第27話 カインズ邸
更新何とかできました。
この章は学園色を出したいと思っています。
そうは言いつつも全然違う方向性になってしまうかもしれませんが。
生温かい目で見守っていただけると。
朝、目を覚ますとナナはまだ寝ていた。
まるで穢れを知らないようなナナの寝顔にドキドキしてしまう。
こんなかわいい子に好きだと言ってもらえるなんて。
もう二度とないかもしれない。
「んぅ…」
ナナが色っぽい声を出す。
寝ているのはわかっているがわざとやってるんじゃないかと思うくらい色っぽい。
いけない、いけない。
後輩に手を出すのはよくない。
そんなことをしている内に時間がなくなってきているのでナナを起こす。
「ふわぁ…おはようございます。かなん先輩」
「おはよう。今日から学校だから支度して行かないと」
「うん。…でも本当に私もマギア・アカデミーに通っていいのかな?」
「いいんだよ。それにさ、一人より二人の方が楽しいじゃん?」
「うん!」
そうして、支度を済ませナナとホテルから出るとエトランゼがいた。
「おはようございます。かなんさん、ナナさん。それではご案内します。ついてきてください」
エトランゼの案内でマギア・アカデミーに到着する。
「ここが一か月間過ごしていただくマギア・アカデミーです。質の高い授業なので、たくさんのことを学ばれて行かれるとよろしと思います。それでは」
校門を抜ける。
こうして、俺とナナのマギアでの学校生活が始まった。
このときは考えもしなかった。
この学校生活が長い悪夢の前奏曲になっていたことなんて。
マギアの授業形式はAAとかなり違った。
AAでの授業は過程を大事にする授業なのに対して、マギアでの授業は結果を重視する授業だった。
数学で言い換えるなら、AAは途中式を、マギアは答えを重視するということだ。
実際、能力という観点だけで見ればマギアの生徒の方が圧倒的に優れているだろう。
ただし、マギアの生徒は応用力が足りない。
それが大きな問題だ。
完全実力主義。
これがこの学校の特徴だった。
ただ一つ良かったことは、ナナと同じ授業を受けられたことだ。
そんな中、今日は初めての実技試験。
俺の力がどれくらいついているか試すのにちょうどいい。
俺の努力の成果がどれほどの物か測らせてもらうとしよう。
試験内容は全員での戦闘。
制限時間は1時間。
生き残ることが勝利条件だ。
敗北判定は気絶させる、魔法を使えなくする、致命傷になる部位にある的に命中させることの三つだ。
ただし五人以上生き残っていた場合は全員敗北とする。
この授業を取っているのは俺とナナを含めて28名。
フィールドは学校敷地内の森林区画のみ。
教育用区画、研究施設区画、森林区画、多目的区画の四つに分かれている。
最後まで生き残るにはナナとは協力した方が得策だ。
問題はランダムスタートのためそれぞれがどこにいるか分からないことだが。
スタート地点で待機していると開始の合図の火魔法が打ち上げられる。
花火みたいだな。
とにかくこれで開始だ。
木の幹に隠れながら警戒して移動する。
遠くで破壊音がちらほらしている。
きっと遭遇したもの魔法でも放ったのだろう。
10分くらい経ったころに一人発見する。
向こうは気づいていないようなので、弱音機をつけてバイオリンを弾き魔法を発動させる。
弱音機というのは、漢字の通り駒に付けてバイオリンの音量を抑えるものだ。
音色が少し変わるのでそのために付ける時もあるが。
問題なく魔法が発動し水鉄砲のように勢いよく頭目掛けて飛んでいく。
そのままヒットし、そいつはアウトになる。
これで一人。
大したことはなかった。
この調子でいけば生き残れるだろう。
警戒を怠らずに次の敵を探す。
40分ほど経った。
あの後は運よくほとんど誰とも出くわさなかった。
出会った奴はアウトにしてやったが。
不意にバイオリンの音色がする。
ドオオオオオオン。
近くで爆裂音がした。
戦闘だろうか。
急いで木の幹に隠れる。
戦っていたのは少女とナナだった。
助けに行こうと身構えた次の瞬間少女の魔法が発動され凄まじい速度でナナを襲う。
「あと一人」
その不穏なつぶやきとともにナナがアウトになる。
そして、少女の目が俺を捉える。
吸い込まれそうなブラウンの瞳。
それに対して眩しいほどの綺麗な金髪。
本能的にこの少女が実力者であることを理解する。
少女が地面を蹴り、こちらに接近してくる。
見た目とは裏腹に強烈な蹴りを放ってくる。
防ぐので手一杯になり、反撃の余地を与えてくれない。
「ぐっ!!」
蹴りが顔をかする。
このままでは決め手に欠ける。
そのことを悟り、バイオリンを弾きながら蹴りを放つという離れ業をやってのける。
これが見ている側だったら称賛するどころの話ではない。
着々と魔法が奏でられていく。
二つの動作を同時に行っているのに、精度が落ちるようなことは全くと言っていいほどない。
凄まじい技量だ。
どれほど鍛錬すれなこの領域に到達するのだろうか。
マーチングバンドの人たちもすごいがそれを遥かに凌駕している。
そうこうしているうちに魔法が放たれる。
土の玉が勢いよく向かってくる。
少女の蹴りを交わしつつ何とか避ける。
ほんの一瞬少女の動きが止まる。
この好きを逃す俺ではなかった。
反撃にでようとして俺はその動きを止める。
なんと、バイオリンの音色で土球を完全に制御し、かわしたはずの土球が俺に向かって再び迫ってくる。
何とかかわすが三度迫ってくる。
魔法の操作能力が異常だ。
大まかな進路設定と微調整なら俺でも可能だが、少女は蹴りを放ちながら土球を制御している。
すごい。
素直にすごいという感想しか出てこないくらいの実力者だ。
女の子にケガをさせるのはよくないからどうやって倒したものか。
的に軽く当てればいいか。
方針が決まった以上本気だす!
土球の飛んでくる方向をうまく誘い木にぶつける。
煙が起こって、視界がふさがれたところで歌を歌う。
静かに口ずさむように歌い上げる。
イメージするのは風の槍。
風魔法を使う。
尖る鋭く貫く。
そのイメージで魔法を構築していく。
スタッカートを用いて飛び跳ねるように歌う、そして謳う。
槍が具現化される。
その槍を少女の的に向けて投合する。
煙が晴れると同時に槍が少女の間の前に出現する。
少女はほんの少し驚いたような顔になる。
それもほんの一瞬の話。
次の魔法を唱え始める。
歌う謳う詠う。
詩のような歌詞で、その歌詞の素晴らしさを伝えるように強調するように、作り上げる。
魔法が発動する。
魔法の発動を防ぐために攻撃するが防がれる。
少女の魔法はすでに完了している。
そう防がれたのだ、見えない壁に。
少女は自分の周りに防護魔法を発動させたようだ。
こんな軽いノリで言っているが状況は非常にまずい。
少女の魔法を妨害できないんだぜ?
これは最悪のパターンだ。
魔法を発動しなければならないが一歩出遅れている。
間に合わない。
案の定、少女はコントラバスに楽器をきり替え、安定した低音を響かせる。
少女の体格のは不釣り合いな大きさ。
その楽器を使いこなし少女は心の奥底にまで響くような音色を紡ぐ。
どこか薄っぺらい、もの悲しい、そんなものを孕んだ音に聞こえた。
魔法が完成する。
敗北。
そのことを理解するまで数秒を要した。
負けるわけにはいかない。
炎龍を倒せるくらいの力を得るために無心で戦った。
でも、まだ足りないのか。届かないのか。
少女にすら届かない。
その事実が胸に突き刺さる。
そこで金の音が響く。
何の音か理解するのに時間がかかってしまった。
そう、終了を告げる音。
生還達成。
あと一秒あれば確実に死んでいた。
そう思わせるだけの実力を少女は持ち合わせていた。
集合し結果が発表される。
「アライブは、かなん、フィーア。残りは全員デッドだ。今回アライブできなかったものは精進するように。課題のレポートについては掲示を見て提出するように」
そう伝えられその場は解散となる。
少女をちらりと見ると、こちらをガン見していた。むしろ、にらみつけられていた。
よほど悔しかったのだろう。
結果から考察するに、ほとんどの生徒をアウトにしたのは彼女だろう。
その中で唯一アウトにできなかった。
しかも、あとは魔法を当てるだけだったのに。
少女は俺が見ているのに気づくとふんっといった感じで顔をそらし立ち去った。
フィーアか。
強敵になりそうな少女の出現に一層気を引き締めねばならないことを痛感する。
もっと強く強く強く強く!
もう二度とあんなのはごめんだ。
もう二度と。
これで今日の授業は終わりなので、ナナとともに下校する。
帰り道にはナナと今日の試験についてのことを話し合った。
あれがいいだの、注意するところこうだのそれはもう色々と。
そんな話をしているうちに屋敷へたどり着く。
ここが現在寝泊りさせてもらっているところだ。
王族とも繋がりのあるハイエルフなのだそうだ。
ここら一帯の領主を務めるカインズさんの屋敷。
カインズさんは、奥さんと娘がいる。
三人家族だが、広いお屋敷に住んでいるので、余っている部屋に住まわせてもらっているというわけだ。
帰ってきてしばらくすると夕食になる。
五人揃っての夕食だ。
ちなみに、夕食はメイドが作っている。メイドが八人と執事が一人いるのだ。
カインズさんが話しかけてくる。
「今日の学校はどうだったかな?」
「そうですね。今日も楽しかったです。あと、初めての実技試験がありました」
「そうか。どうだった?」
「サバイバルゲームで私はアウトになってしまったんですけど、かなん先輩がアライブしました!」
「そうか!それはすごいな!」
「カインズさんはよく俺たちの学校の話をお聞きになりますね」
「ん?そうか。言ってなかったかな。娘のアナスタリアをマギアに通っていてね。主席で卒業したんだ。私も妻も通っていたしね」
「なるほど」
「いやー、懐かしいものだよ。昨日のことのようだ」
そんなたわいもない話をしながら食事は進んでいく。
食事も終わりに近づいた時だった。
メイドの一人が客人の来訪を伝えてきた。
「今日は……そうか。かなん、ナナ、どうやら、娘の婚約者がやってきたようだ。すまないが少々耐えてくれ」
了承すると、メイドがそいつを連れてやってきた。
「ん~ボクの花嫁はどぉこ、かな?」
キモイ。豚。高慢。金持ち。etc.
そんな感想が次々と浮かんだ。
「ぶふぉっ!いたっ!ぼ、ボクのハニーィ!」
鳥肌が立ってきた。
本当に、本当に気持ち悪いです。
金持ちだからか臭くはないけれど。
「ふ、二人で愛を語りあお?デュフフ」
お、おう。
こんな強烈なキャラの奴なかなか存在しないと思うんだけど。
金持ち君と娘さんがいなくなったあと、カインズさんと話す。
「カインズさんはあの人のことどう思っているんですか?」
思わず直球で聞いてしまう。
すると、苦虫を噛み潰したような顔をして、
「彼はハイエルフの中でも上の方の人に顔が利いてね。無下には扱えないんだ。娘も大丈夫って言っているしどうすることもできないんだよ」
父親としての不甲斐無さと公人としての振る舞いを強要されるカインズさんの悲壮な顔がよく目に焼き付いてしまった。
「大丈夫よ。あなた。娘は自慢の子なんですから」
「あ、ああ」
奥さんが声を掛けるがやはり声に覇気がない。
政略結婚なんて。
よくないっ!
俺はそう思う。
だから、娘のアローラさんに話を聞こうと思った。
窓の外でこの光景を見つめるものがいた。
そいつは不敵に笑いながら言う。
「これで一つ目。貴方に絶望を届けられるのが楽しみで楽しみで仕方ありませんよ。娘さんへの思い。確かにいただきましたよ。くっくっくっ」
そいつは満足気な顔でその場を後にする。
そのまま目指すのは次なる布石。
狂詩曲が奏でられるまで猶予はなくなり始めていた。
第二回 ワイズマン講座(不定期です)
エ:エルフィ ケ:ショーゴ 夜:夜々
エ:こんにちは。第二回ワイズマン講座よ!ご主人様が色々なことを教えてくれるわ!
ケ:二度目だけど、賢者は英語で「ワイズマン」だよ?
エ:ということで、今回は「魔法」の解説をお願いするわね。
ケ:無視は本当にやめよう?
この世界は詠唱の代わりに音楽を奏でる。だから、楽器の携帯は必須なんだ。遥か昔に精霊が楽器を簡単に持ち運べるようにしてくれて今の形になったんだよ。
エ:球体ね。
ケ:そうそう。ちなみに、風、水、火、光、闇、無の属性があるよ。
エ:私は回復魔法と風系統の魔法が得意よ!
ケ:よしよし。
エ:っ~~!耳は!あふっ!撫でちゃダメェェ~~!
エ:あっ……あの、その、撫でて。
ケ:かわいい。
夜:それじゃまた次回!




