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永遠の無秩序

 蛇が蠢めくフロアの出口の前で3人の前に立ちはだかる2人の少女、手足の先が鱗に覆われた蛇を操る少女ギル、身の丈に合わないローブを身に纏い長槍を携えた少女デスはルシェルの妹だと言い、ルシェルを先に通すが名取と新橋に対して明確な敵意を示す。

 毒蛇を使った一撃必殺の攻撃を繰り出すギルと四方八方多彩な角度から長槍による攻撃が飛び交うデスに対し、名取と新橋は的確に対応し、2人を拘束する事に成功した。

「さて、この地下について知ってる事全部吐いてもらおうか」


 名取と新橋は爬虫類のように手足の先に鱗に覆われた蛇のような少女ギルと体の一回りも二回りも大きなローブを身に纏い、長槍を持った片目隠れの少女デスとの交戦の末、勝利し2人を拘束し地下に関する情報を聞き出すことにした。


 ギルとデスは戦闘開始時の威勢はどこへやら子犬のように体を震わせている。

 新橋は冷酷な目で二人を見下ろし新橋の鋭い目で更に怯えさせてしまう。

 新橋は怖がらせるつもりはないようで内心困っているようだ。


「ま、まぁ……おじさん達も怖がらせるつもりはないんだ。知ってる事だけでいい、ここについて教えてくれないかな?」


 名取が優しく声をかけると2人はブンブンと首を縦に振る。尚恐怖心は解消出来ていないようだ。


「新橋さん……もう少し優しい顔できないんですか? 完全に怯えてるじゃないですか」


「……うるせぇな、無愛想で悪かったな」


 新橋はそう言って顔を逸らす。

 新橋にとってはショックだったのだろう、背中からでも伝わる落ち込み様だった……いやむしろ背中からしかこの男からは感情が伝わってこないのだが……。


「それで、ここは一体何なんだ? 建物の地下……なのかもよく分からない……。一番下に居た時は建物の地下だと思っていたが今このフロアにあがってもう一度上を見てわかった。この先の上階の広さは明らかに異常だ。まるで果てしなく空間が広がっているようにも見える。まるで別世界がそこにあるような……君達は知らないか?」


「それくらいなら」と少し安心した様子でギルは語り始める。


「そう、おじさんの言う通りその扉の向こう、この上の階は変わった場所なんだよね。すっごーく広くてまるで別世界って感じ。

 そこに色んな人達がいるんだけど特にボスみたいな人が4人くらいいて怒らせたら殺されちゃうから絶対に怒らせちゃダメだってパパが言ってたよ」


「そ、そうなのか……」


「うん、質問に答えたからコレ解いてくれる?」


 ギルはそう説明して上目遣いで名取を見つめてねだる。名取は新橋の方を振り返ると、新橋は「好きにしろ」と腕を組んだままギルとデスには興味無さそうである。

 名取は少し考え、閃いたようにギルとデスの背後に回り込みナイフを取り出す。


「よし、今から君達を解放してあげる。その代わり条件がある。君達はこの先の案内人を務めてもらう。もしこの条件が呑めないか逃げたり反撃しようものなら……」


 名取は2人を縛る蔓をナイフで切りながら最後に耳元で囁いた。


「その時は……わかるね?」


「「ひゃ、ひゃい!?」」


 ギルとデスはビクッと体を震わせ裏返った声で返事をする。

 名取はうんうんと頷き2人を解放した。

 そしてギルとデスが先導し扉を開け先へと進む。扉の先ではルシェルが退屈そうに座り込んでいた。


「……遅い。何してたの」


 ルシェルは半分苛立ちを憶えた様子で立ち上がり名取達を睨む。

 そんなルシェルにギルとデスは頭を下げて謝罪する。


「お姉ちゃん、ごめんなさい。お姉ちゃんを守りたくておじさん達をやっつけようとしてた。でも安心して、ギルとデスもお姉ちゃんについてくことにしたの。ここからは私達も味方だよ!」


 得意気に胸を張るギルとに続いてデスも胸を張る。


「そ、別に何でもいいわ。さっさと案内して頂戴」


「「ムー! お姉ちゃんつめたーい(なのー)!」」


 むくれるギルとデスに面倒くさそうな顔をするルシェルは2人に近づき、両腕を2人の頭に回し胸に抱き寄せた。

 その姿はの優しさを超えてどこか母性さえ感じさせた。


「……コレでいい?」


「「ああ……良い……(なの)」」


 ルシェルに抱かれこれ以上無いほど幸せそうなギルとデスは今にも昇天してしまいそうなほど恍惚とした表情を見せる。

 微笑ましそうにそれを眺める名取と「何を見せられているんだ?」と言いたげな新橋を余所にルシェルはギルとデスを離して後ろを振り返る。


「早くこれを開けて」


 後ろには重厚な鉄製の扉がそびえ立っていた。

 ルシェル1人では開けられなかったようで名取と新橋が2人がかりでその扉を開けるとその先ではまた鉄製の門よりも一回り大きなダイヤモンド製の門が待ち構えていた。

 再び名取と新橋がこじ開けようと押すが開かない。そこにギルとデス、そしてルシェルが加わり全員で力を合わせて扉を押す。

 すると扉は少しずつ動き始め、門が開いた。

 門の先ではとうとう上階へと続く螺旋状の階段が姿を現した。


「ゼェ……ゼェ……あ、開いた……」


「門を開けるだけでも疲れたなの〜」


 門を開けるだけでもかなりの力を使い、疲れ切った名取と新橋は壁にもたれ、ルシェルもギルとデスにお互い背中を預け合うように休憩する。


「どうしてこんなに厳重なんだ?」


「全部お姉ちゃんを外に出さない為なの。お姉ちゃんは私の何にも代え難い『天使』だからってパパが言ってたなの」


「天使……か……。嬢ちゃんは相当好かれてんだな」


「嬢ちゃんじゃない、ルシェルって呼んで新橋」


「呼び捨てかよ……」


「じゃあなんて呼べばいいの? ルシェル新橋の名前知らない」


「……新橋凪助しんばしなぎすけ


「わかった。じゃあ凪助」


「……まぁそれでいいか」


 休憩中そんな会話を交わしながら十分休まった所で5人は螺旋階段を登り始める。幾十、幾百段と続く長い階段を登った先で、再び小さな空間に辿り着く。周辺には特に何もなく、正面に扉がある。


 名取が扉を開けるとそこに広がっていたのは赤黒い天井――いや空と呼ぶべきか、頭上一面を覆っており、何処までも果てしなく続く荒廃した土地が広がっていた。


 名取達はギルとデス先導の元、先を進んでいく。

 何処まで進んでも変わらない景観に今進んでいる道が本当に合っているのか不安になるがそれでも2人を信じて先を進む。


 ――あれからどれくらい歩き続けただろうか。数十分、いや数時間歩いたようにも感じる。未だに名取達は同じ景色の道をひたすら進み続けていた。

 ルシェルもかなり歩き疲れたようで辛そうな顔をしている。


「なぁギル、デス、この道で本当に合ってるのか? かなりの時間歩いている気がするがまるで景色が変わらないし一向に地上への出口が見つかる気配が無いぞ?」


 名取がそう言った途端、ギルとデスの体がビクッと跳ねた。

 その後ゆっくりと振り返るギルとデスの額はこれでもかというほどビッシリと冷や汗に塗れていた。


「お前達……まさか……」


「「道に……迷っちゃった(なの)」」


「よし分かった」と新橋は蝋燭ろうそくとライターと縄を取り出した。


「ままま待って欲しいなの! 蝋燭垂らされちゃうのは嫌なの! やるならギルにやるなの!」


「はぁ!? デスずるい! ギルはちゃんと早い内に正直に言おうって言ったんだからね! だから私は悪くないんだから!」


 目の前で繰り広げられる醜い争いにため息を漏らしながら呆れ果ててお仕置きする気も失せた様子の新橋、座り込んだまま絶望したように遠くを見つめるルシェル。


 名取は仕方無く2人の喧嘩を仲裁し少しの間、その場で休憩する事を提案した。

 その場の全員が賛成し歩き疲れた足を休ませていると、ギルとデスは先程まで喧嘩していたのが嘘のように息ピッタリの声を上げる。


「「お腹すいた(なの)!」」


 声を上げた2人は仰向けになり空腹を訴え始めた。ルシェルはギルとデスに対し冷ややかな視線を送るが、その直後に自身の腹部から腹鳴が鳴り響き、全員からの視線を集め、赤面して顔を反らす。


 現在、名取の手元には飲食物は特に持ち合わせておらず、困り果ててしまうがその様子を見た新橋は自身の懐を探ると、そこからブロック状の携帯食料を取り出してルシェルに手渡し、続いてギルとデスにも差し出す。

 ギルとデスは明らかに警戒をしているが、空腹には逆らえないのか恐る恐る受け取る。

 ルシェル達には見慣れないのか携帯食料を注意深く観察している。

 そして覚悟を決めたのかギルとデスはお互いの顔を見合わせ《《それ》》を口に入れる。


「「お、おいひ〜(なの)!!」」


 途端に2人の顔はぱぁっと明るくなりガツガツと食べ進みあっという間に無くなってしまった。

 それを見たルシェルも食べ始めると「おいしい!」と大層気に入ったようだ。


「ねぇ! もっと無いの? まだまだ食べたい!」


「あんなに美味しいの生まれて初めてなの!」


 目の前では食べ終えたギルとデスが新橋にねだっていた。

「もうねぇよ」と両手を上に挙げる新橋にがっくりと肩を落としながらその類の食べ物を食した際に起こりうるある異変を感じ取る。


「ねぇ、なんだか喉渇いたんだけど」


「口の中がパサパサなの。飲み物がほしいなの」


 それは口内の水分不足であった。

 ルシェルもすでに喉が渇いた状態だったのか飲み込むのに苦労していた。


 すると新橋は再び懐から真っ黒い筒状の物を取り出して蓋を開けるとルシェルに差し出した。


「緊急時用の水筒だ、飲め。そこの2人にも残しておいてやれよ」


 ルシェルは水筒を受け取るとゴクゴクと飲み始め、ギルに渡す。ギルも水を得た魚のようにガブガブと飲み始めるが、新橋が目を光らせていた事もあり、デスの分もちゃんと残してデスの水分補給も完了した。


 携帯食料はあと一つ残っていたのだが新橋はそれを名取に渡そうと最後の一つを手に取ろうとするも――


 ――そこに持っていた筈の携帯食料は無かった。


「ほぉ、これは美味いぞ! こんな物を持っているとはな! 褒めて遣わすぞ!」


 背後からの声に新橋は咄嗟に振り返ろうとするもその頭を掴まれ、その異常なまでの馬鹿力に首が全く動かせずに硬直する。


「こんな美味いものを我の元に持ってきたのだ、特別に生かしてやるからそう敵意をみせるな」


 その新橋の頭部を掴む者は紫の肌に黒い瞳、体には古代の西洋的なローブに身を包み、頭部から闘牛のような角が生え、背からは悪魔のような翼を生やした大柄な男がガハハと笑っていた。


 その場にいる全員がその者を視界に入れた途端、即座に直感した。


 ――敵うかなど考える事すら烏滸おこがましい程の圧倒的な存在、その見た目から連想させる悪魔や邪神に近い人間を超越する邪悪な存在であると――


 誰もがその瞬間、体が硬直して動かなかった。

 本能的な恐怖心に囚われ、声すら出す事も出来ずただ目の前の厄災とも呼べるような存在が去っていくのを心の中で願う事しか出来ない状態にあった。


「ふ〜む、恐怖して声も出んか……ふはは! ちと驚かしすぎたかのう? そう怖がるな! 先程言った通り美味いものを持ち寄った貴様等を殺したりはせん」


 新橋の頭をポンポンと叩き全員の顔が見える位置へ移動しその者は堂々と名乗りを上げた。


「我が名はディスコード! この《《永遠の無秩序の世界》》にて《《不和》》を司る闇の住人なり!」


 ディスコードと名乗る者は翼を大きく広げ、自身を誇示する。

 殺さないという口約束だけでは警戒心が解けず、緊張したままの名取、新橋、ルシェルの3人とは裏腹に精神が幼く単純なのかすっかり信用し切ったギルとデスはディスコードの大きな翼を見て「かっこいい〜!」と目を輝かせていた。


「おお! 小娘共! お前たちには分かるか! この我のカッコよさが! ガハハ!」


 子供達2人に崇められ大層機嫌が良くなったのか3人並んでガハハと笑い声を上げ、その能天気な姿に少しずつ緊張感が解れていく。

 とはいえ一歩間違えて機嫌を損ねてしまうような事があればいつ殺されてもおかしくは無い状況に3人は最大限注意を払いながら接していかなければならないとお互いにアイコンタクトを送り合って確認し合った。


「ところで貴様等は何故なにゆえ此処に居るのだ? 貴様等は此処の住人では無いだろう。一体何処から来たのだ?」


「何処から来た……と言われるとですが我々は気を失っている間に此処の最下層に運ばれたみたいで……そこで彼女、ルシェルに出会ったんです。っでそこの2人はルシェルの妹《《らしくて》》案内役に連れてきたのですが道に迷ってしまって」


「らしいじゃなくて本当に妹!」


 名取が事情を説明すると納得したようにディスコードがガハハ笑い声を上げ、名取達の眼の前を通り過ぎ、振り返った。


「よし! 美味いものを我に貢いだ褒美だ。出口……とまでは行かんが出口を知っている者の所まで連れていってやろう! そやつも闇の住人の1人でな、少々気難しい奴ではあるが、我のツテがあれば心配無用だ! 奴の居場所までは少々時間がかかる。っといってもこの世界に《《時間という概念》》は無いのだが……まぁなんだ、奴の居場所に辿り着くまで話でもしながら暇を潰そうではないか。付いてくるが良い」


 そういってディスコードは歩き始める。

 名取達はその後を恐る恐る付いていくことにした。


 赤黒い空に包まれ途方も無く広がる荒廃した「永遠の無秩序」と呼ばれる世界を闇の住人ディスコードの導きによって脱出へと向かい出した名取達一行。この世界に住まう闇の住人とは一体何者なのか、謎は深まるばかりである。


ミニコーナー企画!


「あのコをどう思ってる? 直接聞いてみた!」


はいは〜い司会・進行を務めるよ、特異現象捜査部本部長 這月ニアだよ〜。


今回はね、登場人物であるあのコはあのコの事をどう思っているのか、お題に沿って直接聞いてみる企画だよ。


今回のゲストはこの子!


File2  「Cradle of infection」より成瀬白那よ。今日はよろしく。


今回は成瀬白那さんにお越し頂いたよ。君は主に白鳥君の過去回想で登場していたね?


そう、彼の回想以外コレといった出番が無かったから正直物足りない気持ちだったの。

ココなら何をしても問題ないわね?


なんだか語弊を生みそうな言い方だなぁ……まぁよっぽどじゃ無ければ良いんじゃないかな?っというわけで本日のお題行こうか、ジャンッ!



「白鳥蓮やレインの事をどう思っていましたか?」



そうね、白鳥君とレインの事はどちらも友好的に思っていたわ。白鳥君は一緒にいるとなんだか心が落ち着くの。それに身体の物理的距離が近い時、不思議と心拍数の上昇も感じられて心の何処かで彼を求める私がいたの。

当時の私にはわからなかったけれどコレが彼の言う「恋心」なのかも知れないわね。

でもせっかくならその「恋心」の正体も生きてる内に研究してみたかったものね。


レインに関しては良い後輩に思っていたわ。

初めて出会ったのは私が図書館でオカルト本を読み漁ってた時かしら? レインがオロオロしながら話しかけてきたのがきっかけだったわ。

レインは当時からオカルト関連の知識には長けていて、彼女と関わるに連れて共にいる時間が増えていったわ。今思えばその時から私はレインに監視されていたのかも知れないわね。


レインの淹れるコーヒーは美味しくて好きだったわ。白鳥君のコーヒーも嫌いではなかったのだけれど飲みやすさという点においては彼女に軍配が上がるわね。

でも恐らくレインに淹れ方を学んだのでしょうね、白鳥君のコーヒーも徐々に美味しくなっていって殺される直前の頃にはどちらの淹れるコーヒーも美味しく頂いていたわ。


私が死んだ後の白鳥君の行いに関してはとても許される行為ではないとは思うけれど、全て彼が文字通り世界を敵に回してでも私の事を想ってくれていた証明でもあるから善悪は置いておいて素直に嬉しいわ。


幽世って言うのかしら? 死後の世界ではまだ白鳥君とは出会えてないのだけれどもし再会できたら色々話を聞きたいし生前では出来なかった「甘える」?という行為もやってみようと思うわ。


レインに殺された件に関しても私はレイン対して嫌悪するつもりはないわ。それが彼女の使命だった訳だしお世辞にも私の行いも良いものとは言えない自覚はあるわ、覚悟していた事よ。

実は幽世では何度かレインと会っているの。

再開するなり泣いて謝ってきたけど私はレインが本心で私を殺したかった訳じゃなかった事も知っていたし咎めはしなかったわ。今ではすっかり仲良くしているわ。


こんなところね、これ以上特に話すこともないわ。


幽世から見守ってて中々面白いモノも沢山見れたんじゃないかな? 何かと君が元気そうで良かったよ。描写も少なくて不満を持っていたのもココで少しは解消されたかな? っというわけで今日はここまで! また次回をお楽しみに!

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