混ざる魂、交わる魂
謎の異空間、「永遠の無秩序」の主である闇の住人の一人、混乱を司る闇の住人コンフュージョンの先導によってもう一人の闇の住人「カオス」の元へと進んでいく名取達一行。
その気配を追ってもう一人の闇の住人、ナイトが姿を現す。その者は名取達に興味を示し無邪気に笑うのだった。
突如現れた闇の住人の一人で夜を司るナイト。彼には敵意は無く好奇心で様子を見に来たのだと言うが、それを信じて良いのか慎重になっていると、コンフュージョンがナイトに向けていたハルバードを下ろし、フンッと顔を反らす。
コンフュージョンが矛を収めたということは信じてもよさそうと名取達も緊張が解ける。
「それでそこの同じ服着た男2人は外界の人間なのは分かるけど明らかに"普通"じゃないよね? 君達は一体何なんだい?」
ナイトの質問に難しい顔をする名取だが新橋少しう〜んと考えた後、簡潔に答えた。
「外界の人間社会では『魔術や神は存在しない』とされていて俺達はそんな中で魔術や神に関する事に従事する秘密の集団って所だな」
「なにそれ超面白いじゃん。外ではそんな認識なんだね。でもどうして陰でコソコソやってるのかな?」
「そっちの方が平和だからな。世界の至る所で神格の招来などされたら人類の滅亡など秒読みってのは想像するに容易い」
「そっか、人間は愚かだからね。感情や思想などに支配されて自らを滅ぼす下等な種族だからそっちの方が確かにいいね」
ナイトは納得するとこのまま立ち話をするのもと先に進みながら話す事を提案する。
するとコンフュージョンは刃先を再びナイトへ向ける。
「貴様が連れて行け」
「えー? 嫌だよ。それに僕は道案内は得意じゃないんだ。歩くの嫌いだし」
「それはこちらも同じだ。蛇の少女が居なければ全員切り捨てていたところだ」
「でもカオスの場所に正確に行けるのはコンフュージョンだけじゃないか。僕もディスコードもカオスの気配を頼りに進んでも、正確に彼の場所に辿り着けないんだよ?」
コンフュージョンがぐぬぬと顔をしかめるが新橋はナイトの言葉が少し引っかかった。
"カオス"という者が恐らくこの空間の主なのだろう。しかしその者の場所に正確に行くことができる者がコンフュージョン《《のみ》》という事が少々気になった。
「そのカオスとやらの場所に行けるのはコンフュージョンだけというのは一体どういうことだ?」
新橋の質問にナイトは「知りたい?」とニヤニヤした顔で両手を広げて語り始める。
「この空間を僕達闇の住人は"永遠の無秩序"と呼んでいるけどここには上下左右はおろか平衡感覚ですら存在していない。まっすぐ歩いているつもりでも実際どの方角をどう進んでいるのかなんて分からない。今頭上だと思っているものも実際本当に頭上なのかも誰も分からない。だから僕達はお互いの気配を頼りに位置を把握しているんだけどカオスの周りだけは特に気配が掴みづらくてね、僕やディスコードでさえ正確には特定できないんだ」
ナイトは残念そうにそう言った後、コンフュージョンを指差す。
「でもコンフュージョンだけは感知能力は闇の住人の中でも随一でカオスの気配を正確に感知できるしその場所に行くこともできる。 さてはディスコードはこうなることを読んでいたな? とまぁそんな感じでカオスの元へ案内出来るのはコンフュージョンだけなんだ」
「へぇ~」と感心しているとコンフュージョンがブツブツと文句を言いながら歩き出し移動を再開する。
コンフュージョンが先導し最後尾にナイトが付きカオスの居場所を目指し歩き、名取と新橋の背中で眠っていたギルとデスの目も覚めたのかパチッと目を開けナイトが「やぁ」と手を振ると「誰?」という顔を一瞬するが自分達で歩き出すとナイトの横を板挟みして歩く。
ナイトも子供が好きなのか楽しそうに歩いている。
「そういえばさ、今聞くのは野暮なのかも知れないけどなんで灰の少女がいるの? 確か君って最下層にいた筈だよね?」
後方から飛ぶ素朴な疑問、その主はナイトだった。
ルシェルが何故ここにいるのか不思議に思っているようでナイトはルシェルにここまで上がってきた事が気になっているようだ。
ルシェルは何故か……と言われると少し返答に困ると言うように悩ましい顔で振り返り、悩んだ末、自分なりに答えを捻り出した。
「外に出たいと思ったから……? パパからの出るなって言いつけをずっと守ってきたけど私も一度くらいはワガママ言いたくなった……とか?」
「なんで君がハッキリしない様子なのさ……。要するに結構軽いノリで上がってきちゃったのね? この空間も灰の少女が外に出ない為の最後の砦のような扱いだけど君の理由を聞いたらあっさり過ぎて拍子抜けしちゃったな。だったらむしろ通してあげた方が面白そうに思えるね」
ナイトはアハハと笑う……がしばらく歩いていて何か1つ気掛かりなようでナイトは時々ルシェルをチラチラと見ている。
ルシェルはチラチラと視線を送ってくるナイトに対し嫌悪感を抱き眉間に皺が寄っている。
「それともう1つ気になってたんだけどさぁ? 君、確か母親が居たよね? 母親は?」
「……知らない。ママは何処にいるか分からない」
ルシェルは俯き黙り込んでしまう。
ジョン神父が父親だとして母親の事は確かに聞いたことがなかった。
ルシェル自身も知らないようでギルとデスに聞いても母親に関する情報は出てこなかった。
「ん~なら質問を変えよう。どうして君から君の母親の気配がするんだい?」
見かねたようにナイトは右手でOKサインを作り親指と人差し指の輪っかを覗き込むようにルシェルを見ながらそう言うとルシェルはハッと顔を上げ、ナイトの方に振り返る。
「それってどういう事?」
「なんと言いますかな〜? 君の魂には別の人間の魂も混ざってるように見えるんだよね。その人間っておそらく君の母親なんじゃないかな〜ってさ」
ナイトは輪っかを覗き込んだままルシェルの胸のあたりを凝視している。
それに気づいたルシェルは少し頬を赤らめ胸を隠す。しかしナイトには無駄な抵抗だった。ナイトの目にはハッキリとルシェルの魂の形が見えていた。
それは儚き少女の魂……それに混ざる温かな母性の魂。
灯火の様に燃えるまるで2つで1つというような魂の火がルシェルの1人の身に宿っていた。
「おそらく推測するに君……母親と"同化"したね?」
ナイトの言葉に全員の頭に「?」が浮かび上がる。「同化」という言葉の意味が全く理解ができず、どの様な物かも想像もできない。某少年誌の大人気漫画の神様くらいの物しか想像ができない名取と新橋は思わず眉間に皺を寄せお互いの顔を見合わせる。
ルシェルも「同化」に心当たりがないようで同じように疑問を浮かべている。
しかしギルとデスは何か知っているのか少し驚いた表情でルシェルの方に顔を向けている。
「ギル、デス、お前達は何か知っているのか?」
名取がギルとデスに問うと2人ともうんと頷き2人は互いの腕を組んでポーズを決め打ち明ける。
「「私達、姉妹揃って同化してるんだよ(なの)!」」
ギルとデスはすでに何かと同化している。デスはともかくギルは見た目からも推測するのは容易だった。
ギルとデスによればギルは見た目から分かる通り「蛇」と同化しており、デスは透過の異能力を得意とする「異能力者」の魂と同化しているそうだ。
それぞれ蛇を操るギルと壁や天井を自由にすり抜け移動できるデスが異能力とは違い体質に近いレベルで「固有の能力」として扱える「特異能力」としてその力を持つのは同化が関係しているようで、ナイトの説明によれば同化元は同化対象が持つ異能力を「特異能力」として継承するそうで魔術師の魂などを同化対象とする場合、その者の得意とする魔術の系統を魔術として扱わずに使えるようになるのだと言う。
しかしそこで気になるのはルシェルが母親の魂と同化したとすれば母親からは一体どの様な能力を得たのか? そもそもなぜ母親と同化したのか? という点であった。
しかしその前に確認するべき事がある。
「なぁ、ルシェル。君は本当に母親と同化したのか? その様子だと心当たりが無いようにも思えるが」
「デスも気になるなの! お姉ちゃんは本当にママと同化しちゃったの?」
「……分からない。ルシェルはママと同化した記憶もなければパパからそんな話も聞いてない。ママとずっと会ってないと思ったらいきなり同化だなんて……もう、訳が分からないの……」
ルシェルは心当たりの無い同化とナイトの言う同化がもし本当ならばもう母親と会う事が出来ないという事に頭の中が渋滞しているのか頭を抱えてしまう。
新橋は少し気になることがあるのかルシェルに慎重に一つ質問をする。
「最後に母親を見たのはいつだ?」
「もうずっと見てない……多分、ルシェルがギルとデスくらいだった頃……だと思う。パパが神様のお話を私にするようになってルシェルを地下に閉じ込め始める前だったと思う」
ルシェルは頭を抱えたまま小さな声で答える。
ルシェルがギルとデスくらいの歳だと仮定すると恐らく4、5年前だろうかと推測される。
「そうか、おいギル、デスお前達が最後に母親を見たのはいつだ?」
「え? 私? 私はママを最後に見たのは〜……う〜ん、私多分すっごいちっちゃかったかも……あんまり覚えてないや。でもお姉ちゃんと同じくらい前だった気もしなくもないんだよね」
「デズもそう思うなの」
新橋はギルとデスにも同じ質問をし、ギルとデスは最後の記憶を辿っても幼かったのか記憶が曖昧なようだ。しかし時期で言えばルシェルとそう変わらないかも知れないらしい。
3人から聞き出す情報から推測すると、母親と同化している説が少しずつ現実味を帯びてくる。
あくまで憶測の域は出ないがルシェルもギルとデスも母親を最後に見た記憶の時期は同じか近いものであり、ジョン神父の変化や行動を考えると、何かしらジョン神父が関わっていることを想像するに容易かった。
「ちなみにギルとデスは"同化"をした時の記憶はあるのか?」
「記憶ならあるなの。パパに連れられて教会の礼拝堂の裏の部屋で儀式をしたなの。パパには『この力でお姉ちゃんを守ってあげて』って言われて何も分からないまま人間じゃなくなっちゃった時は驚いたなの。でも大好きなお姉ちゃんを守る為の力って言われて納得しちゃったなの」
ギルとデスは同化の儀式当時の記憶があるようで同化をしたものは前後の記憶が無くなるわけでは無いことがわかる。
だとすれば尚更ルシェルの記憶が失くなっている謎は「消えている」のでは無く「消されている」可能性が大きくなってくる。
「……おい、いつまで立ち話をしている。置いていかれたいのか」
ルシェルの母親と同化について考え込んでいると先頭のコンフュージョンが怒気を込めた声をあげる。
先程までは後方の話が終わるまでじっと待っていたのだがいい加減痺れを切らしたのか苛立ちを隠すこと無くに片足を小刻みに揺らしている。
名取達は慌ててコンフュージョンの後を追いかけ再び先を進む。
「くだらん、母親がどうだと言うのだ? そんなもの考えるだけ無駄だ。どうしても知りたくばあの胡散臭い神父の首根っこを掴んで吐かせでもすればいい」
「物騒ですが……恐らくそうなりそうな気がしますね」
コンフュージョンを先頭に後ろから挟むようにしてナイトが付いて行く形で「カオス」の元へと進み出す。
永遠の無秩序の主である闇の住人ディスコード、コンフュージョン、ナイトと最後の一人、「カオス」の元へと向かうその足取りは何処へ向かっているのか、何処を歩いているのかすら正確には分からないが毛が逆立つような本能的な恐怖心や緊張感がカオスの元へと近づいてきているということを告げていた。
ミニコーナー企画!
第5回! 「教えて! 葉月せんせー!」
は〜い皆大好き幽世のアイドル、葉月お姉さんだよ〜!
このコーナーでは葉月お姉さんがこの世界の設定や登場人物の裏設定などメタい話や分からないことに何でも答えるコーナーだよ!
さてさてぇ今回のお題はー? コレだ!
異能力と特異能力の違いってなんですか?
byるしぇる
ほほぅコレは中々面白い質問だね。正直分からないよって子もいるかもしれないしその辺りの定義も教えてあげようかな!
まずは異能力の説明からしようか!
異能力の定義としては「固有ではないもの」だね。
異能力は主に体内を流れる魔力を精神と脳神経とリンクさせる事で脳内イメージを擬似的に詠唱や念じる事で発揮される力の事を言うんだよ。
魔術や呪術は詠唱や思念を使って発揮するよね。
でも日出る国、日本では同じ理屈なのに変わった進化を遂げた異能力もあって魔力を餌にしたり媒体に宿らせたりする事で異空間から特異的存在を呼び寄せたりする事があるんだ。これが主に妖術や式神と呼ばれるものだね。
今シナリオ進行中で前回このコーナーの特別講師を務めてくれた新橋くんなんて注目してみるといいかも? 彼も魔術と同じ理屈で異能力を使うけども日本古来から伝わる面白い方法を使うから今後は要注目だね!
他には眷属を使役したりすることも異能力として扱われるよ♪
中には神話生物を使役したりも出来たりするんだけどこれも眷属クラスなら異能力に分類されるよ。
でもココ注意! 神格クラスと契約した際に得られる力は異能力に分類されないよ! そもそも神格クラスは使役なんてできないからね?
対して特異能力の定義「固有であるもの」だよ。
特異能力は全部とは言わないけど異能力と違って魔力を介さずとも使う事が出来るものもあって体質に近いレベルで自由度が高く扱えるんだ。よって詠唱や思念も必要としないね。
特異能力は「固有」という事もあって世界においても限られた人間にしか使う事が出来ないんだ。
神格と契約したり特段危ない儀式を経験したりしない限りは持つことは出来ないからね。
例外もあって少年と和真くんの使う私の死神の力は特異能力に分類されるね。あの力は「固有」とは言ったものの2人同じ力を使えるけどアレは特例なんだよね♪ ホントはあっちゃダメなんだけど……テヘっ☆
他にも式神使いの中でも最高位の「十二天将」を1人で使役する事が出来る人間も特異能力に分類されるよ。「十二天将」は神格クラスに値する存在だから複数人才能ある人間が集まってやっと一体召喚できれば……ってくらいなんだ。でも歴史上たった一人だけ「十二天将」の全てを1人で従えた最強の陰陽師がいたんだよね。「安倍晴明」っていうんだけど。
っとまぁこんな感じかな?簡単に言えば誰でもやろうと思えば出来るのが「異能力」、そもそも使える人間が限られててその人にしか使えない能力が「特異能力」って覚えるといいよ。
人の域を超えていたりあまりに強力だったり特徴はあるからわかりやすいとは思うよ?
というわけで異能力と特異能力との違いについて分かったかな? 分かった? よし! じゃあ今日はここまで! また次回!!




