表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
36/37

35.アニマペット・リコ

 階段を一歩一歩進む。


 高所恐怖症だったなら、ちょっと耐えられないかもしれない高度に達した階段は、もはや眺めが壮大過ぎた。


 連戦でどえらく疲れた。


 なんかそれっぽいことを言われた気がするが、結局何で戦わなけりゃいけなかったのかよくわかんない。


 Aペット達のダメージも深刻だった。


 それでも私は回復アイテムをしこたま投入して、最上階へやって来た。


 そこにはようやくダイアが待っていて、空中に浮かび眠りについているらしいリコとリコリスを穏やかな表情で眺めていた。


 ダイアは私を振り返る。


「おや? 本当に来てくれたんだね。ありがとう。君の尽力で、今回のアニマペットは素晴らしいものになりそうだ。ここだけの話……最後の試合は自信をつけてもらうために君達には負けてもらうことになっていたんだよ。ゴネンネ? でも……ここからは任意だ。

見届けることにしたのなら、生まれたアニマペットの完成度を君で試させてもらうことになる―――ほら、完成するよ!」


 リコとリコリスが輝いていた。


 そして二人は一つになって生れ落ちる。


「君では決して勝てないだろう。それでも挑むのなら挑んで欲しい。さぁ、新たなアニマペットよ。君の力を見せてくれ」


 リコリスの身体を手に入れた新たなリコは目を開けて私の知る彼女らしい挑戦的な笑みを私に向けた。


「来てくれたんだ。ありがとう―――私はやっとアニマペットになれた。全部あなたのおかげ」


「……」


 主人公は答えない。


 私は答える。デジタル版のがかわいかったよと。


 いや、別にあなたのAペットも素敵ですがね? 


 人には一人一人キャラというものがありまして、合体させればいいと言うわけでは……あ、私の感想なんてどうでもいいですね。申し訳ねぇ。


「……でも付き合ってくれるのならもう一度だけ戦って。私とこの子、一つになった力がどれほどのものか、あなたにも見せてあげる!」


 だけどさっき勝ったじゃん私。


 強制イベントの負けなんて負けに入るわけないやん?


 しかしアニマペット・リコは勝ち誇った笑みで勝った気でいるようだった。


「どうやらいよいよ最終戦―――ちょっと待って、トイレと飲み物とって来よう」


 準備が出来たら始めるからそれまでちょっと待っててください。


 数分後、では改めて最終戦である。




 今回はフルメンバーだが、あの時の負けイベントを払しょくする機会、そう捕らえてOKか?


 ならば、クレソンよ。やってやりなさい。


 クレソン最終決戦仕様は、有り金のすべてをはたいて、オンラインで買って来た特別衣裳である。


 あえて言わせてもらおう。私はぬるいゲーマーであると。


 普段はレベルを上げ、圧倒的なレベル差でいかにもラスボスですって顔して襲い掛かってくる強敵を叩き潰す。


 激戦を演出しなければならない物語じゃ中々できないバランスブレイクこそ、ゲームの真骨頂ではあるまいか?*諸説あり


 バトルに突入すると、見知った機体は刀を構えた。


 しかしリコちゃんの姿はなく。


 あの燃えるような目の輝きは今、彼女のAペットリコリスに宿っている。


 敵の属性は刀。白い鎧が鮮やかだ。


 対するクレソンは剣とパターン黒。


「武器の属性は相性良し。色はお互い弱点で最大火力で殴り合う」


 剣を構えるクレソンに、私は指示を飛ばす。


 スピードの速いクレソンであれば、こんな局面楽勝のはず……。


 選んだスキルは威力に物を言わせたい。


 サクリファイススラッシュは光を纏わせた巨大な刃で、相手を切り裂くスキルだ。


 火力としては、間違いなく最強だ。


「よしいけ!」


 ズダンと派手なエフェクトが砕ける。


 敵も砕けてくれればいいけれど、そこはさすがにラスボスだった。


 刀を半身で構え動き出せば、残像が空中に剣舞のように舞う。


 ゆるりと向かって来たパーフェクトリコは豪快に人のHPを持って行った。


「さぁ、受け止めて! これが私の到達点だよ!」


「……!」


 なんてこったいダメージがえぐい。


 調子に乗って弱点同士で殴り合うのはやりすぎたかも?


 動揺する私は、信じられないモノを見た。


 なんと先ほどと同じ動作で、リコちゃんが切りかかって来たのだ。


「一ターン二回行動だと……!」


 ターン性バトルに置いて、それは反則だろう!?


 ラスボスだからってやっていいことと悪いことがあると思う。


 見損なったよリコちゃん!


 意味もなくボタンを連打したが、特に意味はない。


 やはりスッパンとHPゲージが削れるだけだった。


 あっ。これはやばい、死んでしまう。


 ならば若干の抵抗があるが……こちらも奥の手を出させてもらおう。


「プレイヤーにだけ許された特権……そうこれが!」


 焦って連打気味になりながら、タップ。


「いけ! キャロット!」


 いったん引っ込めて受け止める。


 小柄な少年だが、硬そうな全身鎧と身の丈を隠すほどの巨大な盾を構えるキャロットは一撃では沈まない。


 激しくエフェクトが弾け、襲い掛かる2連撃をもってしてもキャロットは健在だった。


「流石やん!」


 そこですかさず回復アイテム。クレソンのHPバーは猛烈な勢いで元の色に戻ってゆく。


 私は全回復する回復アイテムは、こういう最後の最後のチャンスまで取っておく派だった。


 さて仕切り直しだ、リコちゃんよ。


 ここから先は泥仕合……しかしアイテムの貯蔵は十分だ。


 襲い掛かる刀の前に、キャロットは使命を全うした。


「……! いけ! スピニッチ!」


 ごっついショットガンを携えたスピニッチは見事なスキンヘッドを輝かせ、いつにも増してアウトロー度が跳ね上がっていた。


 完全武装だが……しかし、防御力に置いてキャロットに劣るスピニッチでは時間稼ぎもままならない。


 しかし私はすかさず、攻撃力バフのアイテムをクレソンに使用した。


 ターン性とは非情である。


 迫りくる刃を止めるすべなど、スピニッチに残されてはいなかった。


「ぐっ……行ってこい! ブロッコリー!」


 続いて飛び出すブロッコリーは、全身をフルフェイスのアーマーで固めたサイバーパンクファッションだ。


 そこにビームの手斧を持っていれば、怪しいスペースアウトローである。


 こんなに強そうなのに、たぶんこの戦いではどうしようもない。


 だから私はもう一つ攻撃力増加アイテムでクレソンを高めることに費やした。


 たった2ターンだ。


 しかし掛け替えのない2ターンだった。


 そして……最後のトマッティにはとっておきの仕事があった。


「喰らえ! トマッティボム!」


 とっておきの自爆である。


 もう一回バフを積むか悩んだが、ダメージは一度でも入れておかないとさすがに仕留められる気がしない。


 そして自爆は間違いなくトマッティの最大の火力だ。


 だが一つ権懸念はあった。その懸念はしかし、間違いではなかった。


『ダメだよ。自爆は。制限をかけさせてもらう』


「ひぇっ!」


 響いたのはダイアの声だ。


 ラスボスでこの便利機能が普通に使えるのだろうか? と思ってはいたが、ここにきて初の制限か。


 爆発はした。トマッティはトマッティをぶちまけた。


 不幸中の幸いはダメージがゼロではなかったことだろう。しかし今までより、明らかにダメージが少ない。


 そして貴重なトマッティは行動不能に陥った。


 託せるのは最後の切り札だけだ。


「頼むぞクレソン!」


 そしてようやく全快のクレソンが降臨する。


 まだ……分は悪かった。ちょっとレベル上げ頑張ってたつもりだったけど、まだ足りなかったのかもしれない。


 私の方も、とっくの昔にテーブルの上のコップは空。


 興奮しすぎて、息切れが激しい。


 しかしこのままなら勝てる―――そのはずだ。


 そんな確信が芽生え始めた時、パターンに変化を起こしたリコに私は呪いを吐きかけた。


「私は負けない!」


 リコの目が赤く輝き、その背後に月が弧を描く。


「新月の舞!」


 リコの叫びと共に刀の刀身が消失し、無数の斬撃がクレソンを襲った。


「!!!」


 だが光の軌跡は、クレソンに命中しなかった。


 回避率を上げる。


 そんなお祈りみたいなウエポンスキルが運命の女神を味方につけた。


「クレソン……ラストだ。サクリファイススラッシュ」


 クレソンの最後の一撃は敵HPを、綺麗さっぱり消し飛ばした。


「……フッ。終わった」


 ストーリーは進む。


 リコは一撃を受け、火花をまき散らしながら地面に転がった。


 身を起こすリコの表情は悔し気で、睨むようにクレソンを見ていた。


「私が……負ける? さっきより……今までより……はるかに強くなったはずなのに?」


 負けを認められないリコは、画像が乱れる身体を無理やり起こして、こちらに向かって突撃してきた。


「そんなのダメだ!」


「そこまでだ」


「「!!」」


 突然シールドが進行方向に貼られて、クレソンとリコははじき返される。


 何が起こったのかと戸惑うリコの前に現れたのはアニマペットダイアだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ