第29話 学園祭
じ、時間が足りない……
フィーアは戸惑っていた。
自分自身の行動にだ。
ここ数日、あのかなんとかいう奴をずっと意識してしまっている。
わたしは今まで、あのゲームで必ず全員をアウトにしてきた。
ただ一人を除いて。
今はお昼休み。
二つ隣のテーブルでかなんとナナという少女が食事をとっている。
特に気にする必要がないと頭ではわかっているのだが、中々行動に移せない。
ある意味行動に移してはいるのだが……
そんなこんなで今日も結局気にしているのだった。
そこへ上級生たちがやってくる。
上級生の中で偉そうにしている一人が話しかけてくる。
「ん~? フィーアじゃないか。こんなところに一人でどうしたんだい?俺が一緒にご飯食べてやろうか? ペットには飼い主が必要だものなぁ?」
フィーアはふいと顔をそらし無視をする。
「あん? 何無視してくれてんだ? 人形如きがッ!」
さすがにその言葉は看過できずにフィーアは立ち上がる。
「言ってくれるじゃないですか」
「お前に力なんかないだろう?」
「それじゃあ、模擬戦で決着をつけましょう!」
「いいぜ。それじゃあ、お前が負けたら一生俺のペットな」
「な、なにを! わかりましたわたしが勝てば――」
「そこまでだ。後輩の女子に模擬戦申し込むとは、弱い奴だな。ふっ」
かなんだった。
「あん? 誰だてめぇは?」
「かなんだ!」
「はぁ?」
「俺が彼女の代わりに叩きのめしてやろう。外に出ろよ」
「あー、本当になめた真似してくれんなぁ!いいぜ。お前も潰してやるさ。お望みどおりになぁ!」
模擬戦の準備を始める二人。
フィーアがあたふたしているうちに戦いが始まる。
先手はかなんだった。
一撃。
それで上級生は意識を失った。
思っていたよりも強い。
フィーアはそう思った。
試験の時には格下だと思ったが案外そうでもないかもしれない。
そんなことを考えているうちに一声かけかなんは行ってしまう。
俺に付き纏うな、と。
フィーアはその言葉を聞いた瞬間何かが胸に突き刺さるような感覚に陥った。
これは何だろう。
お礼も言ってない。
わたしだけでもどうにかできたんだけど!
でも、助けてもらったし。
悲しいし。
苦しいし。
うっ。この気持ちは何なんだろう。
昼休みの終わりを告げる鐘が鳴る。
フィーアはこの後、いつもと違いかなんと同じ授業を一つも受けずに一日を終えた。
どうやらこのことは中々解決しないようだった。
それから数日後。
今日、マギアでは学園祭が行われている。
丸々二日間かけて準備したものを一般に公開するというのが趣旨だ。
俺はナナと一緒に学園祭を回っていた。
「ナナはシフトいつから?」
「えと、あ、もうすぐです」
「そうか。じゃあせっかくだし、見に行こうかな」
「え、恥ずかしいよ、先輩」
「いいからいいから」
「もうっ」
俺はナナが今からシフトである、学生メイド喫茶という名のところにいた。
学生メイド喫茶は好評で長蛇の列ができる始末になっていた。
「ご注文は何になさいますか、ご主人様?」
「やっぱり、メイドの服着るとかわいい。俺と一緒の時にも来てほしいくらいだよ」
「そ、そう? それなら今度着ようかな」
ナナのピンク色の髪にメイドのカチューシャが良く似合う。
本当にかわいい。
ナナがシフトを終えた後はまた二人で学園祭を楽しんだ。
魔法を使った手品?(というか種も仕掛けもないのだから手品ではないか)を見たり、ゲームをやったりした。
後夜祭もあった。
後夜祭では、イケメンランキングがあり、一位になった。
本当になんというか、ふっ。
美少女ランキングの一位はフィーアで二位がナナだった。
意外とフィーアの隠れファンが多いことに驚きを隠せなかった。
そんなこんなで学園祭を過ごす一方でカインズさんのところは……
カインズ邸。
一人娘アローラの結婚式を二日後に控えた今日。
表面的には何も問題はないが、実際はかなりぎくしゃくしたものとなっていた。
今日も黙々と書類に目を通していたカインズは、気分転換に外の空気を吸おうと外に出る。
ここら一帯は空気が澄んでいるので、部屋の中よりも断然過ごしやすい。
夏場は涼しく、冬場は暖かい。
とても良い場所だった。
普段なら気にならないのだが、どうしてか気になったことがあった。
この屋敷に仕えてもらっている執事やメイドの動きが不自然だったのだ。
なにが不自然かと問われると、答えることはできないのだが。
慌ただしく走り回っている。
大きな荷物を運んだり、考えるような仕草をしていたりしていた。
とりあえず、メイドの一人に聞いてみるが特別なことは何もなく普段通りだという。
不思議に思った私は近くの村に行き、村民の話を聞いてみることにした。
「領主様のお屋敷が騒がしいのだが、なぜか知っているか?」
「へぇ、それは故郷へ帰る準備をしているらしいです。何でも、領主様に黙って大きな取引をしようとしているらしく、失敗した時のために準備しているらしいです」
「そ、そうか。ありがとう」
確かに彼らには取引をいくつか任せている。
彼らは私が一人一人声を掛けて集めた優秀な者たちだからだ。
だが、なぜ突然そんなことを。
でも、この話が真実ではなかった場合、彼らを深く傷付けてしまうことになるだろう。
どうするべきか。
そんなことを考えているうちに、娘の結婚式の日取りは迫る。
度重なる心労にカインズは滅入ってしまっていた。
声を掛けた一人目の農民が家の主であるカインズよりも詳しく知っていて、どう考えても嘘くさいことを言っていることに気づくはずもなかった。
これで三つを終えました。
娘、妻、領民、使用人。
「あなたのためのステージ、観客は用意しましたよ。後はあなたが躍るだけ。楽しみ楽しみ!ふふふ」
カインズは見て堪えきれないといった感じで笑っている奴が一人。
最悪の時はもう取り返しのつかないところまで迫っていた。
夫は妻と娘のために。
妻は夫と娘のために。
娘は両親のために。
投稿がそろそろ厳しいかもしれないです。




