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25.新ファッション

 甘い野菜というのは、世の中に存在する。


 その中にはスイーツとしてまで活躍する、とっても便利な奴もいた。


 生のままでは、好き嫌いが分かれる場合もあるだろう。しかし火を通せば……いやとりあえず砂糖の力を借りれば、マジかというスペックを発揮してくれる場合もある。


 今回私が目を付けたのはニンジンである。


 すりおろしたニンジンを使ってハーブや、小麦粉、ベーキングパウダーや卵をいい感じに混ぜ合わせ、こんがり焼けば―――はい、完成。


 おいしいキャロットケーキの出来上がりである。


 パウンドケーキスタイルで焼き上げたそれを綺麗に切り分け、生クリームでも落としてみればニンジンの新たな魅力を見つけられること請け合いである。


 では、糖分を補給して冒険の旅に出かけるわけだが、旅には足が必要不可欠だ。


 そしてスペースコミューンには特殊な足が存在しているようだった。


 それを語ったのは、何の変哲もないNPCAIである。


「ここスペースエリアの特徴はなんと言ってもこのディメンジョンバイクだろうな」


「ディメンジョンバイク?」


「こいつを使えば、今までのコミューンにもすぐ移動できる優れものだ」


「ああ、移動アイテム!」


 スペースコミューンのとあるお店で名もなきAIから教えてもらった有力情報に私は宇宙を扇いだ。


 ついに来てしまったか、移動手段。


 こういうものが出てきたと言うことは物語も中盤を過ぎたということか。


 移動がだるいのはよくない。それはゲームの心理である。


 だからこそストーリーが進み世界が広がって来ると、スムーズに移動する手段が手に入るのはRPGあるあるだった。


「……所でお前さんクリエイターだろう? 一つ頼まれごとをしてくれたら、このバイクをやろう。どうだ?」


 そして実にわかり安い導入をありがとう。


「はいわかりました。さぁ何を倒したらいい? 問題まるごと全部綺麗さっぱり消しさってあげましょう」


「引き受けてくれるかい? 実はWステーションの前に巨大バグが出てな。そいつをデリートしてほしいんだよ」


なるほど……造作もない。買い物が終わり次第向かうとしよう。所詮は宇宙のチュートリアル。負ける要素などみじんもない。


 というわけで、メインクエストスタートである。



 でもその前に、ひとまず買い物にレッツゴーである。


 パーツショップには、何だろう……まずは、ヘルメットの種類がてんこ盛りだった。


 大きなものから小さなものまで何でもある。


 やはり素晴らしいのは比較的お安く買えるスペースアクセサリープリセットか。


 一つ買えば、全種類試せる仕様は造形にこだわりを持つこのゲームならではだろう。


 色分けされたパーツごとに配色も好きに出来るので、こいつはキャラクター再現だって頑張れば出来そうだった。


 とりあえず私は、心の琴線に触れるめぼしいパーツを買いあさる。


 なに、前のコミューンでちょっと頑張った分、Bコアならあるのですよ。


「……」


 とか思っていたけど秒でなくなった。


 後悔は正直している。


 なぜならば、片手にロックバスターとフルフェイス型アンドロイドヘッドを付けたスピニッチ。


 同じくヘルメットスタイルで蛍光色のチューブが沢山装着されたブロッコリーが、巨大アックス

を携えスチームを噴き出していたからだ。


 ブロッコリーのヘルメットなんてトサカがついていたから、即買いしてしまった。


 あのデザインは反則である。


 ボディのカラーリングもメタリック調に整えられて、完全にサイボーグの荒くれ者だった。


 そしてクレソンはというと、こちらもせっかくなのでお色直しである。


 全身を真っ白な宇宙服のようなバトルスーツで包み、大きめの宇宙飛行士っぽいヘルメットを装着。


 いつもの剣を装備しているものの、完全にこちらもファンタジーから一新と言った感じだった。


 エクスカリバーは来るべき日のために工房に保管中だった。


「うーむ……こう、古き良き悪役女幹部スタイルが滲みだしてくるようなパーティ構成だ、味はある」


 しかし、ここに後一体メンバーを加えるとなると、少々悩みどころだった。


「どうするか? やはりここはマスコット……いや、それは最期に取って置こうかな?」


 私はしかし一服の清涼剤として、癒し枠を求めた。


「あれだな。ちびっ子で行ってみよう」


 子ども型ということだが、まぁ見た目で性能が変わるわけじゃない。


 それはもう可愛らしい造形をこの手で生み出してみるのもいいだろう。


 ちなみにこれはお知らせできていた、子供服メーカー主催の少年モデル限定子供服ファッションショーの開催が近いだとかは一切関係ないので念のため。


 ちょこっと下調べでリアル子ども服を観察しに行ったのは少々先走りが過ぎた自覚はある。


 では早速挑戦してみよう。キャラメイクの時間である。



「……うむむむ。難しいな。案外目と鼻の位置が違うとバランスが崩れるもんだね。だが……完成だ」


 目を血走らせながら、パラメータとにらめっこすること1時間ほど。


 何度がリセットしてしまったが、ようやく少年と呼べるような一作が誕生した。


 見まごう事なき美少年……だと思うのだけれど、それは世の中の判断に任せるとしよう。


 いやいや、気が向いたら出ようと思っているだけだよ。たまたま予定が合ったらね。


 結果出来上がったオレンジ髪で赤目のAペットには、兎っぽいイメージにちなんでキャロットの名前を与えよう。


 まぁ今私の手元にあるこのケーキが、名前に何の影響も与えなかったわけではなかった。


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