第26話 狂詩曲
10の倍数の日での更新を目標に執筆しております。
間が空いてしましますがどうかお付き合いください。
刻まれた内容は信じられないものだった。
読めない単語、損傷などによりわからないものを除くと得られた情報は少ないがそれでも驚きを隠せない。
この地はアメリカとカナダの国境付近でここまで逃げ延びたこと、近づいて来る死が怖いということだった。
これは一体なんだろう。
どうしてこんなものがここにあるんだ?
アメリカの大統領も転移したのか?
情報が圧倒的に足りない。
…まあいいだろう。
このことはショーゴにも伝えて検討しよう。
「先輩?大丈夫?」
「ん。ああ、ごめん。こんなところで俺の世界の情報が手に入ると思わなくてさ」
「先輩の?」
ナナが首を傾げたところで何者かが近づいて来る足音がした。
ナナを後ろに立たせバイオリンを構える。
「あなたが龍殺しの英雄かなん様ですか?」
「…そうだ」
内心で舌打ちをしながら答える。
俺は殺せてない。
「証を見せていただけますか?」
「…これか?」
一瞬迷ったがすぐに王からもらった通行手形のことだと気づく。
「確かに。それではご案内します。私の近くにお寄りください」
俺とナナは警戒を解かずに近づく。
「転移、王都フィンノック」
そいつが何かを掲げ、転移というと、不思議な光に包まれ、光が収まった後に目にした光景は筆舌に尽くしがたいものだった。
RPGゲームなどで世界樹が街になっていることがあるだろう。
この街はちょうどそれだった。
この木が世界樹かは知らないが迷いの森で見た木とは比べ物にならない生命力と神聖力を感じた。
この地にいるだけで心が安らぐようだ。
生命力が流れ込んでくるような感じがする。
そして、ここにいるのは、美男美女のエルフたち。
ダークエルフはいないようだ。
異世界だからいるとおもったんだけどなぁ。
いわゆる白エルフがたくさんいる。
光景に目を奪われていると
「神流樹の上に広がる王都フィンノックへようこそ。
今回の案内役を務めさせていただく、エトランゼと申します。
以後、お見知りおきを。
それではまず、王への謁見がございますので私についてきてください」
俺とナナはエトランゼの言う通り謁見の間へと赴いた。
エトランゼは人懐っこそうな笑みを浮かべる好青年という印象だったが、その裏にはとんでもない本性が隠れている気がした。
理由はないが。
謁見の間に入ると見知った顔がそこにあった。
「ユウヒ・アパヌマ・フィンノック様だ。くれぐれも粗相のないように」
エトランゼが小声で注意を促してくる。
っていわれてもなぁ。
アパだしなぁ。
セーゴみたいに違うって言われるかもしれないしな。
鎌掛けてみるか。
「病院送り?」
「ひっで」
「おおー。やっぱユウヒさんじゃないですか。なんで王様やってんの?」
「はぁぁ。ほんとね。なんでだろうね」
ユウヒはいわゆる器用貧乏という奴だ。
やつー。
ごほん、ユウヒは俺と同じ学校に通っていて生物部に所属している。
学年も同じだ。
ユウヒはトンボ玉を家で自作したり、たいていのことはすぐにできるようになる反面放送委員で機材をいじるのをすべて一任されたり、生徒会でなんでもやる係に任命されたりしている。
あとはいじられキャラかな。うん。
去年の文化祭ではウサギの耳をつけられて写真を撮られていた。
「ユウヒ、ちゃんと王様やってる?国民病院送りにしてないか?」
俺はユウヒをいつもの調子で煽る。
ユウヒは苦笑いだ。
「水の国の使者ってことでいいんでしょ?」
「ああ」
「じゃあ、これから1か月間僕の国が誇るマギア・アカデミーで過ごしてもらう。親善だからね。それと、泊まる所はプリセラという町の町長を訪ねてくれ」
「了解」
「案内はエトランゼにしてもらってくれ。最後に、かなん、将吾と啓吾を見つけろ。お前がすべきことは二人を見つけなければわからない。僕が言えるのはここまでかな。がんば」
そのまま、エトランゼに追い出される。
「もう!内心ヒヤヒヤしましたよ。無礼です」
「知り合いだと思わなくて」
「そうですよね。知り合いだったことがビックリです!」
「ユウヒはなんで王様やって――」
「時間が!急がないと!」
「ん?じゃあ行くといいよ」
「ありがとうございます。ユウヒ様。それでは失礼たしました」
「ちょっ――」
「早く出てください!」
そう言われ俺たちは謁見の間から無理矢理連れ出された。
ご飯を食べるになり、その道中でエトランゼに文句をたくさん言われた。
あの仕草がだめだとか、言葉遣いがなっていないだとか本当に色々。
十分位はかかったと思う。
でも、料理はおいしく、フルコースの料理だった。
もう当分食べたくない。
そして、今後の予定について話を聞く。
「風の国唯一にして最大、英雄の登竜門とまで言われるマギア・アカデミーで特別留学生として、過ごしていただきます。その間の寝泊りはプリセラという町です。この地は今の時期、ツェリーブルームという種類の木の花が満開になるので花をを鑑賞しながら外で過ごすのも悪くないと思いますよ。可憐なお嬢さんもいらっしゃることですしね」
そう言って、エトランゼはナナにウインクする。
エルフのイケメンウインクとか誰得だよ。
ふざけんな。
ナナも少し顔を赤くしている。
非常に腹立たしい。
ナナは俺のというわけでも怒りが沸々とこみあげてくる。
イケメンパワーのせいか。
うん、きっとそうだ。
「一か月後にお迎えにあがりますので存分にマギアでの生活をお楽しみください。なにかgご不明な点などはございますでしょうか?」
ちっ。
「行動に制限はあるか?」
「基本的にはございません。この機会にプリセラの地を回るのをお勧めします。他にはございますか?」
「いや、ない」
「では、そろそろいい時間になってまいりましたので、宿屋にご案内します。プリセラの馳に向かうのは明日にして、今晩はホテルにお泊り下さい」
それで話は終了し、宿屋に連れていかれた。
「明日の朝また迎えに来ます。あ、予約はしてあるので」
そう言い残してエトランゼはいなくなった。
宿屋の受付の娘のところへ行く。
白エルフの活発な子って感じだ。
「予約してるらしいんですけど」
「あ!英雄様ですね!少々お待ちください!!」
ナナが思わずといった感じで笑っている。
そりゃね、英雄で予約って!
痛いわ。
「106のお部屋になります!何かご入用の物がございましたらお気軽にお申し付けください!」
「はい、ありがとう?」
え?なんで鍵が手元に一つしかないの?
ナナと同じ部屋で寝るの?
だめくない?
むしろ俺がだいじょばない。
「あの、他の部屋って空いてませんか?」
「すみません。今日は満室でして」
心底申し訳なそうに言う受付の子。
ほんとになんなのこのテンプレ展開。
これはもう二人で一部屋コースしかないのか?
そしてそのまま!?
てなことにはなるはずもなく床でおとなしく寝ております。
最初は野宿かなと思ってたんだけど結局こうなった。
間は割愛で。
ベッドはナナが使っている。
寝付けないので風にあたるために外に出た。
心地よい風が頬を撫でる。
今日までのことを思い返す。
異世界に来た事。
ナナと出会ったこと。
精霊のところに行ったこと。
アクアアカデミーでのこと。
ダンジョンに行ったこと。
炎龍とのこと。
愛のこと。
そして…元の世界のこと。
実は、俺が異世界に来た経緯をどうしても思い出せない。
あの日、愛とアイスを食べに行こうとして…
頭を鈍い痛みが襲う。
いつもこの調子だ。
この先を思い出そうとすると頭痛がして何も思い出せない。
なぜこの世界に来たのか。
普通、異世界に来るには来るなりの理由があるんだと思う。
例えば、そう。
世界を救うこと。
チート能力を授かって誰かの救いになること。
俺の手で世界を救えるなら救いたいと思う。
でも、俺には今やるべきことがある。
後輩を、愛を救わなきゃならない。
仮に悪魔に魂を売ることになったとしても。
だから、ナナには答え……
俺は部屋に戻り寝た。
今度は比較的あっさりと眠りにつくことができた。
満月だけが煌々と輝いていた。
この地域では、この季節、ツェリーブルームという木の花が満開になる。
花の街プリセラ。
若いが優秀な領主の元、年々領内の経済状況はよくなっているので、商業も盛んで、観光地としても人気がある。
このツェリーブルームは桜――ソメイヨシノによく似ている。
ここではツェリーブルームが満開になるとお祭りを行う。
そのため、この地の領主である彼――カインズは、お祭りを開催するために尋常ではない量の仕事に忙殺されていた。
彼はハイエルフで王族とも血の繋がりがある。
彼は既婚者であり、今年で15になる娘もいる。
妻も娘もハイエルフである。
とても幸せな生活を送っていた。
傍から見ても誰もがうらやましくなるくらいには。
「ふぅ。やっと半分か。先は長いな。明日には、龍殺しの英雄様までお見えになるというのに。…紅茶でも飲むか」
紅茶を淹れるためにに立ち上がる。
紅茶を飲みながら一瞬の休息を甘受する。
カインズはとても優秀な男であった。
常人なら三日間はかかる量をカインズは六時間ほどで終わらせていた。
この一点だけを見ても彼がどのくらい優秀な人物かということはわかるだろう。
休憩を終え再び仕事に戻る。
「うわぁ。もう23時か。今夜は眠れそうにないなぁ」
つぶやいてから、最近は独り言が多くなっていけないなと反省する。
それ以降はまた仕事を片付けることに集中する。
カインズは気づいていなかったが、彼を見守る女性がいた。
カインズの妻リタだ。
彼女はよく夫の仕事を見守っていた。
夫が気づかないように陰で支えていたのだ。
彼女はその優しさと気配りのできるところから羨望の眼差しを、劣情の眼差しを、嫉妬の眼差しを良くも悪くも一身に受けていた。
本人はほとんど気づいておらず、さほど気にしていなかったが。
この日もここまではいつも通りだった。唯一違ったのはこの二人を見ているものが二人いたことだけ。
運命の歯車はこのときから動き始めていた。いや、狂い始めていた。
静かに、静かに奏でられ始めていたのだ、狂詩曲が。
それを変えられるものがいれば、あるいは――
あんな結末を迎えることはなかったのかもしれない。
ツェリーブルームの花は妖艶に咲き誇っていた。
第一回 ワイズマン講座(不定期です)
エ:エルフィ ケ:ショーゴ 夜:夜々
エ:こんにちは。第一回ワイズマン講座よ!ご主人様が色々なことを教えてくれるわ!
ケ:ちなみに、賢者は英語で「ワイズマン」だよ?
エ:ということで、今回は「狂詩曲」の解説をお願いするわね。
ケ:無視はやめよう?
「狂詩曲」は「ラプソディー」を訳したもので民族的・叙事的な内容を表現したものが多い。自由なファンタジー風の楽曲のことをいう。有名なのは、リスト作「ハンガリー狂詩曲」、ガーシュイン作「ラプソディー・イン・ブルー」とかかな。
エ:私も聞いてみたい!
ケ:うーん、それは…今度俺が君のために演奏するからそれじゃダメ?
エ:っ~~~~~!そ、そんなことじゃごまかされないんだから!
ケ:かわいいなぁ、エルフィは。
エ:っ~~~~~~~~~~~!わ、私はあんたのことなんてすきじゃないんだからぁぁぁぁ~~!
夜:それじゃまた次回!




