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厄災の姫と魔銃使いⅡ  作者: 星華 彩二魔
第四部 一章「悪魔狩り」
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★【序章】

 新たな旅に出るクロトとエリー。

 彼らは再び魔女の故郷へ行き、ウィルオウィスプに会うことに。

 しかし、共についてきたのは自称【怪物】のカルト。翻弄されつつも、辿り着いた先でクロトたちが見た光景とは……。

 

 遺産所有者との事象の裏で起きていた世界の変化。その片鱗を魔銃使いたちは目の当たりにする。


 それは正義の名を冠し、活動せし者たち。

 この世に魔という悪がいるのなら、それらを断罪すべき者たち。

 世に蔓延る、魔物、魔族、悪魔、魔女、悪魔付きなど、それら全てが彼らにとって悪である。

 人は彼らを魔狩りの集団――【祓魔師】と呼ぶ。


 

【厄災の姫と魔銃使い Ⅱ】祓魔師編 開幕

 ――この世に、悪はいらない。


 その言葉に、その場にいた誰もが声をあげる。

 共感し、謳う様に、誰もが同じように声を発する。


 ――魔は悪である。

 ――悪は正義のもとに裁かれるべき。

 ――裁きを下すは、我ら正義にあり。


 ――我ら、正義の名のもとに、悪全てを断罪する。


 彼らは、自分たちこそ正義であると高らかに声をあげる。

 身に纏う白のローブ。神聖を象徴する十字架を刻まれ、誰しも身に十字を飾る。それは自身たちを神に選ばれし神聖な者たちと見せつける様に。

 

 ――我ら【(ディーオ)】に選ばれし【祓魔師(エクソシスト)】なり。


 彼らは言う。

 魔を払い、悪を滅する者。――【祓魔師】と。

 






 集まりし白のローブを纏いし者――【祓魔師】たちは団結の意を示した後、集まっていた会場から散り散りに解散を始める。

 部屋に密集していた大勢がいなくなれば、部屋の中身がよくわかる。教会の如き広い聖堂。前を見れば主祭壇があり、そこにはつい先ほどまで【祓魔師】を束ねる組織のリーダーがいた。

 それは導く者。魔に反する【(ディーオ)】の名を冠していた。

 今は既に身を消し、その期をずっとうかがってでもいたかのように、1人が退屈そうに大あくびをした。


「あ~~……っ、やっと終わったか……。

 長ったらしい話とか共感とか、めんどーで反吐が出るんだがなぁ……」


 それは、聖職者から程遠い口の聞き方だった。言葉だけでなく、席に足を乗せるなど、言動がとても悪い印象を周囲に与えてしまう。

 男は皆と同じように白のローブを纏う事から、彼もまた【祓魔師】であり、同胞。しかしその下には、着崩したような身なりである。時折フードからはみ出した青髪をいじりながら、退屈層でいた。

 困惑するその場に残った数名。だが1人だけそんな彼を正そうとする者がいた。


「――エツラ! またそんな事を言って。

 せめて皆の前では聖職者としての心得をしっかり持ってください!」


 叱りつけるのは若い少女だ。ローブの下には白を基調とした清楚なもの。身なりを整え、ふんわりとしたパステルグリーンの髪の上には同じ白のベレー帽をかぶっている。年頃であるもしっかりとした性格をしており、臆せず言動の危うい者に挑む。対するエツラもまた同じほどの少年だ。まるでこの場が学園かを思わせる雰囲気になってしまっている。

 問題児と優等生。そういったイメージだ。


「まあ、確かにあの方の前で粗相をしなかったのは褒められたものです。

 ホッとしたのに、気を許したらこの為体……っ。

 私、頭が痛くなってしまうんですけど?」


「うっせーなぁ……。

 良い子ちゃんしてたんだから免除してくれよぉ。

 一々一々、ちまちまと……。礼儀だのなんだの、よくできるな。

 俺はお前の神経質に不安しかないぞ。

 そんなんじゃすぐ老けるぞ、トリノ……」


 少女――トリノに負けぞ、エツラも言い返す。

 

「ほっといてください!

 そこまで言うなら、一々私を怒らせないでください!

 いっつもいっつも、エツラはそうやって……っ。

 正義の私たちに傷が付いてしまいます!」


「あー、わかったわかった……。

 悪かったって。そう癇癪起こすなよ。

 後でツバクラに茶でも入れてもらえー」


「絶対わかってないですよね!?」


 素直に聞き入れないせいか、余計にトリノはぷんぷんと怒りだしてしまう。

 それを眺めて微笑む姿もあった。


「エツラはんとトリノはんは、今日も仲良しですねぇ~。

 ねぇ、ハーミルンはん」


「ツバクラ姉。アレは仲良しとは言わないと思うんだけど……。

 まあ、いつも通りだよねぇ」


 同世代のもめ合いを眺めているのは、体格差のある2人。

 1人はツバクラという長身の女性。もう1人は、まだ幼い小さな子供なハーミルン。

 エツラとトリノのやり取りを見慣れた様子の2人にとってはもはや日常茶飯事の様なものらしい。

 だが、トリノだけでなく、エツラに対して苦言を小言で漏らす者もいた。


「なんだよアレ。

 ここは子供の御遊び場じゃないんだぞ?」

「俺たち【祓魔師】は大昔から魔族と戦ってきた由緒正しい集いだと言うのに」

「聖職者にあるまじき……だよな」

「特にあのガキ。わかってこの場にいるのか?」


 それは聞こえるようなものだった。おそらくエツラに批判の声を聞かせたかったのだろう。

 エツラは確かにまだ二十を超えていないような子供だ。風貌も大人とは言えない。みっともない男児が大きくなっただけ。そう見えてしまっているのだろう。

 そういった苦言はエツラだけでなくトリノにも聞こえていた。

 聖職者として正しくあろうとするトリノにとって、その言い分は自分にも向けられていると感じられる。エツラの態度の悪さを止めれないでいる自分もまた、言われる側なのだと。

 彼女は言い返さない。実際に止める事も出来ていないのだから。

 だが、エツラは違った。

 聞こえた陰口に、即座に席を立ち、口を開いた者の1人を捉える。胸倉を掴みあげられた者は、驚愕と目を見開き、エツラの目と合う。途端に、呼吸を忘れてしまった。左右非対称、蒼と金の瞳。不敵な笑みを浮かべたエツラの片耳には白銀の十字架の飾りがあった。

 

「そ……その色……っ。

 ――【熾天使(セラフィ)】!?」


「おいっ、マジかよこんな奴が!?」


「そういうお前らは……ん~?

 なんだよ、【智天使(ケルビム)】かよ。格下じゃねーか」


 【祓魔師】にも階級が存在している。

 最上位の【神】。上位の【熾天使】。次に【智天使】、そして【使徒】。

 それらの階級は彼らの飾る十字架の色によって決まる。白銀の【熾天使】に対し、彼らは銅の【智天使】。

 年齢や風貌など、階級を見れば天と地ほどの差を強いられる。すっかり言葉を失ってしまうも、エツラは更にそれらを追い詰める。


「んで? なんだっけ?

 俺ですら此処は子供の遊び場なんて思ってねーぞ?

 由緒正しい……ねぇ。解散寸前の組織だったくせに、よくそんな事が言えたもんだ。 

 更には格下ときた。聖職者としての心得の前に、まずはその辺の教養を正した方がいいぞ?」


 その時、鼻先に刃が突きつけられる。エツラが持っているのは短剣だ。竜鱗を刃に閉じ込めたような、蒼緑の刃。

 

「ひ……っ」


「ま、待てっ。さすがにそれはやりすぎじゃ……っ」


「おいおいおい。まさかやられるという前提すらなかったのかよ?

 そんなんで魔狩りができるってのか? 寝言は寝てから言えよ。

 お前ら本当に【祓魔師】なのか?

 覚えておけ低能ども。格上に挑むなら、それなりの覚悟を持ってからきやがれっ」


 胸倉を解放してやれば、男はその場にへたり込む。それに目掛け、刃が振り下ろされた。

 恐怖を前に、思わず腕で防御の姿勢をとってしまう。だが、刃は何処へやら。恐る恐る視界を開いてみると、刃は床にへと突き立てられていた。

 

「なーんてなっ。

 これに懲りたら、二度と馬鹿なことを言うなよ?」


「……っ」


 エツラは笑みを浮かべ、そう釘を刺しておく。

 どっと、安堵が押し寄せた。応答として、どうにか首を縦に振る。わかればと、エツラはようやく離れていった。

 

「エツラ兄、やりすぎー」


「お灸をすえるには、少し過激かもですねぇ」


「うっせー。見てたんならお前らがアイツら黙らせろよな」


「それでも手を出すのは良くないに決まってるじゃないですか!

 彼らもまた私たち正義の同胞。もっと広い心を持たないと」


「はいはい。

 てわけで、ようやく大暴れできる準備が整ったってわけだろ?

 こっちは体をなまらせたくねーから、一足先に狩りに行かせてもらうぜ」


 トリノは呆れてため息が出てしまう。

 しかし、その前向きな意志には乗らざる負えない。


「既にあの方から幾つかの目星がついています。

 【熾天使】だけでなく、【智天使】の皆さんにも伝えてあります。

 ツバクラさんとハーミルンくんも、気を付けてくださいね。


 相手は凶悪な魔の者たちです。

 悪に容赦する事などなにもありません。

 全てはあの方の目指す、正義が世を正す世界のために。

 

 私たち【祓魔師】が、世界に平和をもたらすのです」

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