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厄災の姫と魔銃使いⅡ  作者: 星華 彩二魔
第三部 五章「最悪の怪物」
88/95

「集結」

 クロトの激高は容易に見て取れた。

 状況は、確かにヘイオスにとって最悪でしかない。

 【厄星】の発動。どうにかそれは回避されたが、エリーもリキもルゥテシアも意識なくある。どう考えても非常な事態があったことは間違いない。それに対しクロトはヘイオスを問い詰める。


「とっとと吐きやがれ眼鏡!

 説明の後でその眼鏡ぶっ壊すから覚えとけ!」


「私ではない!

 私ではなくてだな……」


「え? ヘイオスくんひょっとして私のせいにするおつもりですか!?

 ペットのしつけは飼い主の御勤めでしょうに」


「話がややこしくなるっ、黙ってろ!」


「なんもなかったなんて言わせねーぞ!

 お前らがなんかしたのは確かだろうが。こっちは【厄星】もしっかり見てんだよ。

 あれ出てくるのは相当の事なんだよ、わかってんのかクソ眼鏡!!」


『そうだぞ眼鏡!!

 姫君に触んな、近づくな、灰にすっぞ!!』


 誰もがヘイオスにへと集中的に責任を押し付ける。

 思わず胃が痛み、ヘイオスは言い返す事もできない。


「まあ、さすがに可哀想なのでこれくらいにしておきましょう♪

 にしてもヘイオスくん。まさか仕留め損ねているとは、キミにしては珍しいですねぇ。

 数としてはあちらの少年を御相手していた様子だというのに。

 キミともあろう者がそれを置いてこちらを優先してしまうとは……。

 も~、教えましたよね? 獲物はちゃんと仕留めてから次に行かないと逃げられますよ、って」


「……っ」


「そんなこんなで~、ヘイオスくんも胃に穴が開いちゃいそうなので、御相手なら私がしますよ?

 なんせこちらまだまだ不完全燃焼なので。


 よく見れば、以前首をはね損ねた方じゃないですか」


 銃口が、次はカルトにへと向く。


「あ? 誰だお前……?」


「覚えてないですか~……。

 以前山に訪れたキミを面白半分で斬りつけたのですが……。

 その時は首を狙ったのですが、残念なことに逃してしまいまして。

 また会えて嬉しいですよ。次はちゃんとその首を切り落としてあげれますので」


 思い出しながら悠々と語る中、クロトは何処であったのかと思い出す。

 首を切り落とされるような経験。何度かはあるが、その中で該当するのは一つしかない。


「…………あの時か」


 以前、様子見として南西の山でクロトは遭遇していた。

 当時は顔もよく見えなかったが、それがこの人物であるのだと認識。あの時とは違い、近くにいるその存在からは尋常ではない異様な気配が感じられる。人の様で、魔族でもない。混沌と何かが混ざり合った様。それは朗らかとするも、見た目ではわからない殺気をクロトにへと向けていた。

 

「お前が、そいつらをやったのか?」


「そうだと言ったらどうなさいます? 

 殺します? それは大歓迎なのですがね~。

 確かこちらの魔女のお嬢さんと前も一緒にいましたよね?」


「だったらなんだクソが?」


「それは残念と思いまして。

 事情が事情ですし、お嬢さんを殺せないのが残念と思っていたところでしたので♪」


「そうか……。

 

 ――眼鏡よりも先にテメェをぶっ殺すッ!


 塵一つ残さず魂ごと燃え尽きろ!!」


『マッジでそれ一択だろ!!

 そのへらへらした面二度とできねーようにしてやる!!』


 夜闇もなんのその。クロトの周囲では感情に合わせて業火が燃え盛る。

 

「ま、待て魔銃使いっ。

 さすがに今回はこちらの不手際もあるが……っ。

 お前もそれ以上挑発するな!!」


「思った以上に単純思考な乗り気で私もビックリですよぉ♪

 というわけで、片付けてしまってよろしいですよね?」


「待てと言ってるだろ!!」


 ヘイオスの言葉などカルトには入らない。

 既にクロトにはカルトしか映らず、怒りは炎上し銃口にへと集中する。


「上等だ! 腹立つ顔しやがってッ。

 なめてんじゃねーぞ、この――――」


 怒りで周囲など全く見えていない。

 そんなクロトを止めれる者がこの場にいるかと問われれば、いないとすら思えた。

 

 が。それは突如クロトの暴言を遮断させる。


 何処からか、クロトの頭を何かが直撃し、クロトはその場に衝撃で打ちのめされた。

 痛みは後から訪れ、クロトは頭を押さえながら痛みを訴えつつも、グッと叫びを堪える。

 いったい何が直撃したのか。ヘイオスは地に落ちていたモノを見る。


「……あれは……確かっ」


 それは、大きな鋏。その片割れだ。

 七つある魔女の遺産。その一つ、【魔鋏(まきょう)のメフィストフェレス】。

 


「――ちょっと待ちなさい野郎共ー!!」



 声は聞こえる。それは空か。

 思わず誰もが天を見上げる。

 

「まったく。気を利かせて駆けつけてみれば、何やってんのよクロト!」


「――ッ!?

 ネ……ネア!?」


『げーっ、電気女!?

 ウチの主に何してくれんの馬鹿野郎!!』


 夜空に紛れ、ネアがいた。それだけでなく、彼女を空で吊るしているイロハまでも。

 縄一つでどうにか空の移動を可能させているという、なんともアバウトな状況。


 何故今ネアとイロハがこの場所にいるのか。それは数時間前に遡る。

 


   ◆



「……さて。そろそろ由々しき事態って感じかしら?」


 訝しげに、ネアは不機嫌な表情険しくあった。

 傍から聞いていたのは1人。イロハだ。

 あれ以来、2人は女性の楽園こと新たに建てられた街で身を潜めていたが、いつまでもそれを続けるわけにはいかない。

 日に日に新たな情報がネアに届く。そして、最もネアをその場から移動させるきっかけとなったのは、クロトからの最後の連絡だった。

 アイルカーヌからミヤビにへと移動する最中。クロトから現状報告としてネアに連絡が入れられていた。それがネアの重たい腰を起こさせる。

 

「なに? なんかあったのお姉さん?」


「このままじゃマズいってこと。

 クロトはクロトで進展色々とか……。

 なんでもアイルカーヌにいた残りの契約者2人が味方に付いたみたいで。

 ついでにミヤビにも行くって言ってたわね。エリーちゃんの【呪い】の手掛かり探るってー」


「ふーん。よくわかんないけど、姫ちゃんのどうにかできるかな?」


「さーてね。そこまであの魔女さんが簡単なものにしてないとは思うけど。

 にしても、このままじゃまるで私が遅れを取ってる感じがしてならないわ……」


「どゆこと?」


「クロトの方で色々話が進みすぎってことー!!

 これでもお姉さん、情報屋よ!? この私が、ここ最近情報提供どころか、逆にクロトに先を越されているっ。

 それって、私のプライドに関わることだわ! こっちでも動かないといけないってやつ!」


 1人。ネアは自身に突き付けられた危機感に喚くも、イロハとしては首を傾げるだけにすぎない。

 だが、情報屋として遅れるというものは死活問題でしかない。人々は何より最新の情報を欲するものなのだから。

 クロトは今やネアの情報よりも自身の行動で得た情報頼りに動いている。

 これを情報屋として、ネアが危機感を抱かないなどあり得ない話だった。

 そう語りながら、ネアとイロハは街を離れ、とにかくアイルカーヌ王都を目指す。その真っ最中だったのだが。


「ところでお姉さん。何してるの?」


 休憩かどうか。水場のある開けた場所に留まっていた。

 一刻も早くクロトたちと合流し、名誉を回復させようとしていたネアが、何か物を取り出しながら妙な行動をとっている。

 用意されているのは、長いロープ。


「ん? 何って、クロトが他の契約者を仲間に引き入れたんでしょ?

 情報が正しければ、後は眼鏡野郎? と、この前襲ってきた水のお嬢さん。

 せめてこっちでもどっちかの戦力を削いでおきたいと思って」


「……?」


「要は、どっちかを捕まえちゃえってこと。

 そこで問題。捕まえるなら、何をどうすればいいと思う?」


 問いを出しながら、ネアは縄を手にイロハにへと歩み寄る。

 唐突な問題に、イロハはあっちこっちを見ながら考える。


「うーん。なんかー、餌とか?」


「はい、正解。

 ちょっとは学習してんじゃない、野郎のくせに」


「えへへ~。お姉さんに褒められたぁ……でいいのかな?」


「となると、相手が欲しいと思えるものを餌にするのが一番よね?」


「うーん、となるとぉ……。

 あ。魔武器とか狙ってたよね。それで誘き寄せるの?」


「まあ、そんな感じね」


 珍しく、ネアからイロハに近づけば、褒めるついでに何かをしている。そして、ネアは直ぐにその場を離れ、笑みを浮かべてから勢いよく手にしていたロープを引く。

 すると、ロープは素早くイロハを絡め、近くにあった泉の上に吊るし上げられる。


「えええええええええ!?」


「というわけで、これ以上ない餌になってもらうからよろしくー♪」


 ネアがイロハに近づき、事前にロープを絡めていたのだ。

 見事に宙吊りにされ、イロハは突然のことに納得がいかない。困惑しながらどうにか藻掻きゆらゆらと揺れる。


「わーんっ、酷いよお姉さーん!」


『だからその電気女とは一緒に行動したくないのだ……。

 いい事よりも悪い事の方が断然に勝っている』


「いいじゃないのぉー。

 餌といっても誘き寄せればいいだけだから、べつに喰われるわけじゃないんだから」


『ほほっ。愉快愉快。

 これがフレズベルグならさぞもっと愉快よのぉ』


「メフィ様が白野郎と代わるのを御所望だってー」


「うーーーーん、だってさフレズベルグ……」


『誰がこのような無様な状況で代わるか愚か者め!!!』


「ええ~……」


 イロハの想い届かず。もはや諦めて吊るされる事を選ぶ。

 と、その時だ。

 しずかだった真下にある水面が、突如泡を吹くかと思えば激しく立ち上り、イロハを一気に呑み込む。

 水が引けば、ずぶ濡れのイロハはぶるぶると顔を振って水気を払う。


「えー、今後はなにー?」


 次から次へとイロハに不幸が押し寄せる。

 吊るされた後に水をかけられ、何が起きたのかと下を見下ろす。

 そこにはネアの姿は見当たらず、代わりにいたのは……。


「よっしゃー! ()()()()()2()()、見っけ―!」


 意気揚々と、イロハを見上げているのは魔槍使い――オリガだ。

 いつでも戦えるようにと槍を構えている。が、状況を頭が整理してみれば、オリガは首を傾けて眉を歪めた。


「……て、あれ? 

 なんで吊るされてるわけ? ドジったの?」


「好きでこうなってるんじゃないもん!

 あと、数字で言われるの、なんかやだー!」


「えー。だってあっちも不死身くんだしー。そっちも不死身くんだしー。

 2号でいいじゃん」


「やーだー!」


 イロハは呼び名を気に入らないとずっと反発。オリガも同じように返すのみで、お互いに進展などなにもなく。

 

「も、もういいやっ。

 とりあえず、馬鹿みたいに動けないみたいだし、不死身くん2号は簡単に捕まえれたと!

 ふっふ~ん。どうだヘイオス。あたしだってやればできるんだ。


 あーはっはっは!」


 オリガは胸をはって、勝ち誇ったと笑い出す。それにはルサルカもパチパチと手を叩くも、どこか不安そうな顔をした。

 あまりにも簡単すぎる。運が良かっただけの可能性があるも、ルサルカはこの好機に疑問を抱く。

 そして、その不安は的中した。

 盛大に勝ち誇るオリガの肩に、ぽんと手が置かれる。

 その時、オリガの笑いがピタリと止まった。


「お久しぶりお嬢さん♪」


 姿をいつの間にか潜めていたネアだ。油断にオリガも気付くのが送れ、酷い悪寒が背筋を襲う。

 同時に、全身にピリリとした刺激が駆け巡り、それに身震いすらした。

 ぎこちない歯車の様に、オリガは恐る恐る後ろを振り返る。


「……な、なんで……っ」


「申し訳ないけど、本当に引っかかるなんてお姉さんも驚いてるくらいだから……。

 でも、まずは1人。……よね?」



   ◆


「と、いう事があってねー」


 ネアは地に降り立つと、透明の瓶を見せてくる。瓶の中には、その中にぴったりなサイズで小さく収まったオリガがいた。


「……なっ」


「うぅ……。ヘイオス……ごめーん」


 反省のつもりか。オリガは泣きながら正座でいる。

 

「それで手土産もできたところで、そろそろ戻ってきたと思うクロトたちを探してたんだけど……。

 ………………これ、どういう状況なわけ?」


 低い声で問いかけ、ネアは紫の瞳で状況を確認する。 

 意識不明が3人。情報に該当する人物1人と不明1人。そしてつい先ほど激高していたクロト。

 この周辺に近づいた時、ネアは他とは違う大気の乱れを感じていた。幾分かは和らいでいるが、何か大きな乱れがあったのは事実。この場にいる人物でそれが可能な者もいるため、色々と想像がついてしまう。

 そして、おおよそ事情を把握した。と、ネアはため息を吐き捨てる。

 瓶をイロハに預け、ネアはゆっくりと歩みだす。

 

「……クロト。なんとなくアンタが怒る理由はわかった。

 でもね、いったんその頭を冷やしなさい。


 こっからは話し合いで片を付けましょう」


「ハァッ!? ふざけんなネア!

 状況察してそれとか、ざけたこと――」


 ――ゴッ!


 一瞬だった。反論するクロトの頭部にネアの拳が落ちる。

 またしてもクロトは頭を押さえ言葉を封じられるしまつ。


「それ、エリーちゃんが起きてても言えることなの?

 ふざけてんのはアンタの方でしょうが!!」


「~~ッ」


「……それと」


 夜闇に紫電が走る。

 次にネアの姿はヘイオスの前にあり、呆気にとられた隙をついてエリーを奪い返す。


「エリーちゃんに触れんじゃ――」


 刹那。ネアに一閃が飛ぶ。

 一瞬一瞬のできごと。ネアは怒鳴りつつも、自身に飛んできたモノを鋏の片割れて薙ぎ払い、


「――ないわよ(けだもの)

 あと……そこの気持ち悪い野郎も。次攻撃してきたら動けなくしてやるんだから……っ」


 止まりそうになった言葉を言い切る。

 そして、瞬時にネアに気付き攻撃を仕掛けたカルトを威嚇。その殺意丸出しな眼光に、思わずカルトは恍惚な笑みを浮かべる。更にはヘイオスになにかしらの同意を求める様に、子供のようなキラキラとした眼差しを向けた。


「その「やっていいか?」という目を私に向けるなカルトっ!」


 ネアにへと向き直れば、彼女は既にエリーだけでなく、リキとルゥテシアをも2人から遠ざけて元の位置に戻っていた。

 

「…………速いなっ。

 雷を扱うあたり、オリガが苦戦するわけだ」


『驚くほどで目で追えませんよ……。

 ……あれしかも半魔ではありませんか。

 なんの因果か、片割れの魂は紫電獣。そして契約悪魔はメフィストフェレス。

 獣同士と相性は良さそうですな……』


「……魔鋏使い。話し合いと言ったな?

 悪いが交渉は決裂している……。

 そちらは良いが、魔銃使いは我々とはどうしても意見を曲げないのでな。

 できれば仲間内で説得を頼みたい」


「は? 眼鏡が話の流れ作んないでよ。

 アンタたちの行動理由もクロトから聞いてるわよ。

 【聖杯】の破壊。そして【呪い】解除の阻止。

 悪いけど、私もクロトと同意見なんだから。


 ……それでも、この場でこれ以上の争いは無意味すぎるわ。


 この場で誰よりも、エリーちゃんがそれを望んでいない」


 ネアは察しているのだろう。大気の乱れを引き起こしたのは【厄星】なのだと。

 そうせざる負えなかった事態。それはエリー自身を追い詰める結果ともなってしまう。

 一度合流した時にも、エリーは戦う意外にどうにかできないかと、ずっと悩んですらいたのだ。その気持ちを無下にできず、ネアは今この時、全員が集う事の出来た場をもって、その決断を下した。


「お互い、色々まだわかりきっていない事もあるでしょうし、徹底的に語り合いましょ。

 それともクロト。私のこの提案って、そんなに間違っていることかしら~?」


 再びネアはクロトに問う。笑顔の裏で、また握りこぶしを作っている。

 それは、反論すればまた殴るぞ、とでも言っている様にしか見えず。クロトは黙る事で反論はないと示す。冷静に考えて、ネアの提案は間違っていない。ヘイオスたちは大雑把な説明のみで、事細かな詳細を語ってはいない。一番は、何故【呪い】解除をそこまでして拒むのか。その辺りを徹底的に吐かせる必要はあった。

 それでも、どうしても壁というモノはあり、異論も存在した。

 話の邪魔に入るのはカルトだ。

 悩むヘイオスに、カルトは率先として言い放つ。


「ヘイオスくん、悩む事なんてないですよ。

 キミは魔女様のために頑張っているのですよね?

 なら、……私を失望させないでほしいです」


「……しかし、カルト。

 当初の目的である遺産は全てこの場に揃っている。

 話し合いでどうにかなるなら、犠牲はだしたくない」


「あ~、あまいですよぉ。キミはやっぱりあまさが抜けませんね~。

 では、私がやります。

 御安心をヘイオスくん。私なら相手が何人でも対応いたしますよ?」


 1人。カルトだけは話し合いを拒絶していた。

 話にならない相手が1人いるだけで、その存在は大きく目立ってしまう。

 ネアは呆れてため息しか出ない。脅したつもりだったのだが、どうやらそれは逆効果でしかなかった。

 

「……ねぇ、クロト。できればアンタからなんかアイツも引き込めそうな話題、ないわけ?

 話を聞かない奴って、惹かれそうな話題にはのってくるものなの」


「んなこと言われてもなぁ……。

 あっちは俺もあんま知らねームカつく野郎としか…………」


 ヘイオスのことは少しわかっているつもりだ。しかし、カルトに至っては、逝かれた異常者という事のみ。ほぼ初対面な状態だ。

 わかるのはヘイオス同様の魔女崇拝者であることのみ……。


「……」


 クロトは気付いた。カルトもまた、ヘイオスと同じでしかない。行動の根源には魔女が関わっており、彼もまた魔女側の人間であるということ。

 ずっとヘイオスに言いそびれていたもの。クロトは魔女に頼る形に嫌悪感はあるも、それを言う決意をこの場で固める。


「……おい眼鏡野郎。お前、確かあの魔女の魂を探してたよな?」


「んっ。ああ……そうだが。そうお前にも言っていたな」


「アイツなら、今はエリーの中にいやがるぞ」


「――ッ!?」


 驚きを隠せず、ヘイオスだけでなくオリガすらもエリーを見た。

 探していた魔女の魂は、ずっと近くに存在していたこと。そして、それをバフォメットですら感知できていなかった事実。


「馬鹿な……っ。バフォメットですら感知できていないのだぞ!」


『この距離でもわかりませんよ!

 それほどまで奥底にいらっしゃる……ということなのでしょうか?』


 信じられないでいるだろうが、実際にクロトも、そしてネアもイロハも対話している。事実以外のなにものでもないのだ。

 問題が、この一番大きな情報に対して、カルトがどう行動するかが重要となる。

 案の定、カルトも動き出した。


「……ヘイオスくーん。

 ちょーーーーっと、いいですか……?」


 ヘイオスは呼ばれて思わず振り返る。不意に、そして無意識に振り向いた先で、ヘイオスが見たのはカルトの顔ではない。

 突如強い衝撃と金属音が耳を貫く。ヘイオスはわけもわからず、咄嗟に剣を手にし衝撃を受け止めていた。

 自身を襲ったのは、カルトの鱗である刃だ。

 戸惑うヘイオスを力で押し負かし、ヘイオスの膝を崩していく。


「……ッ!? カ、カルト……!?  

 いったい、何を……ッ」


「私、ヘイオスくんのことは好きですよ? 大好きです。

 それでもですねぇ……、私には譲れないものがあるというのも、よーくご存じですよね?」


「……ッ」


「魔女様の事は、本当に別件すぎます。

 困りますよね~。私に内緒で、そんな調査をしてたなんて……。

 私、ヘイオスくんよりも断然魔女様推しなもので~、いくら温厚な私でも怒りますよ?

 魔女様の秘密事なんてそれこそもってのほか。一早く教えてほしかったですよぉ。


 …………ひょっとして、私のことなめてます?


 魔女様亡き今、私に指示を出せるのはヘイオスくんで、ちょっと変な勘違いしてません?

 選ばしてあげますよヘイオスくん。

 今この場で私に殺されるか、洗いざらい吐くか……。

 事としだいによっては、ヘイオスくん関係する全てを亡き者にして差し上げます。

 それくらいこの罪は重いですよ~?」


「……っ、わかっている。

 段階的にと思っていただけだ。後でしっかり話す。

 悪かったから、その刃をどうにかしてくれ……」


 ――こっわ……っ。

 

 傍から見ていた全員がそう思った事だろう。

 ずっとへらへらとしていたカルトが、途端に豹変して平気で味方であるヘイオスに刃を向けている。魔女の話に喰いつくとは思っていたが、ここまで態度を急変させるとは思っておらず。それに振り回されるヘイオスが哀れにも見えてくる。

 謝罪が済めば、カルトはパッと刃を引っ込めていつもの笑みに逆戻りだ。


「素直なヘイオスくんは本当に可愛らしくて、私大好きですよ♪

 と、いうわけで私あちらのお話にとーっても興味が湧きました!

 その時にゆっくり話してくださいねヘイオスくん」


「……わかってる」


「あ。でも、もしあちらのお話が詰まらないようなら……、容赦しないので。

 どうかキミたちもそのつもりでいてくださいね♪」


 次にカルトの殺気はこちらにへと向けられた。

 話の内容では休戦も一瞬にして絶たれるというつもりなのだろう。それには魔女本人を出せばどうにかなるだろうが、慎重にはなるしかない。

 

「だ、そうだ。

 どうにか話し合いには持ち込めそうだなネア」


「そうね。とりあえずまだ理解力あって良かったわ。

 じゃあ、場所を変えましょうか。

 こんな殺風景な場所なんて嫌だし、全員が起きてないと意味ないモノ」


 と。進展により、ネアは虚空に鍵を突き立てる。それはメフィストフェレスの宝物庫の鍵だ。

 鍵を回せば、空間が歪み扉が開く。

 

「この先に入るなら以下のルールは守りなさい。

 

 ――私の言う事は絶対。


 例外は認めないわ。争ったりしたら不死身じゃなくてもぶった切る。

 それくらいの覚悟はあるに決まってるわよね?

 だって話し合いの場なんですもの」


「……致し方ない、か」


「ルールは破る前提なのですが。

 まあ、魔女様の関与もありますし、とりあえずはお付き合いいたいますか♪」


 渋々だがヘイオスもカルトも了承。

 イロハや捕らわれ状態のオリガも断る理由はなく。クロトも同様。

 残りの3人も断るとは思えず、誰もが同意したものと見なされた。


「じゃあ、おまけもいるけど、契約者に愛しのエリーちゃん。

 皆そろってごあんな~い♪」


 その後、一同の姿はその場から消える。

 静かな夜と、吹き上がる土埃だけが虚しくその場には残った。

 

『やくまがⅡ 次回予告』


ニーズヘッグ

「なーんか、とりあえずは一段落ついたって感じか……」


フレズベルグ

「そうなるな」


ニーズヘッグ

「ああっ、フレズベルグぅ~。

 しばらく会ってなかったからフレちゃん成分が足りてない~~。

 ギュッとしていい?」


フレズベルグ

「お前の頭をか?」


ニーズヘッグ

「潰す気かよ!?

 にしても、こっちも大変だったが、そっちも大変だったなぁ。

 なんせあの電気女と、それに強欲女まで一緒だろ?

 大丈夫だったか?」


フレズベルグ

「私は一切外に出なかったからな……。

 まあ、イロハが色々させられていたな。

 本当にあの女は使い勝手が荒い」


ニーズヘッグ

「へーーーー(どうでもいい)。

 でもよくあの水女捕まえれたよな。

 なんか秘策とかあったわけ?」


フレズベルグ

「それに関しても、あの異端者がイロハを餌にして誘き寄せたのだ」


ニーズヘッグ

「うわ~…………(ドン引き」


フレズベルグ

「実際に捕まえたのは異端者だが、すぐ終わったな。

 どうもあの瓶、魔道具の一種らしくメフィストフェレスの宝物庫にあったものだそうだ。

 対象を瓶に納まるように収納できるらしいが、恐ろしいものだ」


ニーズヘッグ

「何気にアイツの宝の山ってめちゃくちゃあるが、それ電気女が使えるってやつだろ?

 もう何準備されるかわかったもんじゃねーなっ。

 すんげー寒気すらしてきたんだが……」


フレズベルグ

「あの異端者ならもっと嫌な話があるぞ……。

 どうもメフィストフェレスは強化に特化した魔武器らしくてな。

 以前もそうだが、契約者の欲で強化される。

 そのせいか、魔力解放なしでも同等の強さに跳ね上がっているようで……。

 もう……あれだ。

 鬼に金棒……という感じだ」


ニーズヘッグ

「え。こっわ……。

 そこまで人外になったわけ?

 この前やりあってたけど、想像以上だな。

 今度から電気女をバケモンって呼ぼ」


フレズベルグ

「別に構わんが……やられてもしらんぞ?」


ニーズヘッグ

「……大丈夫だ。聞こえないとこで言っとくから」


フレズベルグ

(あ。逃げたな……)


ニーズヘッグ

「次回。【厄災の姫と魔銃使いⅡ】第三部 六章「星の聖杯」。

 さて。やっと魔女に色々吐かせる時がきたな」


フレズベルグ

「全て語るとは思えんがな……」


ニーズヘッグ

「それは……そうだな」

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