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厄災の姫と魔銃使いⅡ  作者: 星華 彩二魔
第三部 三章「異端の0」
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「苦への道」

 エリーは負担もあってかしばらくは起きないだろう。そのため、クロトが抱えてやる。

 本堂の外に出てみれば、霧はすっかり晴れていた。外では巫女とルキが待っており、こちらの姿を見かければ巫女が血相を変えて駆け寄ってきた。


「皆さんっ。それにリキも、ご無事でしたか……」


「巫女様。ご迷惑をお掛けしました。クロト殿もエリー殿も無事です」


「いいのよリキ。皆さんの無事が何よりだもの。……それと、私の方からも謝罪をさせてください。

 エリーさんの不調は、もしかしたら私に原因があるかもしれません。

 彼女の中を覗いた時に、おそらく私が【呪い】の均衡を乱してしまった。

 私を利用して、外への道を繋げたのかもしれません。

 お役に立てないどころか、この様な事態になってしまい、本当に申し訳ありませんっ」


 巫女はまた深く頭をさげる。

 予期せぬことはよくあること。【呪い】が危険なことも理解はしていた。それに、巫女に頼ったのもこちらだ。咎めることはできない。

 クロトはこうやって誠心誠意謝罪されるのは苦手であり、すぐに謝罪を打ち切らせた。


「……もういい。こいつの【呪い】は別格だからな」


「……お急ぎのご様子ですが、できれば今回のお話で幾つかよろしいでしょうか?」


 元々、巫女との要件後はすぐにアイルカーヌに戻る事となっていた。

 クロトは少しでも情報があればと、巫女の話にのる。


「正直、エリーさんは見た目とは違い、とても器の大きな方です。

 あのようなモノをその身に宿し、尚且つ普段は外に出さないようにしておられるのですから。

 ですが、少しのことで不安定にもなってしまう。とても危うい身でもあられます。

 今後も、クロトさんが良き支えになっていただける事を願います」


 【呪い】。【厄星】などはエリーの感情に大きく作用するものだ。負の感情は【厄星】を呼び、望まぬ形で【願い】を叶えようとする。エリーもそれを理解し、当初よりもその心構えが強くなっている。とはいえ、感情というものは自身の意に反して働いてしまうこともある。だからこそ、支えてやる者が必要になる。

 また、【厄星】や魔女の力の暴走が起きないようにする。それがクロトがなすべき事であると、本人も再度胸に強く言い聞かせる。

 暴走の末路。それを一番痛感するのはエリーなのだから。

 

「エリーさんには、できれば感謝もしたいところだったのですが」


「……?」


「いえ。【呪い】の影から私を救ってくださった方がいらっしゃって。

 でなければ、私の意識は戻ってくる事はできなかったので。

 ……あれは、エリーさんではなかったのでしょうか?」


 窮地を救われたと巫女は言う。

 エリー以外にそんなことができた者がいるとすれば……。

 頭の片隅で1人の姿がよぎる。今もエリーと同化し、必要に応じて語り掛ける存在。 

 

「……まさか、魔女の奴か?」


『どーだかなー。姫君が正気を取り戻した時にはいたみてーだぜ?

 にしても、魔女が他人を救うとはとても思えねーがな』


 魔女の目的が未だに理解できない。 

 【呪い】の解除を拒み、それでもエリーには助力し続ける。これもその一環なのか、本人に確認できなければ真相はただ闇に沈んでしまうのみ。

 

「とりあえず、コイツが起きたら伝えといてやる」


「ありがとうございます。

 それとですね。最後に、今後の占いの結果をお知らせしておきます」


 先ほどまでの一件で忘れかけていた。巫女は最初に過去と現在を占い、見通した後に未来の占い結果を告げるもの。

 巫女は最後にめくられるはずの紙を持ち出していたらしく、それをクロトたちにへと見せた。

 紙に浮かんでいたのは、天と地、そしてそこにたたずむ禍々しい人影は死神の様にも見えた。


「……凶兆です。今後、苦難が待ち受けていると思われます。

 私がこの占いで読み取れるのは、大きな苦難や終焉といったものです

 よくない事が起こるという予兆となります」


「……終焉……か」


 占い事は信じないものだが、これには他人事にも思えないものがある。

 エリーの【呪い】は終焉を引き起こす可能性もあるのだから、これがそれを予兆しているのかもしれない。


「こんなことになって、更にこのような結果までも出てしまい、とても申し訳ないと思っております。

 ですが、苦難を乗り越えることで、凶兆を終わらせ、新たな道を進む事もあります。

 ……私が皆さんにお伝えできるのは、これで以上となります」


 不安もあるが、クロトにとってエリーの凶兆と思わしき道はこれまでにも多くあった。何度その命が危機にさらされてきたことか。今更一つや二つの苦難があろうと、それで引き下がるような心構えはしていない。

 もしも、どうしようもない事態が起きたとしても。最後までクロトはエリーを見捨てないと決めていた。


「……わかった。だが、こっちは死と隣り合わせの日々なんざ日常茶飯事なもんでな。その程度で怖気づくほどじゃない」


「とても心強いです。それでは、お気を付けてお帰りくださいませ」


 巫女は日出に向かう道を開け、今後行くべき道を示した。

 この先にまだ希望があると信じ、クロトたちは前に進みだす。


「悪かったな。余計な事に首つっこませて」


「いえ。これが巫女として勤めなので」


「巫女様、それにルキも、ありがとうございました。自分は、またあちらに戻ります」


 本来ならこの場まで足を踏み入れる事はなかっただろう。少しでも故郷の地で過去の様に過ごせたのは、巫女のおかげでもある。渋々とはいえ、ルキも受け入れてはいる様子もあった。

 それにリキは感謝の意を伝える。


「また会える日を待っているわ。いつでも文を送ってきてちょうだいね、リキ」


「はい。時折送らせていただきます」


「あちらの事も教えてもらえると助かるわ。ルキにも少しは外の世界に目を向けてほしいから」


「……巫女様っ」


 照れくさそうにルキが怒鳴らずにいた。

 やはり巫女相手には噛みつく発言はしない様子。


「それでは行ってきます。ルキ、巫女様のことをよろしくお願いしますね」


「わかってるから、とっとと行けよ!」


「あら? それだけでいいのかしら?」


「~っ。……べつに、いつでも戻ってきても……いいんだからなっ。里の住人も、次は立ち寄ってほしいって、……言ってたし。団小屋の婆さんとか、甘味処の店主とか……」


「……」


「だからっ、色々お前は気にしすぎなんだよ!!」


「どちらかと言えば、ルキの方が気にしすぎているような気もしますが……」


「――とっとと行けぇ!!」


 顔面真っ赤にして、ルキはリキの背を強く叩いて前にへと押す。

 待っているクロトもいる。リキはルキの言葉通りに前にへと向かう。

 これ以上の言葉はいらない。その背を見送る姉と弟の姿は、目が見えずとも感じられたのだから。

 

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