接触
ー踏み込んだー
同時に、空間が凍りつく。
刃と槍がぶつかる、直前、熱が削がれた。
音が、消える。
視界の中心にいる少女の周囲だけ、世界の温度が切り離されたかのように静止していた、炎が揺れない。
空気が動かない。
接触する、鋼ではない、骨でもない。だが確かに、槍と刀が拮抗する。
瞬間、衝撃が走った熱が逆流する。出力が“押し戻される”。
「……」
言葉は出ない、だが、結論だけが浮かぶ。
異常。この個体は、“焼けない”。
距離を取る、着地。同時に床が凍りつく。
少女が無駄のない動きで構え直す、刀の刃に霜が走る。吐息すら見えない。
熱と冷却が、干渉し合っている。
「……なぜ」また、言葉が漏れる。
自分でも理由が分からない発声。
少女は答えない。
ただ、わずかに視線が揺れていた。
次の瞬間、消える。
違う、高速移動ではない。空間が滑る。
斬撃。
肩、腹部を連続で斬られる。
肉体を炎へ変換する。だが、完全には間に合わない。刃が“通る”。
血が噴き出し、同時に蒸発する。
解析。
冷却が先に作用している、燃焼速度を上回る“停止”。
対処不能。
違う、”優先度が違う”視線が再び少女へと固定される、戦況ではない。対象そのものが
「……重要対象」
小さく呟く。
少女の足が、一瞬だけ止まった。
次の瞬間、踏み込む、直線的な一撃。
迎撃するため、槍を振るう。
しかしなぜか減速する。
意図しない挙動。結果、刃が肩を裂いた。
遅延。
判断のブレ、通常あり得ない。
「——っ」少女の口から、わずかな音が漏れる。
その声。脳内で、何かが弾けた。
白い空間。
檻。
冷たい床。
そして
“触れてくる手”
熱ではない。
痛みでもない、ただ心地よかった、初めての異質な感覚。
「……あったかい」
声、同一。目の前の少女と一致。
思考が止まる。
動きが止まる。
少女も、止まる。
二人の間に、音がない。
「……零緖?」
その名前。
理解できないはずの音が、
なぜか“意味”として認識される。
胸部に強い圧迫、鼓動が乱れる。
原因不明。
「……不明」だが口は開く。
「識別:優先対象」
違う違う違う。
何かが違う、言葉が足りない。
だが他に出せる語彙がない、少女の表情が、はっきりと歪んだ。
次の瞬間
氷が広がる、大地ごと,,,違う空間ごと固定。
「排除対象、再設定」声が冷たくなる。先ほどまでの揺れが消えていた。
「感情の干渉を、排除」
完全な戦闘状態に移行する、理解。
このままでは”消される”
槍を強く握る。
内部構造が変化し肉体の一部が収束する。
体積の減少、許容範囲内。
出力上昇、そして
「——屍焔槍」
瞬間、炎が形を変える、槍が“完成”する。
同時に重心がズレる。
重量減少、肉体の一部が欠落。
だが、不安定ではない、むしろ、”正しくなる”。
戦闘形態へ移行。視界が、冷える。
相手の動きが、見える。
少女の踏み込み、氷が展開される。
刃の軌道。すべてが、見える。
「……え」
少女の動きが、わずかに遅れる。
その隙に踏み込む。
接近。衝突。
炎と氷が、正面からぶつかる。
爆発は起きない。ただ、“削り合う”。
消し合い均衡する。
距離が消え目と目が合う
至近距離
呼吸。
温度。
感じる違和感と懐かしさ。
「……」
少女が、何か言いかけるその瞬間。
銃声が鳴り響く
横からの一斉射撃。
企業からの増援、隊員たちが私たちを囲む。
「対象2名を確認!」「両方排除対象へ変更!」
判断。状況変化。敵が増えた。
だが視線は動かない。「……優先対象」
もう一度呟く。
少女もまた、こちらを見ていた、迷いがある。
だが、刃は下がらない。
選択を迫られている。撃たれる。回避可能ではない。
その瞬間、少女が動いた。
こちらではなく銃弾の方へと。
氷が弾道を遮り防ぐ。
一瞬の静止。
確定する。
この個体は“敵ではない”
論理ではないだが、結論は出た。
ならば行動は一つ。
炎が膨れ上がり再び戦闘が始まる。
だが今度は少しだけ、何かが違っていた。
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