31.ホープコミューンの冒険
私は自分の工房から出て、新たなコミューン、ホープコミューンのマップを確認した。
スペースコミューンはただただ広かったが、ホープコミューンはそんなに広くはない。
そしてコミューン中央、とっても高い純白の塔がこのコミューンの中心、ホープタワーだ。
クリエイター達はここで勝ち上がれば、ついに最高のAペット、『アニマペット』の称号が手に入るらしい。
タイトルを回収結構だが、リコちゃんに譲りたいとちょっぴり思うのに私が一番をかっさらう事は確定なので心苦しいことである。
何せ私、主人公なので。世界の法則は捻じ曲げられない。
おそらくトーナメントみたいなことをさせられるに違いないだろう。
負けるとテンションだだ下がりなのは間違いないから、5体目の期待の新人を手に入れた私は一発で死なないレベルに到達するために最後の調整に勤しむことにした。
塔の周囲には特に何もなく、ただここでレベルを上げろと言っているようなバグと遭遇するバトルフィールドが広がっている。
そして私の予想通りフィールドに足を踏み入れると、そう時間をかけずにバグが現れた。
しかし……いつもとちょっと様子が違う気がする。
マネキン人形のような、ロボットのようなモノがバグのエフェクトと共に地面から現れたが、これまたレベルが高かった。
「……気持ち悪!」
おっと、つい品のない悲鳴が出てしまった。
いけないいけない。ホラーがちょっと苦手なもので。
こんな華やかな場所での突然のホラー展開に私は大いにビビったが、バグはバグ、お化けじゃない。
刀を装備したトマティをいったん前に出して交代。
クレソンに入れ替えて、剣で殴ってみた。
私のメンバーで最強の戦力だ、ネームドならともかく、こんな道端で後れを取るわけがない。
剣が閃き、さっくり討伐……のはずだったんだけど、ズッバンと確かに命中したはずだったが……まだホラーは終わらなかった。
「あれれ? おかしいな? 倒せないぞ?」
硬い動きで人形型バグが動き出す。
「……ひぃ!」
ダメージが入ったからか、目が赤く光っているバグは腕を振り上げてバチバチ帯電させると殴りかかって来た。
大きくしなる光の鞭のような攻撃はクレソンを打ち据える。
あれれ? 半分以上いったな? おかしぞ?
いくらクレソンが柔らかいと言ったって、もう一発喰らったら死ぬ感じに私は血の気が引いた。
危ない危ない。すぐ死ぬすぐ死ぬ。
まさかのダメージ量でイベント戦闘だったか疑ってしまったくらいだ。
しかしどうやら普通に敵とエンカウントしただけで、更なる絶望だった。
慌ててパワースラッシュを選択して仕留めに掛かるがまだ足りない。
「これは……なるほど、まだ、クレソンすらレベル足りてないらしい」
そう気が付いても、もはや敵出現ポイントに踏み入ってしまって手遅れだった。
しかもちょっと最初のエンカウントが遅くて、奥に踏み入ってしまっているのがちょっとまずい。
次の攻撃でクレソンが爆散決定なのが……なおまずかった。
「こういう時は……すまぬ」
ズドンと画面が揺れる。
困った時の自爆! 相手は死ぬ!
へっへっへ……ピンチを脱するにはやはりこれだ。
「……よくやってくれたクレソン! 後は後輩に任せてくれ」
ふぅ。ひとまず死線は脱したが、まだピンチは続く。
チョット深入りした敵エリアは、運が悪いと出そうな長さだった。
「ぐっ……歩きたくないが。素早くいけば……たぶん大丈夫」
一歩踏み出したら、なんか出た。
「……」
ほどなくして、我が部隊はフルメンバーなのに全滅の憂き目にあった。
「ううう……めんどくさいよう。めんどくさいよぅ」
こんなことなら色気を出して、総力戦なんてせずに素直に自爆すればよかった。
薄々思っていたがこのゲーム、レベル管理は中々ピーキーだなって感じである。
レベルを上げて物理で殴るのが大好きな私であるが、レベル上げ作業自体が好きというわけではない。
しかしそろそろリコちゃんのためにも、本来のスタンスに突入すべきかもしれないと私は思い直した。
私はひとまずセーブして、冷蔵庫に直行する。
そしてここぞというところで使おうとストックしていたアイテムを解禁した。
「……よし」
キンキンに冷やしたエナドリと冷えピタは、集中力をバフする儀式的アイテムだ。
私にとってリアルアイテムは短期集中決戦にはなくてはならない。
頭をクールダウンし、体の血液ではカフェインを燃え上がらせながら、私は修行の旅に出た。




