずつ噛み付いていた右肩から口を離し、邪眼の輝きも少しずつなくなっていく。
やがて身体から溢れ出していた邪気もなくなり、同時に顕現していた邪眼も姿を消し、瞳も普段の色へと変わっていく。
名取はゆっくりと目を閉じ身体の力を抜きルシェルにその身を委ねた。
ルシェルは胸の中で名取を抱き、優しく頭を撫で続けた。
ミニコーナー企画!
「あのコをどう思ってる? 直接聞いてみた!」
はいは〜い司会・進行を務めるよ、特異現象捜査部本部長 這月ニアだよ〜。
今回はね、登場人物であるあのコはあのコの事をどう思っているのか、お題に沿って直接聞いてみる企画だよ。
今回のゲストはこの子!
File3 「失楽園の少女」よりナイトだよ〜ん♪
今回は現在進行中シナリオから闇の住人、ナイトくんに来てもらったよ。
シナリオ中あんまり見せ場という見せ場も無いから退屈なんだよね〜。小さい子の子守役というかなんかそんな感じの役回りだよね〜。そういやディスコードも似たような立ち位置だったかな?その点コンフュージョンは良いよね〜やること多くてさ? おっとあまり話しすぎると尺がもたねぇや。さて本題入ろうか、今日のテーマは何!
「闇の住人同士の関係性ってどうなんですか?」
なるほどね、確かに気になる子もいるのかな? じゃあ今回は僕視点の闇の住人達の関係性について語っていこうか。
まずはディスコードだね。彼は"不和"を司る神なだけあって基本誰からも好かれていないよ。良く言えば自由なんだけど悪く言えば話が全く通じず自己中心的だから嫌われ傾向にあるよ。僕もあまり得意じゃないかな。でも彼は能天気だから気にしてないみたい。
続いてコンフュージョンかな。コンフュージョンはカオスからはあまり好かれてないみたいだけど僕は割と彼女は良く思っているよ。
彼女って結構素直じゃないけど優しいよね。いわゆるツンデレってやつ? ただ短気で闇の住人の中でもかなりの武闘派だから怒らせるとおっかないよね。
最後にカオスだけどカオスは少し特殊でね。彼は闇の住人の中でもボスのような扱いで基本誰とも関わらない……っていうかコンフュージョンくらいじゃないと彼の居る神殿に近づくことさえ叶わないんだ。でもたまに関わることもあるけど元よりお互いに干渉し合わないっていうのもあるけどカオスもそこまで悪い奴とも思っていないかな。
とまぁこんなものかな? どうだい? 大体闇の住人同士の関係性についてわかったかな? ん? 僕は周りからどう思われているかって? 僕はそれなりに周りとは上手くやってる方だとは思っているけどねぇ……まぁ読者諸君のご想像にお任せしようかな? というわけで僕からは以上だよ。
うん、中々テンポも良くて助かるよ。それじゃあ、今日はこの辺りにしとこうかな。ではまた次回をお楽しみに!




