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32.まさかの結末

 敵を倒し、経験値と資金を得る。そう言う工程を作業と呼ぶ人もいる。


 言ってしまえば必要な工程なのだが、そう感じさせない塩梅がストーリーへの没入感には必要なのだろう。


 ただRPGを問題なく進めるには、切り離せない。いかに相性が存在しようとレベルの壁には敵わないと私はそう思う。


 ぶっちゃけると恐ろしく地味なのだが、結局ここがスムーズにストーリーを楽しむには重要な所でもあるので手が抜けない部分だった。


「ズッ……ズズッ……」


 でも私はこういうコツコツ作業嫌いじゃないよ。


 もうなくなってしまったエナドリを舐めるように啜りながら、私はレベリングを楽しんだ。


 そして最期にトマッティが人形バグを軽く粉砕出来ることを見届けた私は、ようやく最低限の準備が出来たことを確信して塔を見上げた。


「よし……こんなもんだろう」


 鍛え上げたAペット達は、どことなく屈強な戦士になったようにも見えた。


 うん、確実にひいき目。


 でも強くなったよ。おかげでステータスへ振れるポイントはすべて手にいれることが出来た。


 最終決戦の地、ホープタワー。


 やはり受付はボイス付きで羨ましかった。


「ようこそホープタワーへ。ここは頂を目指す者が目指すべき道。貴方の作った器が命の頂に立つための場所。選ばれたあなた方の努力がここで実ることを願います」


 受付にいた白いスーツの美男子は、静かに微笑み頭を下げた。


 ひとまずスクショで残しておこう。


 美しいキャラメイクは今後も参考になる、欲を言えばテンプレが欲しいところだった。


 すっかり最近私のキャラクリエイトはネタ専門みたいになってきたが、私もまだまだ己の美的センスに見切りはつけていないので。


 ではいよいよアニマペットを決める祭典に乗り込んで、約束された勝利をゲットしに行くとしよう。




「クリエイターフェスに参加しますか?」


 もはやエンディングまでノンストップのはず。


 しかし今まで以上に困難が待ち受けていることだろう。


 しかしそのすべてを踏破し、歴史に名を刻む者。それは私である。


 エントリーすると、しかし予想だにしていなかった選択肢が私に付きつけられた。


「あなたが鍛えたAペット一体を選んでください」


「え? 一体選ぶの? それはなくない?」


 頑張って5体揃えたんだけど、それはなくない?


 不条理を感じる。


 抗議したいところだが、シナリオの一部だと言われると仕方がなかった。


 私は断腸の思いで、愛すべき我がメンバーからたった一人を選ぶ事になった。


「まぁ、結局一番レベルが高い子ですよね」


 クレソンに決定。


 そもそもお気に入りなんだから迷う余地なんてない。


 お色直しで黒属性に整えたから、ある程度幅広く立ち回れるはずだった。


 武器は衣装の色に合わせて、因縁のあるシャドウソードにしておいた。


 影を切り取ったような漆黒の剣はどうにも中二心を刺激されて、楽しくなってきた。


 スキルを吟味したかったが、結局相性を選べない以上は威力重視のスキル統一になった。


 メタ的な話をするとトーナメント形式とは言うがそう言うのは関係なく、ここから3回勝てばいい感じ。


 一回戦目。二回戦目は、それなりにレベルの高いAペットだったが基本素体の色違いである。


 レベルを上げた私達の敵ではなかった。


 クレソンの攻撃で一発で砕け散るHPバーは私に爽快感を与えてくれたが、特に語るべきところもないだろう。


「クレソン! パワースラッシュ!」


 敵データが砕け散り、勝負が決まった。


 これぞまさにレベル差による、徹底的な蹂躙である。


 ただ気になるのは、あまりにも歯ごたえがなさすぎる事か。


「1体で戦うから、バランス調整? それともレベルを上げ過ぎた?……まぁ強くなりすぎちゃったってことかな?」


 私もまた罪なプレイヤーだった。


 しかしここまでは既定路線のいわば前座だ。


 この先に待ち構えている相手はすでに知っている。


 3回戦は決勝戦。


 リコは当然そこに立っていた。


「いいね……。ありがとう。ここまで来てくれて」


 わお、リコちゃんの体から闘志が見える。


 クリエイターとして成長したリコ、そしてパワーアップしているのはもちろん彼女の相棒も同じだろう。


 相手も一体。


 もちろん今までの戦闘から私は相手の性能も把握していた。


「ここまで来て、言葉はいらないよね―――じゃあ、始めようか!」


 リコちゃんは相棒のリコリスを呼び出す。


 いつも以上に気合の入った白装束の侍は、決勝にふさわしいクオリティで迫力を醸し出す。


 さぁ行け。クレソンよ。お前の真の力を見せてやるのだ。


 バトルが始まり、私はクレソンに指示を飛ばした。


「クレソン! やっておしまいなさい!」


 ぽちっと。


 当然のように一撃!


 大いに貯めた経験値はこの瞬間のためであったといっていい。


 物理で殴れば、全てを解決できる!


 心なしか、いつものパワースラッシュ演出が輝いて見える。


 クリティカルの表示まで出たら、興奮で鼻血が出そうだ。


 私はそのHPバーが最後まで削り切った瞬間を確かに見た。


 よし。ゲームをクリアしてしまった。


 流石は私だ。世界は救われた―――とかではないけど勝ったはずだったのだが……。




「だめ! こんなところで負けちゃ!」


「えぇ?」


 リコちゃんの音声付ムービー……だと?


 派手に吹っ飛んだリコちゃんのリコリスは、光のエフェクトを飛び散らせながら一度は地に伏したが、クリエイターの呼び声に応えて立ち上がる。


「!リコリス!」


 そして瞳を青く光らせたリコリスは槍を構え、地を這うように加速した。


 え? 何この崖っぷちから力を取り戻すみたいな演出? どっちが主人公?


 そしてアップになるクレソン。


「?」


 クレソンはいきなりどこか不調がある様に動きが鈍り、目から光がなくなる。


 そこに飛び出すリコリスはムービーだけあってすさまじい迫力だ。


 どうやったって防げそうにない感じ。


 え?


 そして勝負は壮絶な一撃で私の相棒を下し、再決着した―――ムービーの中で。


『勝者リコ!』


「嘘つけよ!」


 そんなのってないじゃんよって、私はつい叫んでしまった。


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