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厄災の姫と魔銃使いⅡ  作者: 星華 彩二魔
第三部 六章「星の聖杯」
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「遺産編:ショートストーリー集2」

★4「関わらないが吉」


「…………よし。いないな」


 柱の陰に隠れつつ、【炎蛇のニーズヘッグ】が顔を出し、周囲を警戒。左右を確認してわずかな安堵にため息がもれる。

 

 さて。何故【炎蛇のニーズヘッグ】がクロトの肉体を借り、自身の姿で表に出てきているのか。

 これには誰もが頭を悩ませる深い事情があった。

 現在。一同がいるのはメフィストフェレスのために作られた宿舎。そこはメフィストフェレスの監視下にある宝物庫の中に存在している。そのため、例え悪魔たちが表に出たとしても部外者の目に触れる事は絶対にない。その点の安全面はしっかり備わっている。

 しかし、それを利用してか。現状は親睦を深める場であるため、それは悪魔たちも例外ではなかった、らしい。

 本来ならネアがそういうのは許さないだろう。全員が悪魔と交代すれば、彼女の目の届かないところで何が起きるかわからないからだ。

 だが、それもメフィストフェレスが提案者であれば一気に話は変わってしまう。ネアがメフィストフェレスの提案を断るはずもなく、喜んで提案に応じたのだ。

 

 ――なんとはた迷惑な……。


 一つの部屋に集められ、結果この状況。クロトと交代してすぐ、ニーズヘッグは身を潜める様になってしまった。

 

「たく……っ。あの電気女、もう少し人の心考えろっての」


「悪魔に人の心がどうのこうの言うでない、愚か者」


 付き添うフレズベルグは、こそこそとするニーズヘッグの後ろ姿を眺めつつ、呆れてため息が出てしまう。更に悪魔たちが過ごす宿舎の中で残されたエリーも彼らに付き添っていた。


「ニーズヘッグさん、どうかされたんですか?

 いつもはよく外に出たいと言われているはずなのに……」


「色々事情はあるのだよ姫。

 我々とて悪魔同士の相性というものがあってな。

 会いたくない者には極力会いたくないし、会わないようにするものなのだ」


「……そう、なんですか?」


「うむ。少なくとも、私とニーズヘッグは3体の悪魔とは出くわしたくない」


 フレズベルグは丁寧に、一つ一つを説明する。


「まず、【水霊鬼のルサルカ】だ。

 あれは私とニーズヘッグには恨みがあるからな。

 見かけたら有無を言わさず水で流しに来る可能性もある」


「…………あー。何となく……そんな気もしますね」


 本当は人見知りな可愛らし悪魔のはずだが、出会い当初の事を思い出すと容易に想像できる範囲だ。

 フレズベルグに、というよりニーズヘッグの事を異常なほど嫌っている。確かにニーズヘッグが表に出ている間は会う事を避けた方がよい。

 しかし、ニーズヘッグはそれに反論を言い出す。


「ルサルカ悪くねーから!!

 あれだよなぁ。照れ隠しってやつ! それだけだから!」


「何をお前は寝言を言っている。寝言は寝てから言え愚か者が……。


 続いて、【強欲獣のメフィストフェレス】。此処は奴の監視下にある。

 容易に探す事はできるだろうが、距離を取ればいいだけの話。 

 奴は極力動きたくないタイプだからな。近くによらなければ特に問題はない」


「それなら、最初の位置から動いてねーぞ。 

 さすが極度なめんどくさがりやの強欲野郎だ。そのまま動くなっての……」


「視界にはいればまた狙ってくるからな。

 そのまま監視を続けていろニーズヘッグ」


 メフィストフェレス。彼女とニーズヘッグたちの関係は確かに問題がある。

 欲深き彼女は珍しいものなどには目がない。そのため、ニーズヘッグの炎蛇の皮衣や、フレズベルグの七色を宿す翼すらも狙っている。過去にも一悶着あったらしく、その際は酷い目にあったとか……。

 それもあって、ニーズヘッグは逃げる直前に監視として使い魔の蛇を残してきた。

 エリーもニーズヘッグたちが避ける事には納得し頷く。

 

「じゃあ、あと1人は誰なんですか……?」


 フレズベルグは静かに頷く。


「うむ。最後の奴は私も特に会いたくない奴でな。

 その名は――」


 最後の1体。それを語ろうとした時だ。

 再度警戒して左右を確認し、一歩前に踏み出したニーズヘッグ。

 すると……


「――ニーく~~~~~~~ん❤」


「――ギャアアアアアアアッ!!!」


 突如、天井から女性が降ってくる。それはニーズヘッグにしがみつき、これでもかと魅惑的な体を密着させていた。

 正体は【淫歌のリリン】だ。彼女の身なりは過激なものであり、無意識にフレズベルグはエリーの視界を手で覆う。

 

「あ、あれ? さっきの声は、リリンさん……ですか?

 フレズベルグさん。前が見えません」


「見ない方がいいぞ姫。

 見ると目が穢れてしまう……」


 これ以上ない侮辱と共に、フレズベルグもすっかり表情が青ざめていた。

 彼らが会いたくない悪魔の内の1体。それが彼女なのだから。


「も~、ニーくん。リリンから逃げちゃうなんて照屋さんなんだ~。

 再会のチューしよ、チュ~~~~~~~~」


「やめんか! この淫乱女がぁあああああ!!!」


 唇を強引に近づけてくるリリン。それを跳ねのけ、ニーズヘッグはリリンを引きはがし、流れる様に彼女を外にへと放り投げた。

 しかし、翼のあるリリンはすぐにニーズヘッグのもとに戻ってくる。


「や~ん。ニーくんひどい~~。

 リリンがなにしたって言うの~~~」


「数秒前の出来事を覚えてないとお前は言うのか!?

 こっちは突然変質者に襲われた身だぞ! 恐怖しかねーわ!!」


 ニーズヘッグは身を擦る。肌には鳥肌をたてている。恐怖を言葉や身体の症状で訴えた。

 だが、リリンは泣いてニーズヘッグに文句を言い続ける。


「リリン悪い事してないも~~ん。

 リリンはニーくんに会いたかっただけだも~ん。

 あとフレくんにも~」


「そうか。私はお前には会いたくなかったがな……。

 こうなるとわかっていたからな」


 フレズベルグもニーズヘッグと同意見だった。だからこそ、ニーズヘッグと一緒になって表に出た途端、即座にその場を逃亡。そして今に至っていた。

 ……が。それは他も同じであった。

 リリンも実は当時、表に出た途端全員の前から秒で逃げ出した身分でもある。彼女も会いたくない、もしくは逃げ出す理由があったのだろう。 

 更に。ルサルカも同様だった。彼女はニーズヘッグに会いたくないため、反発するように姿をくらます。

 記憶が正しければ、7体中4体の悪魔が四方八方に散らばり、3体の悪魔がその場に残っていた事となる。そして、その後は自由行動なのか、それぞれ散り、最終的にその場に残ったのはメフィストフェレスのみとなった。

 

「でも相変わらず2人ともリリンの好み~♪

 いつでもリリンは準備万端だから。あ! 丁度そこの部屋にベッドあるからさ」


「いらん説明せんでいい。

 悪いが俺はお前なんか好みじゃねーよ」


「えええ!? なんで~!?

 リリンちゃん、こんなに可愛いのに~~!!」


 リリンの言葉は間違いではないだろう。

 顔も良い。スタイルも良い。男性なら目が向いてしまうような、豊満な胸部。愛らしさと女性らしさを兼ね備えた淫魔。それがリリンという悪魔だ。

 しかし、相手はニーズヘッグとフレズベルグ。そういった淫猥な女性には冷めた目を向けるのみ。その対応にリリンはどうしても納得がいかないらしい。


「こういった体の関係を求めてくる愚か者は本当に気分が悪くなる。

 もう少し慎みというモノを学ぶのだな、淫乱女め」


「同感。ウチの姫君見てみろ。

 お前とは雲泥の差なんだよ。見ろこの愛らしさ、欠点のない容姿。完璧だろ」


「そう……でしょうか?

 リリンさんも可愛らしいとは思いますけど……」


 そっ、と。エリーは指の隙間からリリンを見る。

 確かに露出の多い身なりで恥ずかしくはあるが、リリンもまた可愛らしくある。


「ああいうのは称賛を通り越して下品というのだ姫。

 大人の世界もまた複雑なのでな。そいうこともあるため、この場は話に加わらないでくれ」


「だいたい、俺はそこら辺でけー女とか苦手なんだよっ。

 よくこんなんで魅了される奴がいるな。馬鹿じゃねーの!?」


「清楚の欠片もないな。

 ……気分が悪くなってきたから姫と一緒に離れてもいいかニーズヘッグ?」


「俺を置いていこうとしないで友人A!」


 静かにこの場から遠ざかろうとするフレズベルグ。それをニーズヘッグは衣服を掴んで引き留めた。

 両者にとって正論の言葉を並べられ、ついにリリンも駄々をこねる。


「やーだーー! リリンちゃんと遊んで遊んで遊んでぇえええ!!

 ニーくんといっぱいイチャイチャしたいぃ!

 ニーくんとあんなことやこんなことしたいぃ!

 リリン、ニーくんともっと仲良くなりたいだけなのぉおお!」


「接し方に問題ありなんだよ!!

 お前なんかに童貞譲れるかってのぉ!!」


「うぬぅうう……!

 こうなったらリリンだって本気だしちゃうもん!

 リリンの声でニーくんメロメロにしちゃうんだから!!」


「ゲッ! それだけはやめろ!」

 

 あのニーズヘッグが危機感を抱いている。それもそのはず。

 淫魔の声には対象を魅了する効果がある。普通の淫魔ではなく、リリンはそういった声に特化した悪魔だ。その気になれば同じ大悪魔の思考を一時的にでも虜にできる。

 耳を塞ぐニーズヘッグ。続いてフレズベルグも自分の身を最優先に耳を塞いだ。

 大きく息を吸い込むリリン。声を吐き出そうとした時――



『――やかましいぞっ。リリン』



 リリンは吐き出しそうになった声を止め、逆に呑み込む。ビクリと肩を跳ね上がらせ、辺りを見渡した。

 どこかからか、声が響いてくる。


『妾の敷地で卑猥と騒ぐな。

 ――殺すぞ?』


 その声はメフィストフェレスだ。普段の妖艶としたものではなく、ドスの効いたもの。

 ニーズヘッグはすぐに使い魔の目を確認。彼女は未だにその場から動かずにいるが、ソファーにだらりと腰かけたまま、拡声器を手にして天井に向け声を放っていた。それは宿舎全域に届き、リリンを叱りつける。

 再度リリンはビクリと反応。身をガタガタと震わせてその場に正座した。


「うぅ……っ、あ~~~ん!

 メフィ姉怒っちゃやだあぁあああっ。

 ごめんなさ~~~~~~~い!!!!」


 リリンは号泣してしまう。どうも彼女はメフィストフェレスと関係があるらしく、怒る声に反省。子供の様に泣きじゃくっている。それほどのトラウマでもあるのか、怖がるリリンをエリーがなだめる。

 その隙に、ニーズヘッグとフレズベルグが静かに姿をその場から消した事に気付いたのは、数分後となる。


 


★5「年配者」


「わかればいいのだ。妾の領域で不愉快な騒ぎを起こすでないように」


 注意を言い終えると、メフィストフェレスは拡声器を床に放り捨てる。再びだらけた様子でソファーに寝そべり、煙管を口元にへと運ぶ。 

 

「……おや? やはりまだこちらにおられましたかメフィスト殿」


 ひょっこりと顔を出すのは山羊の頭蓋。【冥界使者のバフォメット】が最初の場所に戻ってきた。


「ん? 何か用かのぉ、冥界使者」


「いえいえ。一つお尋ねしたいことがありまして、よろしいでしょうか?」


「ふむ。申すが良い」


 メフィストフェレスは気前よくバフォメットの言葉を聞く。ありがたい、と手を合わせるバフォメットは目をキラキラとさせた。


「大変恐縮なのですが、この建物の中で強い光を浴びれる場所などありませんでしょうか?」


「……」


「いえ、とても衛生面の行き届いた過ごしやすい空間なのですが。

 どうも落ち着きがなく、拷問とまでは言いませんが、死霊の身ゆえ強い光には弱く。

 それをしばらく浴びていたいと……。 

 ……ダメですかね?」


 しばらく、メフィストフェレスは言葉を返せずにいた。

 身をよじらせ、息を少々荒げながら語るバフォメットを眺める彼女の目は、どこか冷めたものがあった。

 

「……ふむ。噂通り、この冥界使者は生粋の変態と見える」


「あ~、よく言われますね。

 ちなみにその噂は誰からです?」


「お主の上司だ。三番席魔王――【冥王のハーデス】。

 一度、手に入れた宝で冥界に訪れたことがあってな。

 その時は不法侵入という形で牢獄に入れられるわ、とりあえず茶を出されるわ、それがマズいわ。

 色々込み入った話もあってな。そのついででハーデスが愚痴を漏らしておった。

 

 ――仕事はできる有能だが、変わった趣向のある奴に育ってしまった。


 ……とな」


「う~~~~~~ん。

 まあ、その点は困らせていると自覚はしておりますが。

 それ以外何かハーデス殿は言っておられましたか?」


「ふむ。他の死霊と違い、お前のことは贔屓(ひいき)しておったなぁ。

 欠点には悩まされておったが、酷く毛嫌いもしてない。

 それから長らく会ってもおらんからなぁ。今はどうしておるかわからん」


「そうですかぁ……。

 まあ、我もこの状況になって会えてもいませんですしなぁ。

 とにかくハーデス殿も我の黒歴史をあれやこれや語られていないのなら、よかったです」


「ほほぉ……。勤勉なる冥界使者にも変質的面とは別の黒歴史があるとは。

 強い光はないが、よければ酒と一緒に語らぬか? そういった情報も欲しくなる」


「お! 酒とは良いですなぁ。

 我あまり酒は飲みませぬが、嫌いではないですぞ」


「では長老者同士で少し語り合おうではないか。

 その前に、酒を飲むときくらいは()()姿()に戻ってはどうだ?

 そんな骨の姿ではせっかくの酒も飲みづらいだろう?」


 照れくさそうに、バフォメットは骨の頭をかく。


「それもそうですなぁ。

 でもあまり他の方には言わないでくださいよぉ?

 この姿の方が落ち着いておりますので」


 頷くメフィストフェレス。しかし、近くで監視を続けていた蛇の存在を知りつつも、彼女はそれをバフォメットに伝えることはなかった。


「ところで、我の黒歴史など知ってどうなさるおつもりで?」


「情報は時に武器にもなる。

 言われたくない場面で言ってしまえばそれは大きな武器にもなるのでなぁ。

 色々使い道がありそうだと思わぬか?」


「ははははは……。お手柔らかにお願いします」





★6「うちはうち。そとはそと」


「大丈夫ですかリリンさん?」


「ふぅ……。ありがとエリエリ~。

 だってメフィ姉怖いんだもーん……」


 まだ、ぐすん、と涙ぐむリリンと手を繋ぎ、エリーたちは宿舎のいろんな場所を歩き回る。似たような客室。ゆっくりくつろげるスペース。綺麗な庭。違うものを見て心情を語るうちに、リリンもいつものように楽し気と話に加わる。

 

「メフィ姉とは昔会ってね。リリンが間違ってメフィ姉の屋敷に入り込んじゃったの」


「雨宿りでもされようとしたんですか?」


「ううん。メフィ姉の屋敷って動いてるから。窓にぶつかって入っちゃったの」


「え!? お屋敷が、動くんですか?」


「うん。メフィ姉って自分じゃ動かないから、屋敷ごと動いて移動するんだって。

 あの時は酷い目にあったなぁ……」


「そうですか……。あれ?」


 前に向き直る。

 前方からのそのそと歩み寄る影が。

 体格は大きくあり、一目でそれが【粉砕鬼のサイクロプス】とわかった。

 これまた珍しい姿だ。あまり動かないといえば、サイクロプスも同じである。なんせ彼の一日などほとんどが就寝なのだから。


「あ。サイクロプスさん」


『('ω')ノ』


 持っていた紙でサイクロプスは軽く挨拶をしてきた。

 その時、傍らにいたリリンがまたビクリと反応し、細長い尻尾をピンと立たせる。メフィストフェレスの時と同じ反応だ。まさかサイクロプスにまでも同じようにトラウマでもあるのか。エリーはリリンの顔を覗き込む。


「大丈夫ですかリリンさん?」


「へ、平気……。メフィ姉ほどじゃないけど……色々あって」


 言葉を渋るリリン。

 しかし、対してサイクロプスといえば、珍しく即座に反応して紙に言葉を書く。


『そこの淫魔嫌い。

 リキにちょっかい出した』


 リリンの顔を見るなり、サイクロプスは不機嫌そうにそう訴える。

 またか……。

 リリンはどうも他の悪魔に嫌われている傾向がある。それは彼女に問題があるとみられ、彼女も図星であった。

 

「うっ。あの時は仕方なかったもん! 

 防衛本能ってやつ!? 会ったばっかでルゥルゥもリキリキのこと怪しいって思ってたもん!

 だからリリンがやっつけようって思っただけだもん!

 そっちの方が酷いじゃん! おかえしって岩を思いっきり投げようとしてきたもん!

 女の子にそれは危ないんだからね!」


『打ち落とせなかったのは残念だった。

 睡眠時間に感謝しろ』


「投げる直前で寝落ちしたくせにそこまで言うかな!?

 あれ怖かったんだからぁ!!

 せっかくのイケメンが台無しだよ!」


 ぷんぷんと怒るリリン。サイクロプスはぷいっとそっぽまで向いて、なかなか仲直りもできそうにない。

 ルゥテシアとリキはあれだけ仲が良いというのに、悪魔側はそこまで仲が良いわけではないらしい。出会い方を間違えてしまった、と見るべきなのか。

 どう止めればよいかわからず、おろおろするエリー。状況サイクロプスは声が出せず、リリンのみが大声で言いあっている。その最中、どこかからすすり泣く様な声が聞こえてきた。 

 エリーはすぐ近くにあった部屋の前に立つ。そこには男性と女性を区分けた表向きが目に入る。大きな宿屋でも見かける事のある、大浴場だ。女性側の方から聞こえてくる。

 ゆっくりと奥を覗き込んでみれば、隅にはうずくまった何かがいた。


「……ルサルカさん?」


「ぴう!」


 蒼い姿。【水霊鬼のルサルカ】がそこにはいた。

 

「どうされたんですか? なにかありましたか?」


「ぴぅ~……、魔女の子。さっきからそこで大声出していがみ合ってるのがいるデス。

 ルサは静かにいたいだけなのに、嫌なのデス」


「……あー、すいません」


 代わりにエリーが謝る。

 人見知りなルサルカは1人で散歩でもしていたのだろう。そして、先ほどの現場に出くわした。パニックになって隅っこで震えていたのだろう。

 ここは別の話でもして思考を逸らすべきだ。


「そ、そういえばルサルカさんはどうしてこんな所に?

 ここって、お風呂のある場所ですよね?」


「……~っ。ルサ、静かに過ごせる場所、探してた……デス。

 丁度そこに水場とかがあったので、そこでくつろいでたデス」


「あ。ルサルカさんは水の悪魔さんでしたもんね。

 お風呂とか気持ちよかったですか?」


「………………悪くなかったデス」


 言い争いにキリがついたのか、サイクロプスもリリンもいなくなっていた。

 同時に、悪魔側の時間終了のベルが建物内で響き渡る。 

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